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「若さ」評価の日本株市場、取締役年齢で上昇格差-米国逆行

日本の株式市場では米国と対照的 に、取締役の年齢が若い企業の株価パフォーマンスが相対的に良好だ。 成長産業のIT業界を中心に若手起業家が増え、株式上場を成功させた ことなどが背景の1つにある。国際化、IT化の波が押し寄せ、こうし た流れに順応できる「若さ」は従来以上に経営中枢に求められている。

ブルームバーグ・ニュースの調べで、国内上場企業のうち、取締役 の平均年齢が50歳未満の企業の株価上昇率(6日時点)は過去3年で平 均139%、50歳以上-55歳未満の企業は77%だった。これに対し、65歳 以上の企業の上昇率は52%、60歳以上-65歳未満は48%、55歳以上-60 歳未満は53%にとどまる。同期間のTOPIXは37%高。

日本は、65歳以上人口の割合が26%と主要国の中で最も高い高齢化 社会だ。4月には改正高年齢者雇用安定法が施行され、経過期間を挟 み、65歳までの継続雇用が完全義務化される。高齢者の有効活用は労働 力の維持、技術力継承の点で必要不可欠な状況だが、国内外での生存競 争は激しさを増しており、企業が新陳代謝を図り続けるには若い人材の 抜擢もまた不可欠となっている。

東京海上アセットマネジメント投信・エンゲージメント運用部の久 保健一シニアファンドマネジャーは、「若い経営者の方が時代の変化に 敏感だ。時代に即したサービスを提供し、新しいマーケティング手法を 採用する」と指摘。これに対し、「経営者の高齢化は組織の硬直化を示 唆し、投資をためらう要因になる」と言う。

アルバイトから駆け上がった35歳

人事・組織マネジメントの支援会社であるHRビジネスパートナー ズの舞田竜宣社長は、「伝統的な企業の経営者は年功序列で出世し、企 業という村社会の長老。コミュニティーの維持がミッションとなり、改 革をしない傾向にある」と分析。一方で、「若い経営者は真のリーダー として責任を取りながら部下を率い、リスクの伴う構造改革をためらわ ない」との認識を示す。

若手抜擢の代表的な上場企業の1つが、「生活救急車」で知られる ジャパンベストレスキューシステムだ。鍵の修理や水回りの問題解決な ど、あらゆる日常生活のトラブルを電話1本で解決するサービスを提供 し、株価は過去3年で461%上昇。2013年9月期の連結純利益は会員事 業の伸びなどを背景に、前期比59%増を見込む。

鈴木良夫取締役管理部長によると、完全実力主義の昇進制度を採用 しており、最も若い取締役の笠井篤史氏(35)はアルバイトとして入社 した。不動産関連事業でリーダーとしての手腕を発揮したことで榊原鴨 宏社長(46)の目に留まり、09年に役員に抜擢された。

「新しいサービスの領域を開発するのがわれわれのミッションで、 アンテナが広く、ビジネスチャンスにも敏感なことが若い人の強みだ」 と鈴木氏。学生向け支援サービスの会員増加の起爆剤となった自転車の パンク修理サービスの発想は、自分でパンク修理をするのが当たり前だ った高齢世代では思いつかなかった、と説明する。

株主の痛み

結婚式や新婚旅行などの企画を手掛けるテイクアンドギヴ・ニーズ は取締役の平均年齢が45歳で、過去3年間で株価が300%上昇した。株 価が同期間に311%上昇した医療従事者向けの情報サービス会社、エム スリーの取締役の平均年齢は46歳となっている。

ベイビュー・アセット・マネジメントの高松一郎運用第2部長は、 取締役年齢の若い企業の株価が堅調な理由として、オーナー企業の多さ を挙げた。平均年齢が50歳未満の企業のうち、約半数は創業者が経営の かじ取りを行っており、「創業者は自社株を大量に持っているケースが 多く、株主の痛みが分かる。経営にも緊張感を持っている」と言う。

また、取締役の平均年齢が50歳未満の企業に占めるIT関連企業の 割合は、およそ3分の1に上る。慶応大学商学部で経営学や組織文化論 が専門の佐藤和教授は、「ITやエンターテインメントなど、変化が激 しく革新性が必要な業界では若い経営者が強みを持つ」と指摘。日本全 体が変化を求めていることから、若い経営者が健闘している可能性があ り、不振にあえぐ「電機業界は若い力が求められている」と強調した。

対照的な米国事情

米国ではむしろ、取締役の年齢が高いほど株価は堅調だ。ニューヨ ーク証券取引所の上場企業のうち、取締役の平均年齢が50歳未満の企業 の株価上昇率は過去3年で平均3.4%下落し、65歳以上の企業は60%上 昇。新興企業の多いナスダック市場でも同様の結果で、50歳未満の企業 の株価上昇率が34%だった半面、65歳以上の企業は55%だった。

HRビジネスの舞田氏は、日米間の相違について「米国の企業は村 社会ではなく、企業のトップは年齢にかかわらず、同じようにリーダー として変革を遂行する」と指摘。慶大の佐藤氏は、「株主の意向が反映 されやすく、実力のある経営者が選ばれやすい」可能性に言及した。

国際連合の統計で、日本の人口は現在の1億2700万人から2055年に は1億500万人程度に17%縮小する見通し。減少率は、先進国の中で最 も高い。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の65歳以上人 口の割合は同年までに39%に上昇するとみられる。

アストマックス投信投資顧問の山田拓也シニアファンドマネジャー は、年功序列には善しあしがあるが、「そればかり意識していると組織 は硬直する」と強調。一層のスピードが求められるビジネス環境の中、 「能力は大前提だが、若くて能力のある人なら、今まで以上に柔軟に抜 擢した方がいい」と見ている。

10日の東京株式相場は、東京五輪決定を受けたインフラ整備需要へ の期待が継続し、TOPIXは前日比1.5%高の1190.22ポイント、日経 平均株価は同1.5%高の1万4423円36銭と続伸。建設株のほか、ばら積 み船運賃市況高を受けた海運株を中心に、幅広い業種が買われた。

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