日本株動かす主役、安倍氏からバーナンキ氏へ交代-円安異変

レンジ相場の様相を呈する日本株に 対し、投資家の先高期待はなお強い。円の先安観から、輸出関連を中心 に企業業績の改善期待が背景にある。しかし、円安・株高ドラマの舞台 は春先までの日本から最近では米国に移り、主役も安倍首相から米連邦 準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長に替わりつつあるようだ。

ブルームバーグ・ニュースが集計した市場関係者15人のTOPIX の年末予想中央値は、2日終値比で6.2%高の1270ポイント。SMBC 日興キャピタル・マーケッツの株式ストラテジスト、ジョナサン・アラ ム氏は「今の為替水準と強いマクロ経済指標が継続すれば、日本株は堅 調さを維持するだろう」と予想。日本株に対しては「自分でも驚き、少 し心配になるほど強気だ」と言う。

昨年11月の衆院解散以降、TOPIXは2日までに66%上昇。こと しの上昇率は先進国24市場の中でトップだ。安倍政権と日本銀行が進め るリフレ政策への期待と評価から、ドル・円相場が1ドル=79円台から 一時は103円まで円安が進み、それに伴う業績改善期待が日本株を押し 上げてきた。5月に年初来高値を付けて以降は一進一退の状況にある が、米国で量的金融緩和策の縮小観測が浮上、日米金利差の拡大を通じ た円安・日本株高の見方は揺らいでいない。

ニッセイアセットマネジメントの久保功株式ストラテジストは、一 番可能性の高いシナリオは、FRBの量的緩和縮小を受けた「為替の円 安と日本株の一段高」と指摘。長い目で見れば、「日銀の大胆な金融緩 和策は継続する一方、米国は緩和縮小に転じる。為替は年末にかけて円 安方向で推移するだろう」とみている。

FRB転換、9月予想が5割

FRBは、早ければ9月にも毎月の債券購入額の規模を縮小させる と予想されている。1986年以降、FRBが金融政策を引き締めに転じた 局面は4回あり、今回の政策転換はおよそ7年ぶり。ブルームバーグ・ ニュースの調べでは、FRBが政策金利を引き上げた当日までの12カ月 間は、TOPIXが平均で30%上昇。直近の2004年には32%上げ、米 S&P500種株指数を大きくアウトパフォームした。

バーナンキ議長は5月下旬の議会証言で、米金融当局が景気の持続 的な拡大を確信できる場合、今後数回の会合で債券購入のペースを減速 させ始めることもあり得る、との見解を示した。ブルームバーグが7月 下旬に実施したエコノミスト調査によれば、9月の連邦公開市場委員会 (FOMC)で緩和縮小に踏み切るとの回答は50%、10月は15%、12月 は28%。来年以降の開始を見込む向きは、7%にとどまる。

三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケットストラテジストは、7月21 日の日本の参院選前から「FRBの量的緩和縮小がマーケットの主要テ ーマになっていた」と指摘。9月か12月のFOMCでの実施が考えら れ、「タイミング良くできれば、ドル高と好調な米経済というプラス材 料を追い風に、日本株は一段高の展開もある」と読む。

ブルームバーグ・データによると、市場参加者らはことし7-9月 のドル・円水準を1ドル=102円、10-12月に105円、来年1-3月 は106円、同4-6月は108円とみている。

3本の矢、期待から現実へ

一方、これまで日本株の買い材料となってきた安倍政権の経済政 策、いわゆるアベノミクスは金融緩和、財政出動、成長戦略と3本の矢 がひとまず放たれ、期待から現実を直視する局面に移った。第3の矢で ある成長戦略は、6月に発表された第1弾で国家戦略特区の創設、自由 貿易協定(FTA)の拡大などを柱とする規制改革に向けた取り組みを 明記。SMBC日興証券によると、今秋発表の第2弾では企業の設備投 資を促進するための減税策などが盛り込まれる見込みだ。

ただ、市場関係者の期待は必ずしも高まっておらず、アリアンツ・ グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之最高投資責任者は 「具体的に大きなインパクトがあるようなものは出てきそうもない」と 冷静。法人税の実効税率引き下げなどが海外投資家を中心に期待されて いたが、「踏み込んだ政策が出る可能性は今のところ低い」と言う。

東日本大震災やタイ洪水被害、歴史的円高などによる厳しい局面か らようやく脱してきた日本経済。6月の失業率は4年8カ月ぶりの3% 台に低下、12日に内閣府が発表する4-6月の実質国内総生産 (GDP)は、エコノミストらの予測で年率プラス3.6%(中央値)と 1-3月期のプラス4.1%に続く高成長となるもようだ。一方、今後は 消費税引き上げの問題が待ったなしで、持続性には不透明感もある。

円安デメリット

また、株高期待のベースとなる企業業績についても、楽観論ばかり ではない。ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役 は、「円安には輸出企業の収益を押し上げるメリットがある一方、輸入 価格上昇によるエネルギーコストの上昇というデメリットも大きく、中 間決算辺りで問題が顕在化する」と予測。4-6月期決算での企業収益 に対する疑心が、「中間期ではやはりダメかという確信に変わる」と警 戒感を示している。同氏は、日本株は9月ごろから下落に転じ、 TOPIXの年末予想値は950ポイントとしている。

原油価格の代表的指標であるニューヨーク原油先物価格は、昨年11 月中旬以降、円建てで5割程度上昇した。資源エネルギー庁の11年度調 査によると、全産業のエネルギー投入量に占める割合は業種別で1位の 鉄鋼が31%、2位の化学が18%。こうした業種が、特に円安によるエネ ルギーコスト上昇の影響を受けやすい、と菊池氏は指摘する。

空運や食品業界などでは、円安が利益を圧迫するケースが既に散見 される。円安による燃料費の上昇などを受け、ANAホールディングス の4-6月期(第1四半期)の連結営業損益は2四半期連続の赤字。円 安による原料コストや輸入品価格の上昇を販売価格に転嫁できず、日本 ハムの同四半期の営業利益は前年同期に比べ13%減った。

5日の東京株式相場は、前週後半の連騰の反動から利益確定売りに 押され、TOPIXは前週末比1%安の1184.74、日経平均株価は1.4% 安の1万4258円4銭といずれも3営業日ぶりに反落。保険や銀行、電力 など直近の上げが目立っていた業種を中心に幅広く下げ、売買代金と売 買高はことし最低を更新した。

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