【コラム】アジアよ思い出せ、97年に至る自らの無為-ペセック

アジアは今、1997年ではなく1994年 を振り返るべきだ。97年の悪夢は今も記憶に生々しい。通貨安に歯止め がかからず経常赤字は大膨張。各国の中央銀行と国際通貨基金 (IMF)の当局者らは混乱の封じ込めに奔走した。

97年に見たような危機が再発する可能性は低い。現在は為替相場の 柔軟性が高まり各国の外貨建て債務は減少、銀行はより健全で各国には 何兆ドルもの外貨準備があり経済は透明性を増している。97年と現在に は、似たところより違いの方が大きい。

94年はどうだろうか。同年にグリーンスパン米連邦準備制度理事会 (FRB)議長(当時)は利上げを開始し約12カ月で政策金利を2倍に した。債券市場は巨額損失を被り、アジア金融危機への歯車が回り始め た。程なくドルは上昇し、各国がペッグを維持できなくなったからだ。

しかし、問題は米国政策ではなくアジアの傲慢だった。90年代にア ジアに流れ込んだホットマネーはあまりにも容易に高成長を達成させ た。政策当局者らは海外からの直接投資契約の調印や工場や高層ビルの 着工記念式典、株式相場上昇についての自画自賛に忙しく、必要な仕事 をしなかった。非生産的な投資が膨らむままに放置され、縁故主義が横 行した。

2008年の世界金融危機後、アジアの指導者らは米欧とのデカップリ ング(非連動)を信じた。世界危機の影響を免れたことと高成長が再び アジアを傲慢にした。インドネシアやタイの通貨を投資家が突然忌避し 始めた今、この傲慢のつけが現れ始めている。94年と同様に、アジアが 経済の近代化に取り組めるかどうかが試されている。

油断の兆候は随所で見られる。インドネシアのユドヨノ大統領は腐 敗と非効率を一掃しなければ政治的安定はないことを忘れているよう だ。タイのインラック首相は憲法の手直しに忙しく、家計債務のバブル 発生リスクに気付かなかった。マレーシアのナジブ首相が政治的足場固 めに一生懸命な間に同国の経常収支は赤字に近づいた。インドでは改革 が足踏みしている間に政府の補助金が膨れ上がった。

97年に比べ日本の状況は改善、中国には潤沢な資金がある。米当局 が量的緩和を縮小した空白を、いずれかの国が埋めるかもしれない。し かし、新たな市場動揺の中でアジアは思い出すべきだ。94年から97年に かけて時間が無駄に過ぎたことを。近年の状況はこれにあまりにもよく 似ている。アジアは世界からの賞賛に気持ち良く酔っていないで、弱い 部分を補強することに時間を費やすべきだったのだ。

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです)

原題:Asia’s Real Problem Is Boosterism, Not Fed Policy: William Pesek(抜粋)

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