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日本国債の危機、IMFも誰も「助けられない」-加藤元財務官

国際通貨基金(IMF)の副専務理 事を務めた加藤隆俊元財務官は、ギリシャを大幅に上回る規模の日本の 国債市場が危機に陥れば、IMFを含めて誰も「助けたくても助けられ ない」とし、大幅な消費増税などによる財政健全化の必要性を強調し た。

加藤氏(72)は先週のインタビューで、海外当局・有識者の間でも 日本をめぐる関心事は国債だと指摘。「今は問題ないが、インフレ率が 2%になれば、政府は利払い費が膨らみ、保有者はかなりの規模で評価 損をこうむる」と言い、「万が一、当局が事態をコントロールできなく なると、影響は全世界に波及しかねない」と警告した。

日本の国債・借入金・国庫短期証券を合わせた債務残高は6月末に 初めて1000兆円を突破した。IMFは日本政府の債務残高の対GDP比 が今年末に243.5%に達し、少なくとも18年までは世界最悪の座を抜け 出せないと予測している。8月に公表した対日年次審査報告書では、公 的債務を中期的に圧縮するため消費税率を段階的に「少なくとも15%」 まで引き上げるべきだと指摘した。

長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは、将来的な金利上昇 リスクに対する懸念をよそに足元では世界で最も低い水準で推移してい る。この日は3営業日ぶりに0.6%台に上昇したものの、日本に次ぐ低 金利となっているスイスの0.9%台を大きく下回る。

加藤氏は、経済が順調なうちに「市場の支持を得られる財政健全化 に出来るだけ道筋を付けておくことが何より必要だ」と指摘。日本人口 の高齢化で、膨張を続ける社会保障関連費の削減は「政治的に難しい」 とし、財源確保のためには消費税を税体系の中心にすべきだと述べた。 また、消費税率を予定通り2015年10月に10%まで引き上げても「欧州諸 国よりはまだ低い。ドイツや北欧を見れば20%だと社会に活力がなくな るとは言えない」と加えた。

鵜の目鷹の目でリスク資産へ

加藤氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの余波 で1994年12月に発生したメキシコ通貨危機の対応に大蔵省(現・財務 省)の国際金融局長として務めた。同危機を一因として円・ドル相場 が94年4月に当時の戦後最高値1ドル=79円75銭を付けた後、財務官に 就任。榊原英資国際金融局長らと円高是正に取り組み、同年9月に は100円の大台に押し戻した。現在は国際金融情報センターの理事長。

加藤氏は、米量的緩和の早期縮小観測が後退しているため「運用担 当者は潤沢な流動性を前提に、鵜の目鷹の目で運用先を探して」、先進 国の低格付け債券やコベナンツ(財務制限条項)が緩い融資、新興国な どに資金が戻っていると指摘。ただ、5月以降の経験から、リスクは十 分認識しているので「いざとなったら他人より先に逃げたい気持ちがあ る。何かのきっかけで売りが始まると、弾みがつく恐れもある」と述べ た。

このため、近い将来に米量的緩和の縮小が始まると「全世界的に相 当の影響が出る可能性がある。米金融当局はかなり前広に地ならしをし ていくのではないか」と、加藤氏は予想している。バーナンキ議長の後 継者となるイエレン次期議長に「何より期待されるのは量的緩和縮小の タイミングを誤らず、世界中の金融資本市場に動揺を与えないよう誘導 することだ」と語る。

IMFのジェラルド・シフ氏は先月29日のインタビューで、円相場 は通貨バスケットに対して引き続き幾分、過小評価されていると発 言。04年から10年2月まで副専務理事を務めた加藤氏は、円・ドル相場 は「IMFの試算によると1ドル=90-100円程度がファンダメンタル ズ(経済の基礎的諸条件)を反映したレンジのようだ」と説明した。

現在の円相場は対ドルで98円台前半と、1年前に比べ23%近い円 安・ドル高水準だ。5月には103円74銭と08年10月以来の安値を付け た。最近3カ月間は95円台と100円台の間で一進一退となっている。

「日本はまだ海外生産比率を上げていく方向だ。かつては輸出して いた物も、外で作って外で売る。円安になれば輸出が大幅に増える時代 ではない」と指摘。「貿易赤字は簡単には解消しないが、経常収支が直 ちに赤字化する心配はない」と述べ、海外金利が軒並み低下傾向にある 中でも十分な所得収支の黒字があると説明した。

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