藤巻氏:パンパンに膨れ上がった国債バブル、消費増税見送りで破裂も

著名投資家ジョージ・ソロス氏の投 資アドバイザーを務めた経歴を持つ藤巻健史参議院議員(元モルガン銀 行東京支店長)は、消費税率引き上げの見送りや米国による量的緩和縮 小が日本の財政破綻の引き金になるリスクがあるとの懸念を示した。

藤巻氏は7月31日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで 「公的債務残高が約1000兆円に膨れ上がる中、もし消費税率を引き上げ ないことが決まったら、きっと財政破綻が起こる。市場も限界に来てい て国債はパンパンに膨れ上がったバブルなので小さな刺激で破裂する。 そのきっかけになる可能性はある」と指摘。また、「米国の量的緩和縮 小も一つの小さな針になるかもしれない」とも語った。

政府は消費税率を2014年4月から現行の5%を8%に、15年10月か らは10%へ引き上げる予定。安倍晋三政権は予定通り増税に踏み切るか どうかについて10月ごろに開く臨時国会召集前に最終決断する方針だ。 一方、首相に近い内閣官房参与の浜田宏一米エール大学名誉教授らは増 税に慎重論を唱えている。

藤巻氏は「消費税を上げても駄目だろうが、上げなくても大丈夫と 反対するのは政治家としては間違っている。やるべきことはやるのが政 治だ」として、予定通りに実施すべきとの見解を示した。

財務省によると、国債・借入金・国庫短期証券を合わせた国の債務 残高は3月末に約991.6兆円。国際通貨基金(IMF)は政府債務残高 の国内総生産(GDP)に対する比率で、日本が09年から少なくとも18 年までは世界最悪の座を抜け出せないと予測している。今年末は245% と、ギリシャの179%や米国の108%を上回るとみる。

市場のチェック機能働かず

藤巻氏は「大衆迎合的な政治の未熟さと市場原理が働いていないこ とが原因」と分析。日本銀行や日本郵政グループなど政府系の金融機関 が大量に国債を買い入れて金利を低水準に抑えているため、「市場のチ ェック機能が働いておらず、政治家がバラマキをしても痛みを感じな い。民間から国に倒産リスクをシフトさせており、ものすごく危険な状 況」と指摘した。

外国為替市場でドル・円相場は11年10月31日に1ドル=75円35銭と 円の戦後最高値を記録。その後は円安が進み、5月には103円74銭と08 年10月以来の円安値を付けた。「市場原理が働いていれば、こんな国か らは資金が出て行き、円安・ドル高になる。今ごろ1ドル=200円にな っていてもおかしくない。日本の実力は180-200円程度が妥当な水準だ と思う。企業は円高で不利な競争を強いられているが、1ドル=200円 なら輸出が増えるし、農業も復活する」と述べた。

量的緩和は失政

長期金利の指標となる新発10年債物国債利回りは日銀が異次元緩和 を導入した翌日の4月5日に過去最低の0.315%を記録した後、5月23 日には1.00%に跳ね上がった。藤巻氏は、「白川方明前日銀総裁がアベ ノミクスになぜあれだけ抵抗感を示したのかといえば、彼が臆病者だっ たわけでも怠惰だったわけでもなく、インフレを制御できないリスクを 怖がったから」と解説した。

さらに、「目先はインフレ政策により株や土地の価格が上昇する が、その先のことを考えると極めて危険。インフレを起こすために量的 緩和をやったのは大反対だし、失政だと思う」と指摘。「1000兆円の公 的債務があるのに長期金利が上がったら元利払いの急増で税収よりもは るかに大きくなるので、日銀が長期金利を抑えられない限り、日本は破 綻する」と警告した。

藤巻氏は戦争中には必ずハイパーインフレ(超インフレ)になって 新券発行と預金封鎖が起きて、暴力的な資金吸収を行ったと述べた。 「資金を供給するのは後のことを考えなければ誰でもできる。国債を民 間に売って資金を吸収するしかないが、金利を上げたい時に誰がそんな 国債を買うのか。黒田東彦総裁は出口政策を持っていない」と指摘。リ スクを認識せずに量的緩和を行っていることは危険との認識を示した。

三菱UFJ、三井住友、みずほの大手邦銀グループの4-6月期の 連結決算によると国債保有額を3月末から24兆円近く減らし、合計で 約76兆円となった。「3大メガバンクは国債保有を急速に減らしてお り、大丈夫だと思う。問題は一部の地方銀行や信用金庫など。危機管理 能力のあるところは生き残るが、それ以外の金融機関は再編されるだろ う」と述べた。

歳出・歳入均衡化へ100年の大計を

政府は8月上旬に策定する「中期財政計画」に国の一般会計の基礎 的財政収支(プライマリーバランス)の赤字額を15年度までに8兆円縮 小する方針を明記する。

これに対して、藤巻氏は「財政赤字はどんどん膨らんでいる。単年 度予算が黒字化しないことには累積債務は増えていくので支払い金利も 増える。財政が刻一刻と悪化していることが日本経済の最大のネックに なると思う。国民の危機感が全くない」と批判した。「財政よりもデフ レ脱却優先を主張するリフレ派は、市場の怖さを知らない。政治家も市 場の怖さを知らない。海外投資家の方が財政破綻をよほど気にしてい る」とも語った。

ここまで債務残高が膨らんだら財政破綻から逃れるのは無理だと思 うとも指摘し、「今後6年間の間に破綻した後、次にいかに同じことを 起こさない体制を作るかの方が大事。私の政治家としての役割は、そこ だと思っている。小さい政府にして、歳出と歳入を均衡化する青写真を 描く『100年の大計』を立てること」と語った。

藤巻氏は1950年生まれ。74年に一橋大学を卒業し、三井信託銀行 (現・三井住友信託銀行)に入行した。米ノースウェスタン大学大学院 で80年に経営学修士(MBA)を取得。85年にモルガン銀行(現・JP モルガン・チェース銀行)に移籍し、95年から2000年まで東京支店 長。00年にはジョージ・ソロス氏の投資アドバイザーを務めた。7月の 参院選で日本維新の会から比例代表で立候補し、初当選した。

--取材協力:Andy Hung、広川高史. Editors: 山中英典, 青木 勝

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