野生の象が闊歩し寺院が並ぶ秘境-元内戦地域が観光スポットに

スリランカの旧首都コロンボで北部 の都市ジャフナを訪ねる予定だと話すと、それを聞いたトゥクトゥク (三輪タクシー)の運転手は、「ジャフナに行くのか。心配するな」と 答えた。

かつて反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の 拠点だったジャフナは、長く続いた内戦時代には立ち入り禁止区域だっ たため、運転手は安心させなければならないと感じたようだ。

自分も舗装されたばかりの道路を通って最近ジャフナを訪れたと話 す運転手は、同市とその周辺がようやく安全になったと述べ、「地雷は ほとんど撤去された」と付け加えた。

近年になってようやく平和が戻ったスリランカは、旅行雑誌に掲載 される目立った人気スポットとなった。ただ、文化や自然が豊かな地域 であるにもかかわらず、内戦の傷跡が残る北部を旅行する外国人旅行者 は1%に満たず、東海岸への旅行者もそれを若干上回る程度だ。ブルー ムバーグ・マーケッツ誌別冊の高級ライフスタイル誌「ブルームバー グ・パースーツ」2013年秋季号が報じた。

インド南東部の海岸から80キロ離れたジャフナなどスリランカ北部 には、1448のヒンズー教の寺院や重要な仏教遺跡、復元されたポルトガ ルの要塞、崩れかけた植民地時代の別荘などが並ぶ。タミル人は活気に あふれ、大いに歓迎してくれるが、観光案内所は存在しない。まだ公式 の市街地図さえなく、運が良ければ、ホテルの従業員がインターネット から何か印刷しようかと言ってくれるかもしれない。

東海岸

一方、内戦だけでなく2004年の津波被害も受けたスリランカの東海 岸には、柵で囲まれた軍事キャンプや爆撃を受けた住宅も混在する中 で、人手の加わっていない数多くのビーチが汚されずに残っている。バ ッティカロア近くの海岸の一角では、高級リゾートの建設が最終段階に ある。だが、多くの地域では観光客と1人も会わずに何日も散策を続け ることが可能だ。

犠牲者が10万人を超えるともいわれる内戦の悲惨さや、多くの傷痕 が残っていることを考えると、ここがビーチで気楽な休日を過ごす最適 の場所であるとはまだ言い難い。しかし、冒険心に富む旅行者は、ここ を訪れることで回復の初期段階にある魅力的な場所を探索することがで きる。

ある日の午後、私は長年にわたりタミル人支援組織を統括してきた ジャフナの有力者、ラジャラム・ラサラトナム氏とお茶を飲んだ。

ラサラトナム氏は、内戦で対立したシンハラ人とタミル人が、過去 には友好的に長期間共存し、今でも個人レベルでは大抵仲良くやってい ることを外部の人々の多くが知らないと指摘し、「政治家がすべてを台 無しにした」と話す。

静寂の雰囲気

スリランカ北部での3日間の滞在で、私が出会った欧米人は、寺院 の「写真撮影禁止」の注意書きの真下で写真を撮っていたフランス人女 性1人だけだ。そのため、ジャフナから東海岸のトリンコマリーに飛行 機で移動し、ジャングル・ビーチ・リゾートで欧州から来た若いカップ ルがラウンジチェアに寝そべっているのを見た時は、場違いな印象を受 けた。

バッティカロア郊外にあるパセクダでは、スリランカ政府から公式 に指定を受けた観光地の建設が進んでいる。多数の新しいホテルが来年 末までにオープンする予定だ。

私はジャングルの中にある紀元前3世紀にさかのぼる僧院ブッダン ガラにも立ち寄った。言葉では言い尽くせないような静寂の雰囲気が醸 し出されていた。

野生の象

そこから南に1時間車で走ると、ヤシの木が並んだ入り江に東海岸 随一のサーフスポットであるアルガム湾がある。一泊10ドルのわらぶき 屋根の宿泊施設やレゲエバーなどが並び、大学卒業後のバックパッカー を追体験したいなら楽しい場所だ。

長年の常連客によれば、この町にある唯一の通りでは、レストラン の従業員が入口に立ち、英語でお勧めメニューを通りがかりの人々に売 り込む姿を見掛けるようになり、新たな商業主義の気配が漂い始めてい る。

それでも、ここには勧めたいものがたくさんある。野生の象の群れ がその一つだ。ジープを借りて、近くにある鳥類や動物の保護区である クマナ国立公園に出掛けたり、午後遅くにコロンボに向かう主要道路に 車を走らせれば、象の群れに遭遇できるだろう。

原題:Elephants Stroll Past Temples on Once-Forbidden Sri Lankan Coast(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE