ゴールドマンを出し抜け、スーパーリッチ取り込み競争が激化

博士号を持つカレン・マクニール氏 はカリフォルニア大学バークレー校で歴史を教えていたが、この6月に アセント・プライベート・キャピタル・マネジメントに転職した。アセ ントは米銀USバンコープ傘下のファミリーオフィス。超富裕層の一族 の資産の管理・運用を請け負う部門だ。

過去にさかのぼって顧客の家族の歴史を調べるのがマクニール氏の 仕事だ。一族が築いた巨額の富について理解を深める手助けをする。こ のサービスはアセントのマイケル・コール社長が考えついた。同社長の 目標は米銀5位のUSバンコープをハイクラス金融サービス市場の有力 プレーヤーにすることだ。

コール社長(53)とマクニール氏はアセントの5拠点の一つ、サン フランシスコで勤務している。白を基調にしたオフィスはアップルスト アやヴァージン・アメリカの機内を思わせる。ブルームバーグ・マーケ ッツ誌9月号が報じている。

サンフランシスコ湾を望む21階のオフィスを案内してくれたコール 社長は、「新興の億万長者が好みそうな内装にしている」と説明した。

ブルームバーグ・マーケッツ誌の2012年調査によると、アセントは 世界で2番目のペースで顧客資産を拡大させたファミリーオフィスだっ た。助言対象の資産は96%増え44億ドル(約4300億円)となった。増加 率の数字にはUSバンコープから移管された資金は含まれない。アセン トは新興富裕層を顧客に取り込もうとしている。顧客の約60%は自ら富 を築いた創業者とその一族だという。

ゴールドマンより先に

アセントの顧客になるためには5000万ドル以上の資産を持っている 必要があるが、他のファミリーオフィスと異なり、アセントでは一族経 営の非公開企業も資産として認められる。

「企業のオーナーが株式公開を考え始めるよりも5年前の段階で顧 客にしたい」とコール社長は言う。「ゴールドマン・サックスより先に 関係を築きたい。そうしておけば機が熟した時に顧客はもうわれわれの ものだ」と同社長は語った。

アセントのサンフランシスコ拠点の周囲ではハイテク企業の億万長 者が次々と生まれている。他の業界と異なり、フェイスブックやリンク トインのようなハイテク企業の経営者らは若くて多忙、退職後の生活や 信託口座には興味がないと、コール社長は話す。

「ハイテク業界の億万長者へのサービスは、プロスポーツ選手への サービスに似ている」という。7月半ばにはプライベートジェットを買 うのがいいか借りるのがいいかでアドバイスしたと、コール社長は例を 挙げた。

激しい競争

資産増加ペースのトップはCVアドバイザーズだった。フロリダ州 マイアミを拠点とする同社は、中南米の富豪を取り込むことで顧客資産 を増やした。CVを率いるエリオット・ドーンブッシュ氏はかつて、ベ ネズエラの建築業者として居住用やオフィス用の高層ビルを建ててい た。CVの資産は12年に倍増し、25億ドルに達した。増えた分はわずか 6家族の資産だという。全て紹介によって顧客になったとドーンブッシ ュ氏は述べた。「顧客として適切かどうかは、業務を請け負う前に長い 時間をかけて確認する」と同氏は説明した。

ニュー・リッチを取り込む競争は激しい。アイコニック・キャピタ ルとセブン・ポスト・プライベート・インベストメント・オフィスはい ずれもサンフランシスコを本拠とし、アセントと同じ顧客層を狙ってい る。事情に詳しい関係者2人によれば、元ゴールドマン・サックス・グ ループ幹部のディベシュ・マカン氏らが設立したアイコニックは、フェ イスブックの初期従業員の資金を運用している。従業員31人の同社 は200家族の資金50億ドルを預かっている。セブン・ポストもゴールド マン出身者が運営。同社の預かり資産は32億ドル。

富裕層の数は過去最高

ファミリーオフィスは世界中でブームになっている。キャップジェ ミニとRBCウェルス・マネジメントの年次調査によると、投資可能な 資産100万ドル以上を持つ金持ちの数は12年に9.2%増え、過去最高 の1200万人に達した。これらの富裕層が持つ資産の額は10%増の46 兆2000億ドル。資産3000万ドル以上の層がけん引しているという。

資産規模でトップは依然、大手銀行だ。1位は香港に本拠を置く HSBCプライベート・ウェルス・ソリューションズで、資産は12年 に11%増え1373億ドルとなった。顧客数は340家族。2位はシカゴのノ ーザン・トラストで、3457家族から1120億ドルを預かっている。資産の 増加率は23%。

コール氏の就任以来、アセントは80人を採用し5カ所にオフィスを 設けた。その一つのサンフランシスコ・オフィスにはアンディ・ウォー ホルやジャスパー・ジョーンズ、ロイ・リキテンスタインの作品が飾ら れている。どれもレンタルだ。両親がアセントの社員と話をしている間 子供たちが過ごす部屋も用意されている。オフィス全体の雰囲気に合わ せたソファーと白いクッションが置かれ、ゲーム機のXboxと資産を 守る方法を学べるボードゲームがある。

孫の代で財産消失

アセントとCVアドバイザーズはいずれも、起業家の資産が子供や 孫の代で消失するという、よくあるシナリオを回避することを目指して いる。

ウェルスマネジメントの専門家で関連本を何冊か出している弁護士 のジェームズ(ジェイ)・ヒューズ氏によれば、富裕層の85%は3代目 までに財産を失う。このうち90%のケースは、コミュニケーションと意 思決定の欠如が原因だという。

ヒューズ氏(70)は歴史学者や心理学者を抱えるコール氏の戦略に 大いに賛同したため、アセントの相談役になった。「素晴らしい実験 だ」と同氏は称賛した。

原題:Family Offices Chasing 12 Million Rich on $46 Trillion of Assets(抜粋)

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