安倍首相の歴史的評価、鍵は経済より原発事故対応-ペセック

アベノミクスは忘れよう。日本の外 交・軍事面での影響力を再び高めるための取り組みも無視すべきだ。安 倍晋三首相の歴史的評価は、チェルノブイリ事故以来最悪の原子力発電 所危機を収拾するために何を実行したか、何をしなかったかというその 一点で決まる。

驚かされるのは、2011年3月の福島第一原子力発電所のメルトダウ ン(炉心溶融)事故以降、日本のリーダーの関心がいかに薄れたかとい うことだ。菅直人元首相や野田佳彦前首相は、東京から217キロの距離 にある福島原発の放射能漏れや使用済み核燃料棒を事実上無視してい た。昨年12月に就任した安倍首相も福島原発の処理は万事順調だと装う 3人目の首相となった。

そうした中で現実が先週、不都合な形で再び表面化した。放射能に 汚染された地下水が太平洋に流れ込んでいる証拠が相次ぎ、安倍首相は 東京電力に問題の収拾を一任しないことを認めざるを得なくなった。国 際的な圧力を受け、首相は流出に歯止めをかけるため政府が速やかに多 面的なアプローチを確実に取ると言明した。

安倍首相の本気度を疑うのは申し訳ないが、提案された改善措置は 大ざっぱで、地下水凍結という方法は不十分だろうと科学者は懸念して いる。原子力の規制当局は北アジアを汚染する原子炉を廃炉にすること よりも運転再開にまだ集中しているようだ。東電はもっと悪いものを垂 れ流しながら真っ赤なうそを言っている。にもかかわらず東電は国有化 されていないし、役員陣は職にとどまったままだ。

体制順応起因の人災

だが、私が本当に心配なのは、こうしたことではない。日本の当局 は福島が「どのようにして」チェルノブイリと同義語になったのかとい う問題で行き詰まり、「なぜ」発生したのかや、世界にとってそれが 「何を」意味するのかを考えていない点が心配なのだ。

福島の事故は日本株式会社の体制順応的な傾向に起因する人災で、 回避可能だった。東電は安全性の記録をごまかし、数千万人の命を危険 にさらした。

腐って危険なこんなシステムを増殖させるのは「原子力村」だ。電 力会社と規制当局、官僚、原子力産業を擁護する研究者との癒着によっ て東電は長年、怠慢に対して何の罰も受けないで済んでいた。こんな関 係やカネ、メディアへの影響力に裏打ちされた東電は、この2年半にわ たり放射能汚染データをごまかし続けてきた。東電の汚染水対策を政府 がようやく代行することになっても大したことではない。

現実を見詰めよ

日本政府は今こそ現実を見詰め、以下の6つを実行すべきだ。まず 原発の廃炉。被害の規模を評価する独立監査人を海外から招致。周辺地 域が数十年間にわたり居住や漁業、農業には安全でない可能性を認める こと。革新的な解決策を世界中で模索。原子力村の解体。多額の汚染対 策費用について日本国民に真実を伝えること。

こうすることで、世界にとって「何」を意味するかという問題に行 き着く。国際舞台では福島はますます日本の不名誉になりつつある。放 射性物質はクロマグロから検出されている。日本からロシアに輸出され た中古車や自動車部品は言うまでもない。もう一度大地震に見舞われれ ば福島に再び被害が出て、東京が開催を希望する2020年の夏季五輪まで にさらに原子炉が打撃を受ける恐れがある。世界は全く回避可能な大惨 事について日本の言い分を2度も認めることはない。

アナリストは安倍首相による日本の財政健全化に向けた取り組みを 評価しているが、後世の人々は東電と原子力村が作った惨事の後始末を したかどうかで首相の手腕を判断するだろう。 (ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Fukushima Replaces Economy as Abe’s Legacy Issue: William Pesek(抜粋)

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