【クレジット市場】東電CDS一段高、汚染水漏れで5800億円確保暗雲

5800億円の資金確保が年内に必要な 東京電力の社債保証コストが大幅に上昇した。福島第一原子力発電所で 新たな汚染水漏れが見つかったことで、地元の反対が強かった柏崎刈羽 原発の再稼働に一段とめどが立たなくなり、金融機関が融資に際して求 めている今期(2014年3月期)の経常損益の黒字転換が難しいためだ。

CMAによると、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市 場で5年物の東電債保証コストは16日、272ベーシスポイント(1bp =0.01%)に上昇した。1週間の上げ幅は20bpで、6月以来では最 大。汚染水漏れが発表された20日には、6月28日以来の290bpまで跳 ね上がった。日本の投資適格級企業のマークイットiTraxx日本指 数は前週2bp、米国の公益企業は1bpの各上昇にとどまった。

三井住友銀行などの融資団は昨年、総合特別事業計画を前提に東電 への1兆700億円の金融支援を了承。このうち3000億円が12月に実行さ れるほか、昨年8月に先行実施した2000億円の借り換えが年内に必要。 これとは別の過去の協調融資800億円の借り換え期が10月に来る。

東電は4月から柏崎刈羽原発を再稼働させる意向だったが、地元新 潟県の泉田裕彦知事の反対にあい、同事業計画で想定した今期での3期 ぶり黒字確保は困難としている。ブルームバーグが入手した資料による と、同社は再稼働できない場合は黒字化には最低8.5%の電気料金値上 げが必要との試算を銀行団に示した。

BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリストは、東電 が3期連続の経常損失を計上した場合、「銀行も株主がいるので払い続 けるとは必ずしも言い切れない」と指摘。廃炉や賠償負担、汚染水など 問題が棚ざらしとなるなか、信用市場では「実際にはそうならないかも しれないが、表面的な懸念が出やすい状況になっている」と述べた。

震災と赤字

2011年3月の東日本大震災の津波被害を受けた福島第一を含め東電 の既存原発は廃炉か停止を余儀なくされている。原発に代わる火力発電 の燃料費がかさみ、12年3月期から2期連続で経常赤字。事故の損害賠 償なども含めると、13年3月期の最終赤字は6853億円に膨らんだ。

東電は金融機関への支援要請で策定した昨年の総合特別事業計画 で、定期検査中の柏崎刈羽原発の再稼働を前提に今期は916億円の経常 利益を想定していたが、再稼働は実現しておらず、第1四半期(4-6 月)は295億円の赤字となった。広報担当の吉田真由美氏は、同計画に ついて「達成に向けて最善をつくす」とだけ述べた。

ブルームバーグが入手した東電の試算によると、年度内に再稼働も 料金値上げのいずれもできなかった場合、今期の経常損益はとんとんに とどまる見通し。再稼働できない場合、来年1月に8.5%値上げすれ ば、約310億円の黒字を確保できるという。

3期連続赤字となれば、銀行にとっては引き当て増につながりかね ないが、野村証券の魚本敏宏チーフ・クレジット・ストラテジストは、 「銀行団がただちにリファイナンスに応じないということになる訳では ない」と指摘した。

再稼働問題

柏崎刈羽原発は全7基で計821万キロワットの出力を持つ世界最大 の原子力発電所。東電が保有する発電所の出力合計の約13%に相当す る。また総合特別事業計画によると、原子炉1基稼働した場合のコスト 削減額は約780億円に上り、再稼働までの間は収益を圧迫している。

北海道、関西、四国、九州の電力4社が一斉に原発再稼働に向けた 安全審査を申請した先月8日、泉田知事の事前了承が得られなかった東 電は柏崎刈羽原発6、7号機の申請を見送った。同知事は今月6日の時 点でも、「真摯な対応をしていただけると先に行けるが、日本語で行く とフランス語で返ってくるようなやりとりが続いている」と述べ、強硬 姿勢を崩していない。

野村証券の魚本氏は、新潟県との「丁寧な話し合いが進むことが期 待される。その内容で徐々にポジティブなものが出てくれば軟着陸でき るだろう」と話した。

汚染水

そうした中、東電は20日、福島第一で汚染水を貯めていた地上タン クから300トン漏えいしたと発表した。汚染水漏れは過去4回発生して おり、今回は量が最大。エネルギー・コンサルタントであるトム・オサ リバン氏は、「福島にとって非常に深刻な問題であるだけでなく、柏崎 刈羽の再稼働に影響を与える可能性がある」と指摘している。

これを受け、原子力規制委員会は21日の会合で、汚染水流出につい て国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)の「レベル3」(重大 な異常事象)に該当すると発表。それまでは「レベル1」と暫定評価し ていた。同日の同社株価は一時、前日比15%安の523円まで下げた。

東電は汚染水対策で常に後手に回り、選択肢も尽きていることか ら、安倍晋三首相は今月、「汚染水対策は喫緊の課題」として国が対策 の前面に出る方針を表明した。経産省は凍土遮水壁について、14年度の 予算請求を検討している。

--取材協力:Jacob Adelman、菅磨澄、Yusuke Miyazawa、岡田雄至. Editors: 持田譲二, 上野英治郎

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