年初来の上昇率で主要国のトップを 走る日本株相場。その中でも、パフォーマンスの先頭集団を形成するの はバイオや医療・医薬関連の新興企業群だ。6月にも発表される安倍晋 三政権の成長戦略を見越し、夢を買う投資マネーが流れ込んでいる。

昨年末を起点に東京証券取引所1・2部とマザーズ市場、大阪証券 取引所ジャスダック市場の17日までの株価上昇率ランキングを見ると、 上位10社中、5社がバイオ・医薬関連だ。三重大学発の創薬ベンチャー で、緑内障治療薬を手掛けるデ・ウエスタン・セラピテクス研究所が16 倍となり2位。微細藻のミドリムシから食品を生産、ジェット燃料の研 究開発も行うユーグレナが10倍で5位と続く。

安倍政権は、金融緩和と財政出動に続く「第3の矢」として成長戦 略を掲げ、その重点項目の1つに医療分野を掲げる方針。安倍首相は4 月の講演で、最先端の医療技術開発のため、米国に倣う日本版国立衛生 研究所(NIH)を創設し、難病研究を加速させる考えを表明した。人 工多能性幹細胞(iPS細胞)の実用化も急ぎ、再生医療製品などの早 期実用化のための薬事法改正案を今国会に提出する。厚生労働省・医薬 食品局の衣笠秀一課長補佐によると、同改正案は6月26日までの「今通 常国会に提出できるよう作業を進めている」という。

アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之最 高投資責任者は、バイオ・医薬関連株の急騰について「日銀の量的・質 的緩和が長期化するとの思惑を背景に、過剰流動性が投機的な色彩の濃 い銘柄に資金を向かいやすくさせ、夢のあるバイオ関連株が買われてき た」と見ている。また、「政府の成長戦略で、ヘルスケアリフォームが 掲げられていることも買いを集める一因」とも話した。

再生医療市場、30年に現状比62倍へ

東証1部全体の値動きを示すTOPIXは4月に12.6%高と、上昇 率は1999年3月(13.1%)以来の大きさを記録。16日時点までの年初来 騰落率は45%高と、世界の主要94指数の中でベネズエラ、ガーナに次い で3位、主要20カ国・地域(G20)ではトップを走る。

経済産業省が2月に公表した「再生医療の実用化・産業化に関する 研究会」最終報告によると、iPS細胞などを使った再生医療の国内の 市場規模は、2012年の260億円から20年には7.3倍の1900億円、30年に は62倍の1兆6000億円まで膨らむとの試算だ

年初来の株価上昇率で9倍と6位に入る再生医療ベンチャー、ジャ パン・ティッシュ・エンジニアリング経営管理部の三浦麻由美氏は、自 社の株価急騰について「確実に事業が進展しているところが、投資家か ら評価されているのではないか」と受け止める。同氏によれば、自家培 養製品で国内で厚労省から承認され、保険適用まで得たのは、同社の自 家培養表皮と自家培養軟骨の2つのみ。直近では、株価水準の高さから 株式分割を検討してほしいなどとする問い合わせが個人投資家から増え ている、と三浦氏は言う。

創薬で成果も、微細藻を航空燃料に

いちよし経済研究所の山崎清一首席研究員は、成長戦略の柱とされ た点がバイオ株急騰の根底にある上、「創薬ベンチャーがしっかり成果 を出し始めていることも大きい」と見ている。上昇率2位だったデ・ウ エスタンは09年の上場以来、新規の提携はなかったが、3月にわかもと 製薬とのライセンス契約締結を発表。「それまで大きな実績がなかった こともあり、損益の改善に影響する提携実現は株高要因になりやすい」 と、山崎氏は指摘した。

会社設立から7年で昨年12月にマザーズ市場に新規株式公開 (IPO)し、年初来上昇率で5位に食い込んだユーグレナ。同社も東 京大学発のバイオベンチャーで、日本航空、全日本空輸の国内航空大手 2社が年間で使う9000億円分の燃料について、その1割を微細藻類のミ ドリムシ由来のバイオ燃料で供給することを目指している。

元銀行マンの出雲充社長は、4月に行われたブルームバーグ・ニュ ースとの単独インタビューで、現在でも東京羽田―大阪伊丹空港を1往 復する程度のミドリムシ培養能力はあるが、「巨大な量を天候に左右さ れず、安定的に供給できる技術を、2018年までに確立することを目標に 設定している」と述べた。

安倍政権は、エネルギー政策も成長戦略の重点項目に採用予定で、 3月の政府の総合科学技術会議に提出された資料「クリーンで経済的な エネルギーの実現のために」では、微細藻類を利用した燃料開発を重要 プロジェクトに挙げている。

赤字企業への投資

もっとも、アリアンツの寺尾氏は、バイオ関連株は「具体的に収益 に落とし込み、判断した上で買われてきたわけではない」とも指摘す る。デ・ウエスタンの場合、13年12月期の最終損失は2億300万円(前 の期は2億5600万円)と計画。株価上昇率トップ10に入るバイオ関連5 社中、4社の前期業績は赤字だ。黒字はユーグレナ1社。

ブルームバーグ・データによると、向こう12カ月の予想1株利益を 基準にしたPER(黒字企業)はTOPIXで17倍。新興市場ほど高 く、ジャスダック21倍、マザーズ41倍で、個別に至っては黒字体質のユ ーグレナで338倍と、論理的説明のしづらいバリュエーションにある。

ただ、エース経済研究所の池野智彦シニアアナリストは、バイオ関 連株は「PERを基準にすると見誤る」とし、パイプラインや開発品目 の進捗(しんちょく)から「有望な銘柄も多い」と指摘。年初来急騰の 過熱感で「しばらく乱高下するだろう」としつつも、世界最大のバイオ 医薬品企業のアムジェンなど米国バイオ関連株との比較で、「長期的に 投資するタイミングとして良い」と言う。慢性閉塞性肺疾患 (COPD)治療薬のそーせいグループ、再生医療のジャパン・ティッ シュなどが投資先として有望とした。

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