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臆病者には向かない賭け-起業家の夢、第2の故郷の空に舞う

マレーシアの格安航空会社エアアジ アの最高経営責任者(CEO)で起業家のトニー・フェルナンデス氏は 第2の故郷が2つあると言う。その1つはロンドン。同氏はサッカー、 イングランド・プレミアリーグのクイーンズ・パーク・レンジャーズと 郊外のオックスフォードシャーに本拠を置く自動車レース、フォーミュ ラ・ワン(F1)のケータハムF1チームのオーナーだ。

もう1つは世界4位の人口を持ち活気にあふれる東南アジアの過密 都市ジャカルタだ。アジア最大の格安航空会社エアアジアの創業者であ るフェルナンデス氏は昨年、自身のオフィスをインドネシアの首都に移 し、交通渋滞問題は徒歩で通勤可能な集合住宅に住んで克服した。フェ ルナンデス氏(49)はエアアジアの本社をマレーシア国内に残しながら 幹部陣をジャカルタに移転させたことで本国の8倍の規模を持つ市場に 集中しやすくなると話す。ブルームバーグ・マーケッツ誌7月号が報じ ている。

フェルナンデス氏はエアアジアが就航しているオーストラリアや中 国、インド、日本など約20カ国の都市の中でインドネシアは同社の「ド ル箱だ」と述べ、「好況に沸き活気がある若い経済で、計り知れないチ ャンスがある」と語る。人口2億4900万人のこの国で生み出されている 富がいかに莫大かは、最近裕福になった中間層の間で航空機利用が普及 している点からみても歴然としている。

1997年-98年のアジア通貨危機で13%縮小したインドネシア経済は その後、好調な消費と豊かな資源を原動力に13年間にわたる成長を遂 げ、世界的な金融危機でもそれは途切れなかった。2010年以降の年平均 経済成長率は6.3%となっている。同国の株式相場はさらに目覚ましい パフォーマンスを見せており、6月12日現在、ジャカルタ総合指数は08 年10月の底からほぼ350%上昇。ブルームバーグが追跡する94市場では 2番目の高リターンだ。

ドイツを追い抜く可能性

ブルームバーグの集計データによれば、11年にインドネシアは旧宗 主国のオランダを抜いて世界16番目の経済大国に浮上。12年には国内総 生産(GDP)はさらに6.23%増加し約9000億ドル(約86兆円)に達 し、海外からの直接投資は26%増えて過去最高の230億ドルに上った。

30年まで6%程度の成長率が続けば、ドイツと英国を抜いて世界7 位の経済規模を持つと、コンサルティング会社マッキンゼーは予測。そ れよりも早い20年までに、同国の中間層と富裕層の数は倍増し1億4100 万人強となると、ボストン・コンサルティング・グループは3月のリポ ートで分析している。

ただ、こうした成長に賭けることは臆病者には向かない。外国人投 資家は商品価格の下落や来年の大統領選挙に向けてあふれ出すナショナ リズムに警戒している。インドネシアは発電用石炭やニッケル、スズ、 ヤシ油の輸出で世界最大。液化天然ガスでは3位。

モビアス氏は慎重

著名投資家のマーク・モビアス氏はジャカルタ総合指数が年初以降 に大幅上昇を演じているにもかかわらず、インドネシアについて慎重な 姿勢を取っていると言う。モビアス氏は、自動車小売業でインドネシア 最大手アストラ・インターナショナルの株式にテンプルトン・アジア ン・グロース・ファンド(運用資産184億5000万ドル)の約6%を投じ てはいるものの、同国の消費関連株はもはや割安ではなく、他の業種も 透明性が不十分だと見る。「投資先の選定は容易ではない。企業統治や 汚職の問題がある」と話す。

インドネシアでは今、投資家の目の前にナショナリズムというもう 1つの障害が立ちはだかる。米フリーポート・マクモラン・カッパー・ アンド・ゴールドなどの外国の鉱山会社の一部は政府からロイヤルティ ー支払いの増額や地元企業への持ち分売却を増やすことを命じられてい る。2014年からは粗鉱輸出が禁止され、多くの企業は高額な精錬所建設 や国内溶鉱炉での加工を迫られることになる。

有言実行

外国の投資家に対し一段と非友好的になっているように見えること について、上流石油・ガス業界を監督する政府規制機関SKKミガスの 幹部ルディ・ルビアンディニ氏に尋ねると、「それは選挙までの話」と 笑う。「少数の政治家が有権者を引き付けるためにそうしている。辛抱 すればいい。選挙が終われば全てが元に戻る」と語る。

現時点ではユドヨノ大統領の後継者の予測はつかない。スハルト元 大統領が創設したゴルカル党のアブリザル・バクリ党首やスハルト元大 統領の下で軍司令官を務めた経歴を持つプラボウォ・スビアント氏が出 馬宣言しているが、いずれもスハルト政権時代への後戻りを意味する。

インドネシア経済は2年前ほどの急成長ではないものの、CAPA (アジア太平洋航空研究所)によると、同国の航空会社の旅客輸送は12 年に7000万人と、08年の3700万人から増加している。

航空旅客需要の伸びと同様、エアアジアのフェルナンデス氏のイン ドネシア経済への信頼にも弱まる兆しは見えない。昨年夏のパリ航空シ ョーでエアアジアは欧州航空機最大手エアバスの「A320neo」を200機 発注した。フェルナンデス氏は購入代金180億ドルの一部をエアアジア のインドネシア部門株式の年内売却を通じて調達する考えで、「私は口 で言うだけでなく行動で証明する」と言い切る。

原題:AirAsia Making Jakarta Hub as Fernandes Sees Malaysia Overtaken(抜粋)

--取材協力:Soraya Permatasari、Harry Suhartono、Fitri Wulandari、Neil Chatterjee.

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