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トヨタも部品共通化、欧米メガサプライヤーに商機-日本強化

トヨタ自動車は車体や部品の共通化 でコストを下げる開発手法の本格導入へ舵(かじ)を切った。車種や地 域をまたいだ大量購入を前提とする方式を世界最大手も採用したこと で、欧米の大手部品メーカーがチャンスととらえ、日本事業を強化する 動きが広がっている。

米自動車部品メーカー最大手、ジョンソン・コントロールズは横浜 市に新たな研究開発施設を10月に本格稼働させる予定。車用シートや電 池で世界首位、2012年の自動車部門売上高が213億ドル(約2.1兆円)の同 社は、約35億円を投入した同施設で、トヨタや日産自動車などグローバ ル車種向けの部品開発に取り組む。広報担当の小林満弥氏は、部品共通 化の普及で国内メーカー向け販売増への期待が高まっているとし、顧客 に積極的に技術提案をしていきたいと話した。

トヨタが注力する「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ ー(TNGA)」というクルマづくりの方針では、まず中長期の商品ラ インアップと使用する共通部品の配置や座席位置などを決め、複数車種 を同時に開発する。それに併せて部品の「まとめ発注」も実施する。例 えば従来は50種類以上あったエアバッグは座席位置の共通化で10種類程 度に削減可能になり、全体として20-30%の開発効率向上を目指す。

こうした開発手法は独フォルクスワーゲン(VW)が先鞭(せんべ ん)をつけ、日本でも日産自などが既に着手し、「モジュール方式」と も呼ばれる。経営戦略コンサルティング会社、独ローランド・ベルガー の長島聡シニアパートナーは、こうした手法を業界最大手のトヨタも拡 大することで、世界各地に大量の生産基盤を有しメガサプライヤーと呼 ばれる欧米大手部品メーカーの販売拡大が期待されると話した。

TNGA

トヨタの加藤光久副社長は、3月に愛知県豊田市の本社で開いた技 術説明会で、TNGAについて「従来、擦り合わせ技術のようなことで 商品の特色を出したり、クルマの付加価値を上げていくような開発をし ていたものから、構成要素とかモジュール、部品単位でそれをある程度 組み合わせることで多様な商品を生みだしていこう」とする取り組みだ と説明。先行事例としてVWや日産自、マツダを挙げ、「各社が取り組 んでることと似たようなところになると思う」と話した。

将来的にはプラットフォーム(車台)すべてに共通化の考え方を導 入し、対象となる部品の比率は「最初は2-3割からスタートし、究極 的には7-8割のところは共有化できる仕組みにもっていける」と話し た。多くの自動車メーカーが世界中で使用するグローバル標準規格の部 品への対応も進める。一連の取り組みを通じてデザイン性や良好な視 界、運動性能の向上を図った次期プラットフォームを開発し、15年に発 売する新型車から順次導入するという。

クレディ・スイス証券の秋田昌洋アナリストは3月に発表した TNGAに関するリポートで、この方式の開発で15年に発売する最初の 車種は新型プリウスになると予測。その次は17年ごろに投入される新型 カムリになるだろうとし、「コスト面での厳しい要求はより多くの車種 に広がることになる」と指摘した。

大震災の経験

トヨタは東日本大震災を受けて国内サプライヤーの生産状況を精査 し、2次、3次下請けまで含め全容を把握した。TNGA導入にはこの 経験が役だっている。広報担当のディオン・コーベット氏は、サプライ チェーンを詳細に調べ、脆弱(ぜいじゃく)な部分を発見して問題点を 修正するきっかけになったと話した。

自動車調査会社、フォーインの福田将宏アナリストは、トヨタが標 準化部品を数百万個もの大量のオーダーで発注するようなやり方は「こ れまでにあまりなく、非常に珍しい」と述べ、TNGAはトヨタがこれ までに取り組んできた改革に比べても踏み込んだ内容だと指摘。 TNGAの取り組みで成果を上げることは今後、世界各地の市場でトヨ タが価格や品質の面で競争力を維持するのに必要だとも述べた。

欧米部品メーカー

こうした変化に合せて、日本事業に従来以上に力を入れる欧米の大 手部品メーカーは、ジョンソン・コントロールズにとどまらない。独 BASFは2月、バッテリー材料の研究施設を兵庫県尼崎市に建設する と発表。投資額は数百万ユーロで年内にも稼働開始予定という。

自動車部品世界3位、独コンティネンタル・オートモーティブ日本 法人のクリストフ・ハゲドーン社長は都内のインタビューで、世界規模 で生産設備を持ち均等な品質の製品を顧客要求に応じ供給できる同社に とって部品共通化は「非常に好ましいトレンドだ」と指摘。その上で、 全売上高に占めるアジアの自動車メーカー向け販売比率を現在の18%か ら15年までに30%まで伸ばしたいとの目標を明らかにした。そのうち 「大きな割合」を日本メーカーが占めることになるだろうとし、日本の 人員を現状の900人程度から100人程度増強していく予定という。

自動車部品世界最大手の独ロバート・ボッシュ広報担当のメリタ・ デリク氏は電子メールでの取材に、高品質なモジュール部品を世界規模 で供給できるボッシュにとって、TNGAが「ビジネスによい影響をも たらすことを確信している」とコメントした。

国内業界で再編も

昨年の売上高が164億ドルだった自動車用システムメーカー、 TRWオートモーティブ広報担当のライネット・ジャクソン氏は、日本 メーカーの部品共通化の動きは「成長のチャンス」と認識していると し、日本拠点でのエンジニアの陣容強化を検討中だと述べた。同社は VWや米ゼネラルモーターズ(GM)、フォード・モーターなど世界の トップメーカーに共通化部品を納入してきた実績がある。

クレディ・スイスの秋田氏は、部品共通化が進むと、同じ商品を世 界規模で供給できる能力を持つ海外のメガサプライヤーに有利になると 指摘した。ローランド・ベルガーの長島氏は、トヨタの国内の2次、3 次下請け部品メーカーは欧州と比べ小規模の業者が多く、海外勢と対抗 するにはプレーヤーを集約する必要があると述べ、今後2-3年の間に 自動車部品業界でいくつかのM&A(企業の合併・買収)が実施される だろうと話した。

デンソー広報担当の横山定義氏は電話取材に、TNGAの導入が進 むと部品の種類の削減からコスト低減や生産性向上につながり、長期的 にみれば「競争力を高める機会になる」と積極的に取り組みを推進した いとコメントした。

日本の強み

東京大学大学院経済学研究科の藤本隆宏教授は、科学的なアプロー チで自動車開発を行うVWは、より大きなモジュールを用いた設計のシ ンプル化に長けているのに対し、トヨタなど日本勢は、部品メーカーと 共同で最適設計した部品を多く用いた「擦り合わせ型」の複雑な製品の 開発に強みがあると話す。

藤本氏によると、自動車業界で設計の簡素化が重視されるようにな った背景には、急成長している新興国で安価な車が求められていること がある。そうした国でも長期的には複雑な設計を用いた高性能な車の需 要が相対的に高まるはずで、日本メーカーがその強みを自ら捨て去るの は得策ではないと指摘。組織としての持ち味が異なるVWのやり方に追 随するのではなく 、「日本のサプライチェーンシステムの強みを生か す方向を追求すべきだ」と述べた。

調査会社IHSオートモーティブの安宅広史アナリストは、部品共 通化が進むと同じ部品を使う車両が増え、トヨタが数年前に経験したよ うな大規模リコールの発生リスクも高まると指摘している。

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