【コラム】米国の主力バンカーたちが直面するリスク-ペセック

米ニクソン政権下で財務長官を務め たジョン・コナリー氏は1971年に「ドルはわれわれの通貨だが、あなた 方の問題だ」と発言した。債務上限引き上げをめぐるオバマ大統領と共 和党の再対決を前に、この言葉があらためて真実味を増している。

発言から42年後の今、アジア諸国は7兆ドル(約691兆円)近い外 貨準備の大半をドルで保有している。アジア諸国は1997年の危機から学 び、外貨準備を競って積み上げた。各国は市場の不安定化を鎮める武器 を得たが、使い道が分からないほどにその武器の量が膨らんでしまっ た。アジアは米国の債権銀行団になり、主力行の中国と日本は特に失う ものが大きい。

債務上限をめぐる前回の政治的行き詰まりは格付け会社スタンダー ド・アンド・プアーズ(S&P)による米国の格下げにつながり、世界 各国の市場にパニックをもたらした。議会の夏季休会が終わり審議が再 開されれば、同じことが繰り返されるかもしれない。

普通の世界であれば、債権銀行団は融資引き揚げをちらつかせて借 り手に圧力をかけることができる。アジアは米国の政権と議会に一致し た行動を迫ることができるはずだ。しかし、巨額の外貨準備は強さでは なく、経済運営を難しくする問題になりつつある。アジア諸国はこの罠 (わな)から抜け出す方法を考えなければならない。

それでも中国には若干の影響力がありそうだ。ルー米財務長官の最 初の外遊先が中国であったことは偶然ではない。3月に北京で習近平国 家主席と会ったルー長官は今週、財政問題で「危機を作り出さないよう な」行動を議会に呼び掛けた。これは米国の筆頭バンカーである習主席 へのメッセージでもあったかもしれない。

資産配分の誤り

経済改革を進めようとする中国にとって、米国発の混乱は市場を不 安定化させ、ドル急落と人民元の大幅高につながり、その結果、中国の 米国債ポートフォリオに巨額損失をもたらす。円安をてこにデフレ脱却 と経済再生を目指す安倍晋三首相にとっても円が急上昇すれば困ったこ とになる。

中国やその他諸国が米国債の保有を積み上げれば積み上げるほど、 売却は難しくなる。1兆3000億ドル相当を保有する中国や1兆1000億ド ル相当を持つ日本が、その一部を売るというかすかな気配でもトレーダ ーが感じ取れば、市場を震撼(しんかん)させるだろう。このためアジ アの中銀は米国債を買い続けざるを得ない。

これほど大規模な資金配分の誤りを世界はかつて経験したことがな い。アジア諸国は少なくとも、ドルを買い増すことをやめ、資金を国内 に回帰させることを考えるべきだろう。資金はインフラ整備や教育、再 生可能エネルギーの研究開発、そのほか未来に向けて不可欠な投資に充 てることができる。問題は資金を取り戻す方法だ。

通貨サミットを開くべき時があるとすれば、それは今だろう。国際 通貨基金(IMF)あるいは20カ国・地域(G20)がそのような会議を 主催できるかもしれない。サミットようなハイレベルでの議論を通じて アジアが自国の貯蓄を取り戻す方策を見つければ、その時こそ巨額のド ル資産はアジアにとって問題ではなく、課題解決に向けた糸口になるだ ろう。

原題:It’s Time for Asia to Stop Being America’s Banker: William Pesek(抜粋)

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