「スバル」は利益率で勝負へ、台数追わず-富士重社長

2012年以来の株価上昇率が約5倍 と、突出している自動車メーカーがある。「スバル」ブランドの販売拡 大で業績好調な富士重工業だ。その吉永泰之社長はいま、「このまま規 模拡大するのが本当にスバルの道なのか」という問いかけをしようとし ている。

吉永社長は5日のインタビューで「販売が好調だと、こんなに売れ てるんだから安い車も出そうよという雰囲気にもなる」と会社全体が勢 いづいている現状を指摘した上で、8月下旬から社内であらためてスバ ルが目指す方向を議論し、来春にもまとめたいとの意向を示した。新た な方向性が決まれば「スバルとしては大きなターニングポイントにな る」という。

吉永社長は、年間販売100万台レベルがスバルに合っており、その 達成後は台数より利益率を求めたいとの考えを示した。国内自動車8社 のうち販売規模は最少だが、「他社と違う立ち位置を持つことに強い意 味」があり、その違いは「他よりちょっとだけ高くてスバルにしかつく れない車」や「高付加価値で高利益率を目指すビジネスモデル」とい う。富士重は20年までに年間販売100万台を目指す計画を示している。

調査会社IHSオートモーティブの川野義昭アナリストは、スバル は水平対向エンジンという差別化の武器を持っており、得意分野に集中 するのは評価できると述べた。また、ナカニシ自動車産業リサーチの中 西孝樹アナリストは、100万台レベルでニッチ市場に応えていくのは正 しい戦略だという見方を示した。

水平対向エンジンは左右に分かれたピストンが対称的に動いて振動 を打ち消し合う構造で、低重心で走行の安定性に優れているとされる。 独ポルシェとスバルが車両に搭載しており、「スバリスト」と呼ばれる 熱心なファンがいる。

抜群の利益率

09年度に1.91%だった富士重の営業利益率は、東日本大震災時の11 年度に一時低下したのを除き毎年向上。13年度4-6月期には12.73% へ拡大した。ブルームバーグデータによると、4-6月期はトヨタ自動 車の同10.61%、ダイハツ工業の9.57%、ホンダの6.53%などをしの ぎ、国内8社でトップ。

スバル販売好調は、09年に全面改良した5代目レガシィを投入した ころに始まった。世界で自動車の小型化が進む中、セダンタイプの車幅 を50ミリ、車高で80ミリ拡大し、アウトドア愛好家好みに仕上げた。以 後、新車投入の度に、アウトドア向けだけでなく都市部や女性などに顧 客層を広げた。世界販売は08年度の55.5万台に対し、13年度に約35%増 の75.2万台の見込みだ。

ラインアップが少ないのもスバルの特徴だ。富士重は08年にトヨ タ、ダイハツと3社の協力関係強化で合意し、経営資源集中のため軽自 動車の生産を止めた。現在の基本生産モデルは「レガシィ」「インプレ ッサ」「フォレスター」など6車種でいずれも水平対抗エンジンを搭載 している。

安全性でも評価は高い。米国ハイウェイ安全保険協会の安全評価 で、スバルは北米販売モデルで相次ぎ高い評価を得ている。中西アナリ ストは、スバルは「アウトドア」と「安全性」の2つの強みで顧客を惹 きつけており、満足度も高いと述べた。

トヨタとの関係

中西アナリストは「スバルがニッチ市場に集中できる背景にはトヨ タとの関係の良さがある」と述べた。トヨタは富士重株の16.5%を保有 する筆頭株主。12年にはスバルの水平対向エンジン技術を生かしたスポ ーツカーを共同開発し、スバルが「BRZ」、トヨタは「86」として 発売した。両社の技術とトヨタの資金力を生かして開発したモデルで、 BRZは米国で納車まで一時8カ月待ちの人気車種となった。

自動車市場で世界最大の中国では、政府が11年にトヨタと資本関係 を理由に富士重の現地生産認可を見送るという誤算もあった。しかし、 翌12年に発生した反日運動では日系自動車メーカーが販売急減に苦しむ 中、富士重は日本からの輸出車両を、中国でなく米国に振り向けること で収益への影響を抑えることができた。

リスク

業績好調な富士重のリスクについて、アドバンストリサーチジャパ ンの遠藤功治アナリストは「敢えて挙げるとすれば、米国市場に大きく 依存していることで、米国経済が落ち込み市場が縮小したら収益への影 響が大きい」と述べた。13年度計画で米国販売は全体の51%を占める。

吉永社長は、高付加価値・高利益追求の方向を極めるには、商品だ けでなく、販売店やアフターサービスの質などを上げる必要があり、巨 額の費用がかかるとみている。それでも、「足元で利益が出ている今だ から、勝負に出てもいい」と感じていると述べた。同時に全社が同じ方 向を向かなければ達成できない難しい挑戦で、「従業員の生活もかか る」課題であることから、慎重に社内で議論を深めていく方針だ。

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