来年4月の消費増税による住宅着工 への影響は1997年の前回増税時に比べ、軽微にとどまるとの見方が出て いる。金融危機に見舞われた97年当時は、消費増税に耐え切れず住宅セ クターが大きく落ち込んだが、今回はアベノミクス効果で景気が持ち直 し、住宅ローン減税など政策効果も期待できるという。

国土交通省によると、89年の消費税導入や97年の増税の際には、実 質的に約20万-30万戸もの需要減があった。今年は、9月契約分までは 来年4月以降の引き渡しでも現行税率(5%)が適用されるため、駆け 込み需要が発生。8月の住宅着工戸数は12カ月連続で増加し、首都圏の マンション発売も8月まで4カ月連続の増加となった。

問題は10月以降の動向だ。同月契約分から新年度引き渡しの物件に は新税率(8%)が適用されるが、みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産 アナリストは、同月以降「反動減は数カ月にとどまる」とし、理由とし て「景気に対する不安感の後退や住宅ローン減税の効果」を挙げる。

モルガン・スタンレーMUFG証券の大室友良アナリストも、消費 増税による「反動減は限定的」として、住宅業界の投資判断を「アトラ クティブ」に引き上げた。大和ハウス工業の樋口武男会長はブルームバ ーグとのインタビューで、今年の住宅着工はリーマンショックがあっ た2008年度以来の「100万戸に届く可能性がある」との見方を示した。

国交省のデータでは、日本の住宅投資は年約13.5兆円の規模だが、 投資が誘発する他の産業部門を含めた生産誘発額は約2倍の26.2兆円。 国内総生産(GDP)比で5%とウェートが高い。

大幅ローン減税

野村証券の福島大輔アナリストは、反動減が限定的とみられる理由 として、過去の消費税導入や増税時と比べた「政策対応の違い」を挙げ た。

みずほ総合研究所の資料によると、前回(97年)の増税時に反動減 対策として拡充された住宅ローン減税(ローン残高に応じた所得税控 除)は最大で計180万円。これに対し、来年度はローン減税の規模が 「10年で最大計400万円」と当時の倍以上の規模となる。低所得層には 最大30万円の「すまい給付金」も用意される。

みずほ総研の試算によると、課税対象の建物価格が3000万円の不動 産購入に4000万円のローンを組んだ場合、ローン減税の追加分が計144 万円となり、建物価格の増税分(3%)の90万円を上回る。

大和ハウスの樋口会長は、8%への消費増税は住宅取得者にとって 「あまり負担増にはならない」と述べ、過去のような住宅需要の落ち込 みが発生する環境ではないとの見方を示した。同総研のエコノミスト、 大和香織氏も「住宅購入世帯の約6割は増税後に購入した方が有利」と 話す。

97年との違い

野村証券の福島氏は、前回の増税時との経済環境の違いにも注目す る。97年といえば、バブル崩壊後の不良債権問題が頂点に達し、山一証 券の廃業や北海道拓殖銀行の破たんなどで、日本が金融危機に陥った年 だった。

福島氏は、当時について「銀行は不良債権問題で不動産関連向け貸 し出しに消極的だった」と指摘。これに対し、現在は「貸し出しに積極 的であり、資産価格も上昇気味だ」として、経済環境が全く違うとの見 方を示した。

三大都市圏の住宅地の基準地価を比べると、97年は2.2%低下に対 し、今年は0.1%の低下とほぼ横ばい。また、住宅ローン金利を左右す る10年物国債利回りは97年、1.5-2.7%のレンジに対し、現在は0.6% 台。みずほ証券の石沢氏は、景気回復期待で「金利は上昇するにしても まだまだ低い」として、金利負担の低さが購入者に有利だと話す。

日本銀行の企業短期経済観測調査(短観、9月調査)は、円安進行 に伴う輸出採算の好転が続いていることを背景に、大企業・製造業の景 況感が3期連続で改善。業況判断指数(DI)は、大企業・製造業がプ ラス12と5年9カ月ぶりの高水準で、08年秋のリーマン・ショック後で 最高となった。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE