米バンカー、うそ発見器で担当者の不正減らす-カザフスタン

マイケル・エグルトン氏がカザフス タンに赴任した2009年、同国では銀行3行がデフォルト(債務不履行) に陥り、負債総額は約200億ドル(現在のレートで約1兆9700億円)に 上っていた。同氏は何か思い切った改革が必要だと考えた。

エグルトン氏は米メリルリンチとクレディ・スイス・グループの元 バンカー。カザフスタン10位の銀行、ユーラシア銀行の最高経営責任者 (CEO)に任命されていた。顧客の信頼を高めるため、うそ発見器の 導入に踏み切ることにした。

ユーラシア銀は損失を出しており、エグルトン氏の前任のゾマー ル・イエルタイエフ氏は、02-07年にCEOを務めていたアライアンス 銀行が計上した11億ドルの損失に絡み、横領容疑で逮捕された。イエル タイエフ氏は容疑を否認したが、11年に有罪判決を受けた。

「世界最大の経済危機を経験し、新しい国に赴任したばかりだっ た。銀行への信頼は失われていた。市場の懸念に対処しようとしていた が、融資資金の回収に関して社内で争いが起きると予想していた」と振 り返る。

カザフスタンは世界の原油確認埋蔵量の約3%、天然ガスでは約 1%を保有。国際非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インタ ーナショナルの腐敗認識指数は176カ国のうちウガンダ、ニカラグアよ りも低い133位と、腐敗度が高い。カザフスタンのサンゲ・リサーチ・ センターが昨年実施した世論調査によると、汚職は銀行業界にまん延し ており、債務者の7人に1人が融資を受けるために賄賂を支払ったと答 えている。

賞与と昇進の対象外

エグルトン氏によると、うそ発見器はラップトップ型コンピュータ ーで、対象者の両手や両腕、胸部にワイヤとセンサーでつながれる。融 資に関連する収賄などの不正行為の減少につながっているという。サン ゲが12年2月にカザフスタンのビジネスマンや住宅ローンの借り手500 人を対象に、銀行員が融資の見返りとして賄賂を要求したかどうかを尋 ねた調査では、商業銀行24行のうちユーラシア銀は3番目に腐敗度が低 いとの結果が出た。

エグルトン氏がうそ発見器を定期的に利用するようになったのは10 年1月。強制ではないが、テストを受けるのを拒否した従業員は賞与支 給や昇進の対象外となる。

ユーラシア銀によると、うそ発見器が導入された年に、600人以上 が退社。従業員数は2010人に減少した。現在は5700人を超える。

フランスのリスポンシブル・インベスター誌のマネジングディレク ター、ヒュー・ウィーラン氏は「うそ発見器の利用は極端な対策だが、 世界的な主要機関投資家は、特にカザフスタンなど汚職が深刻な問題に なっているフロンティア市場での贈収賄の事業に対する影響に懸念を強 めている」と指摘する。

米国では禁止

エグルトン氏によると、うそ発見器の精度は80%。米国では1988年 に、信頼性に問題があるとして企業による従業員へのうそ発見器による テストの強要が禁止された。カザフスタンの検事総長事務所によれば、 同国では従業員が同意し、宗教や政治、労働組合に関する質問が含まれ ない場合は利用することができる。

アルファ・バンク(モスクワ)のアナリストで、06年から10年まで カザフスタンのビゾル・キャピタルで勤務したジェーソン・ハーウィッ ツ氏によると、エグルトン氏によるうそ発見器の導入は同国の銀行にと って標準となり、他行も続かざるを得なくなった。「1行だけ利用して いない銀行があれば、うそつきはこぞってそこで勤務しようとするかも しれない」とハーウィッツ氏は述べた。

原題:Lie Detector Deployed by U.S. Banker Thwarts Theft in Kazakhstan(抜粋)

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