黒田日銀総裁:消費増税と脱デフレは両立する-前向き循環は維持

日本銀 行の黒田東彦総裁は8日午後、定例記者会見で、消費税率引き上げが予 定通り行われても、既に始まっている経済の前向きな循環は基本的に維 持されると述べ、脱デフレと消費税率引き上げは「両立すると思ってい る」と語った。

黒田総裁は日銀政策委員会の成長率見通し(委員の中央値)で、年 度当初に消費税が3ポイント引き上げられる14年度がプラス1.3%、年 度半ばに2ポイントの増税となる15年度がプラス1.5%になっていると 指摘。その上で、税率引き上げの影響について「駆け込み需要とその反 動は予想されるが、景気の前向きな循環は基本的に維持されて、基調的 には潜在成長率を上回る成長を続ける可能性が高い」と述べた。

足元では、来年4月からの消費税率引き上げの最終決定をめぐり、 慎重論も出始めている。黒田総裁はこの点に関連し、財政規律の緩み や、金融政策が財政政策に従属する、いわゆる財政ドミナンス、あるい は財政資金を日銀が融通する財政ファイナンスを行っているとの懸念を 持たれ、それが長期金利に跳ね返ると、「せっかくの量的・質的金融緩 和の効果が減殺される恐れがある」と述べた。

黒田総裁はまた、「大幅な財政赤字が続いて、既に政府債務残高が 極めて高い水準になっていることを踏まえると、政府において、今後の 財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を進めていくことが 極めて重要だ」と言明。「日銀としては、その着実な推進を強く期待し ている」と述べた。

必要なら上下双方向の調整

足元の景気については「所得から支出への前向きな循環メカニズム が次第に働き始めている。引き続き設備投資や雇用者所得などのデータ を確認していきたい」と述べた。日銀は同日開いた金融政策決定会合 で、足元の景気は「緩やかに回復しつつある」との判断を据え置いた。

消費税率引き上げで景気が想定外に大きく落ち込んだ場合の対応に ついては「日銀の量的・質的金融緩和は2年程度で2%の物価安定目標 を達成するために必要かつ十分な金融緩和をするということなので、そ ういう目標に沿って行っていく。従って、必要があれば上下双方向の調 整はもちろん行う」と語った。

日銀は海外経済について、同日の決定会合後に公表した声明文で 「一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに 向かっている」と指摘。前月の「引き続き製造業部門に緩慢な動きもみ られているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている」から小幅 修正した。

黒田総裁はこれに関連し、海外経済をめぐるリスクは前月からどう 変化したのかを問われ、「前月に比べて何か非常に大きな変化があった とは思わないが、どちらかと言えば、若干、全体としてのリスクはむし ろ減少したように見える」と述べた。

テールリスク顕在化なら適切対応

海外経済をめぐるテールリスク(起こる可能性は低いが、実際に起 こると多大な影響を及ぼすリスク)が顕在化した場合の対応では「テー ルリスクは欧州その他を見ても、非常に小さくなってきている」と指 摘。その上で「もし何か大きなことが起こって、私どもが考えているよ うな物価安定の目標が大きく損なわれるような状況が起こるとすれば、 当然それに対応して、適切な政策を取る」と語った。

米国ではQE3(量的緩和第3弾)における資産買い入れ規模の縮 小が9月にも開始されるのではないかとの見方から、金融資本市場が神 経質な動きを続けている。総裁は量的・質的金融緩和の出口政策につい てあらためて問われ、「具体的な議論を行うのは時期尚早」との立場を 繰り返した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE