コンテンツにスキップする

安倍政権の成長戦略に市場が失望感-日銀の物価目標実現の足かせにも

「3本の矢」からなるアベノミクス が打ち出されてほぼ1年が経とうとしている。エコノミストの間では第 3の矢である成長戦略に対して失望感が広がっており、日銀が目指す2 年で2%の物価安定目標の実現にとって足かせになるとの見方が強い。

ブルームバーグがエコノミスト34人を対象に行った調査で、安倍政 権が第3の矢である成長戦略において大胆な政策を打ち出せずにいるこ とが、2%の物価安定目標の実現を困難にするとの見方を15人が示し た。日銀が表明している「2014年度終わりごろから15年度にかけて、生 鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の前年比が目標の2%に達 する可能性が高い」との見通しに対しても、「そうは思わない」との回 答が32人に達した。

第1の矢である大胆な金融緩和と第2の矢である機動的な財政政策 により、年前半ロケットスタートを切った日本経済が勢いを失いつつあ るのではないかとの懸念が市場で出ている。10月の日経平均株価は月間 で0.9%安と先進国24市場中で唯一下げた。持続的な成長の実現へ、安 倍政権は成長戦略で岩盤規制にくさびを打ち込む強い覚悟が求められて いる。

明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「安倍政権の成 長戦略は全体的に進ちょくが遅い。特に岩盤規制と呼ばれる分野では、 農業で減反政策の廃止の方針が打ち出されるなど変化の兆しは出ている が、医療・介護、労働市場など、それ以外のほとんど分野で規制改革が 進んでいない」とみている。

成長戦略が進まないと株価下落も

大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストも「農業、医療・介護、労 働など既得権の強い分野での規制緩和への踏み込みが甘い」と指摘。 「農業は減反政策の廃止で一定の方向性が打ち出されたことは評価でき るが、株式会社による土地の取得はなかなか進んでいない。労働市場の 分野でも流動性を高める施策はほとんど骨抜きになっている」と語る。

小玉氏は「このまま成長戦略の進展が遅れれば、アベノミクスに期 待した海外投資家の期待がはく落し、株価が下落する可能性がある」と 指摘。「成長戦略が進まなければ、現状では1%以下とみられている潜 在成長率もなかなか上がってこないので、今後も中長期的に低成長が続 くことになる。そうなると、株価も上がりにくい状況が続くだろう」と みる。

ブルームバーグ・ニュースによる予想調査では、14日発表される7 -9月の実質国内総生産(GDP)は前期比0.4%増、年率換算で1.7% 増と、2期連続で高成長となった4-6月の同3.8%増から大きく減速 する見通しだ。

成長戦略の遅れは異次元緩和にも影響

ジャパンマクロアドバイザーズの大久保琢史チーフエコノミストは 「安倍政権は規制緩和によって設備投資需要を引き出すことに失敗して いる。特区、TPP(環太平洋連携協定)など進展がまったくないわけ ではないが、スケール、スピード感が不足している」と指摘。「このま ま成長戦略が遅れれば来年4月以降、景気は下り坂になり、いつ株価が 本格的に下がり始めてもおかしくない」と語る。

成長戦略の遅れは、黒田日銀の異次元緩和にも影響を与える可能性 がある。ブルームバーグの調査では、エコノミスト34人中20人が来年4 -6月に追加緩和が行われると予想。日銀が物価安定の目標達成後に量 的・質的金融緩和の縮小を開始する時期についても、「見通せない」が 7人、「物価安定目標は達成できず、量的・質的金融緩和の枠組み自体 を修正する」との回答が10人に達した。

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「アベノミク スの第3の矢である成長戦略に対する海外投資家の期待は既に大きく低 下している」と懸念。「海外投資家の間では、次の投資機会の触媒 (catalyst)となるのは日銀との見方が強く、日銀の追加緩和に対する 期待が異様に高まっている」と語る。

その上で「海外投資家の間では、4月の異次元緩和と同じように、 黒田総裁は市場や政治に追い込まれる前に先手を打つはずだという見方 が強い」と指摘。日本国内では追加緩和のタイミングは来年4月以降と の見方が強いが、海外ではその場合は円高リスクが高まるとみられてい るという。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE