「今が底値」とアジア投資家が東京物件物色-円安割安、上昇期待

バブル崩壊から20年以上が経過し、 すっかり手ごろな値段となった東京の地価。今後はアベノミクスを背景 に地価反転が期待できるとみて、アジアの富裕層や投資家たちが、都心 の物件を盛んに物色し始めている。

日本と台湾を行き来する元キャビンアテンダントのジュリア・チャ ンさん(48)は、都内で3軒目の購入物件を探している。保有資産の分 散化に向けて海外でも物件を探し回った結果、「東京の不動産は比較的 安くなっており、投資するにはいい買い物だ」と判断した。

台湾最大の上場不動産会社、信義房屋不動産の何偉宏社長による と、今年1-6月に日本で販売仲介した物件は113億円と、昨年1年間 の86億円を既に上回っている。顧客間の物件争奪戦は過熱化し、抽選で 買い手を決めるようなケースもある。何氏は、「販売実績が急増したの はアベノミクスと大いに関係がありそうだ」と話す。

不動産売買・仲介の三倉屋商事が中国語で日本の物件を紹介するホ ームページを設けたのは3年前。谷口雅之社長は「今まで全然反響がな かった」というが、昨年末の安倍政権発足を機に「急に台湾、香港から 問い合わせがくるようになった」と振り返る。

アジア諸国からの引き合いが活発化している背景には、賃料収入が 最高で物件価格の8%にも達するほどの高収益性や、デフレ脱却を目指 す安倍政権下での値上がり期待がある。

また、香港やシンガポールでは地価が高騰するなか、円安のおかげ で外国人にとって日本の不動産は割安感が増しているという側面もあ る。何氏は、円安に伴い東京のマンション価格は昨年末に比べて15%安 くなったという。

マネー流入

不動産仲介のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのサンジ ェイ・バーマ最高経営責任者(CEO)は、アジアの主要都市に滞留し ていた高額物件への投資マネーが今や、東京に流入し始めていると指摘 する。

信義房屋の何氏によると、5000万円以下のマンション(1ベッドル ーム)で投資収益は約6-7%と、住宅ローン金利の約2.5-3%を上 回っているため、収益を確保できる。

台湾の大手銀行、中國信託商業銀行東京支店によると、1-6月の 日本での外国人向け住宅ローン供与額は前年同期の3倍に跳ね上がっ た。変動型ローン金利は2-3%と邦銀よりも高いが、住宅ローン担当 の松本惠娟氏は顧客にとって今が格好の投資チャンスだとして、同行は 旺盛な資金需要に応えようとしていると話す。

外国人の投資マネーは、日本版不動産投資信託(Jリート)にも向 かっている。東京証券取引所のデータによると、Jリートの投資主体別 売買動向(差し引きベース)で外国人は、2012年は514億円の買い越し に転じた。前年は186億円の売り越しだった。今年1-6月でも275億円 の買い越しになっている。

投資機会

日本の主要都市の不動産価格は1990年ごろのピーク時に比べて半値 以下に落ち込んだのに対し、香港は過去5年でほぼ倍増、シンガポール や中国、マレーシア、台湾は25%強も値上がりした(調査会社グローバ ル・プロパティー・ガイド調べ)。

総合不動産サービスの米ジョーンズラングラサール(JLL)の調 べでは、東京の住宅価格は1平方フィート当たり12万-15万円なのに対 し、香港は28万-40万円、シンガポールは20万-25万円と、いずれも東 京を上回っている。

さらに今後の地価動向を左右する政策運営にも違いが見られる。日 本はアベノミクスの下で日銀が大規模な金融緩和に踏み切ったこともあ り、株価や不動産などの資産インフレ期待が台頭。一方、中国や香港、 シンガポールでは、当局が行き過ぎた不動産投機の抑制策に既に動いて いる。

海外マネーを取り込め

少子高齢化で国内の住宅需要が中長期的には縮小に向かう中、不動 産業界は海外マネーを取り込もうと、躍起になっている。

JLLは日本のマンション販売会を昨年以降、シンガポールで5 回、香港で1回開催してきた。同社キャピタルマーケット事業本部の水 野明彦氏は、「今年はこれまでにシンガポールと香港で総計100戸以上 売れた。12月末までに150-180戸は売りたい」と鼻息も荒い。

東急リバブルは昨年、上海に現地法人を設立するとともに、香港や シンガポールなど海外で国内マンション販売を始めた。取締役専務執行 役員の北川登士彦氏は、「過去にはデベロッパーが海外に売りに出てい くことはなかった」というが、「アジアは欧米と並ぶ経済規模になり、 富裕層の比率が高い」と指摘。同社はアジアの富裕な投資家相手に新た な販売チャネルを広げる必要があると判断したという。

--取材協力:長谷川敏郎、Adela Lin、Pooja Thakur、Kelvin Wong. Editors: Andreea Papuc, 持田譲二

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