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洗濯係からスターの座へ-英国のなでしこに転機、旋風の予感

ディフェンダーのケイシー・ストー ニーがチェルシー・レディース・フットボールクラブ(LFC)か ら2000年にアーセナルLFCに移籍した当時、彼女は生活のためにパー トタイムの仕事をせざるを得なかった。その仕事とは、オランダ・サッ カー界のスター、デニス・ベルカンプが所属するアーセナル男子チーム のユニホームの洗濯係だ。

「ありがたいことに今はそんな仕事をする必要はなくなった」と話 すストーニー(31)は、12年のロンドン五輪でサッカーの英国統一女子 代表チームの主将を務めた。現在セミプロのリンカーン・シティー LFCでプレーする彼女は「変わったものね」と感慨深げだ。ブルーム バーグ・マーケッツ誌8月号が報じた。

イングランドサッカー協会(FA)がその気になれば、彼女らを取 り巻く状況はさらに変化するだろう。イングランドのサッカー運営組織 であるFAは今後5年で女子サッカーを地域で2番目の規模のチームス ポーツに育てるための活動に乗り出した。政府機関のスポーツ・イング ランドによれば、今や毎月約25万3000人の少女や成人女性がサッカーを プレーする。参加者の規模では成人男子・少年のサッカーとクリケット に次いで3番目となり、ラグビーをしのぐ。

FAはセミプロの「女子スーパーリーグ(WSL)」の自立のた め、最終的にスポンサーやテレビ放映権から十分な収入を得ることを目 指していると、同リーグ自立の推進役ケリー・シモンズ氏は語った。

ロンドン五輪

この計画の呼び水となったのが昨年の夏季五輪だ。英国統一女子チ ームは08年の銀メダルチームのブラジルを1対0で破り、準々決勝に進 んだ。決勝点は開始2分に右サイドの角度のないところからアーセナル LFC所属のディフェンダー、ステフ・ホートンが決めたゴール。7万 人が入ったウェンブリー・スタジアム(ロンドン)は歓喜に包まれた。

FAで国際試合の責任者を務めるシモンズ氏は、ホートンが決勝ゴ ールを決めたピッチを観覧室から眺めながら、「五輪はまさに女子サッ カーに全く新しいファンを呼び込んだ」と語った。統一女子チームは準 決勝でカナダに惜敗し、金メダルは米国が手にした。

英国は女子選手だけでドイツとフランスと同じ数の金メダル(11 個)を獲得したが、このメダルは報酬にはつながっていない。12年の五 輪参加選手の44%は女子だったが、女子スポーツの多くは現在もスポン サーに恵まれず、メディアの注目度も低い。ワールド・スポンサーシッ プ・モニターの試算によると、英国のスポーツ全体におけるスポンサー 資金は15億9000万ポンド(約2400億円)に上るが、女子スポーツへの配 分はこのうちの約0.5%にすぎない。支援組織の女性スポーツ&フィッ トネス財団(WSFF)によれば、メディアが取材するスポーツ全体の うち女子の競技はわずか5%だ。

WSFFのスー・ティボールズ最高経営責任者(CEO)は「機は 熟した。英国はようやく男子と同じように女子スポーツを振興し、支援 する国になった」と語る。

潜在的なスポンサーにとって女子スポーツの厳しい財政状況はチャ ンスだと話すのは、英投資会社ニュートン・インベストメント・マネジ メントのヘレナ・モリッシーCEO。企業役員における男女平等の実現 に向け旗振り役を務める同氏は、「女子スポーツは『買い』だ。手始め に少額でも資金を投じれば、非常に価値のある資産になる可能性があ る」と話す。

テレビ放送

FAも成功を望んでいる。FAは5年計画で合計350万ポンドを投 資し、セミプロの女子サッカーを来年から1部と2部合わせて18チーム に拡大する。チームに所属する選手は給料を受け取るが、プロ契約を結 んでいる選手はいない。

テレビ放送によって女子サッカーの人気が高まるだろうと話すのは アーセナルLFCのストライカー、レイチェル・ヤンキー(33)。最も 人気のある選手の1人で、代表チームの一員としてほぼ全試合に出場し た彼女は、「私がサッカーを始めたころ、手本になるような女子選手は いなかった」と当時を振り返る。

WSLのシーズンは4月から10月で、サッカーファンは男子リーグ の試合がない夏場に女子の試合を観るチャンスがある。BBCはイング ランド代表の国際試合を全て生中継。7月にスウェーデンで開かれる UEFA欧州女子選手権2013で熱気は最高潮に達する。BTグループ傘 下の新しい有料スポーツ専門局BTスポーツはWSLとイングランド代 表、FAウィメンズカップ戦の14-18年の放映権を購入した。

ナイキやゼネラル・モーターズ(GM)傘下の英自動車ブランド 「ボクソール」、ドイツの自動車部品メーカーのコンチネンタルなどの 企業は女子サッカー人気にあやかろうとスポンサー契約を結んだ。コン チネンタルの英国スポンサー契約担当マネジャー、ローラ・ハーディー 氏は「女子サッカーとともに成長できる」と期待を示した。ソーシャル メディアでの女子チームの存在感は予想以上だという。

収入格差

強風が吹き荒れた4月のある日、イングランド北部セントジョージ のナショナル・フットボール・センターで女子代表チームのホープ・パ ウエル監督が代表メンバーの身体能力を調べていた。3人の検査員が米 アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」を携え、シュー トや心拍数、走力など各選手のデータを測定している。

女子サッカーのトレーニング環境は改善しているものの、報酬はそ うとは言えない。WSLの年俸は上限が2万ポンドに設定されている。 プレミアリーグで活躍する男子の平均年俸190万ポンドに比べれば、そ の変化は緒に就いたばかりだ。

原題:England Women Soccer Stars Get TV Time Instead of Laundry Jobs(抜粋)

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