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書評:元トレーダーが描くウォール街とヘッジファンドの関係

今は姿を消したヘッジファンド会 社、ガリオン・グループの若手トレーダーだったターニー・ダフ氏は当 時、証券会社のセールス担当者が自分に送ってくる熱い視線に驚いた。

同氏はやがて、売買仲介手数料を稼ぎたいウォール街の人々は、投 資家が株価指数先物を買うように人間を先物買いするのだと理解した。

「まだ、トレーディングデスクの責任者とかガリオンの売買注文を コントロールする立場にはないかもしれないが、キャリアの浅い若手の うちに私との関係を築いておくことが、証券会社の利益になるのだ」 と、ダフ氏は書いている。同氏の回顧録「The Buy Side(バイサイド= 買い手側)」は読者をのめり込ませる快作だ。「今日、面倒を見てくれ た相手のことは、この先忘れない」という関係が築かれたのだという。

同氏は確かに、よく面倒を見てもらった。毎晩の接待、費用全部相 手持ちのマイアミやラスベガスへの物見遊山旅行、スーパーボウルのチ ケットと、至れり尽くせりだ。さらに、取引相手のブローカーたちがコ カインまで供給してくれる。

同氏が「ホワイトハウス」と呼んでよく訪れたイーストサイドのあ るアパートは実は、ウォール街のいわばアヘン窟なのだった。

「彼らは顧客全員に喜んでもらおうとする。今夜は親切にも、中国 人とメキシコ人の女性の『宅配』を頼んでくれた」とダフ氏はウォール 街の歓待ぶりを描く。

308ページのこの回顧録は、連邦検察当局が力を入れて摘発してき た業界の慣行を白日の下にさらす時宜を得た読み物だ。

専攻はジャーナリズム

オハイオ大学でジャーナリズムを専攻したダフ氏は、新聞社や雑誌 社に就職できず、金融の世界に入ることにする。「ゴールドマン・サッ クスというのが何なのかも知らなかった。高級デパートみたいな名前だ と思った」という全くの門外漢だった同氏は、親戚の紹介でモルガン・ スタンレーの富裕層ウェルスマネジメント部門に職を得る。

証券アナリストになる気はなかったが、バーで先輩の男性トレーダ ーを若く可愛い女性アシスタントに紹介したり士気高揚のための社員パ ーティーを計画したりするのが得意だった。

1999年にガリオンに移り、同社と創業者を破滅させた悪質な慣行に 手を染めていく。ダフ氏の仕事の一部は、損をする取引も含めてさまざ まな売買注文を証券会社に出して手数料を稼がせ、その代わりにおいし い新規株式公開(IPO)で株を手に入れたりアナリストの投資判断引 き上げについて早めに情報を得られるようにすることだった。

2年ほどをガリオンで過ごした後、アーガス・パートナーズに移る が、そこでもブローカーとの付き合いを利用して株価を操作し、年末の 自身の運用成績を底上げしたことを、同氏は隠さない。

さて、接待漬けとコカインのパーティー生活はダフ氏のキャリアに 最良の影響を与えたとは言えなかった。結局、結婚生活もキャリアもぼ ろぼろになり金銭面でも苦境に立たされた同氏は金融業界を去り、もと もと望んでいた仕事に就く。著述業だ。「The Buy Side」の出来栄えを 見ると、これは正しい選択だったようだ。(フィリップ・ボロフ)

(フィリップ・ボロフ氏はブルームバーグの芸術担当記者です。こ の記事の内容は同氏自身の見解です)

原題:Ex-Galleon Trader Snorted Coke, Liked ‘Cougar’ Whitney: Books(抜粋)

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