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マツダ:円安で株価3倍、新型車の成否が復活の試金石に

1年ほど前に増資を実施し、経営立 て直しを図ってきたマツダは円安の追い風もあり、前期(2013年3月 期)は5期ぶりに黒字転換したもようで株価も大幅に回復している。今 期から来期にかけて商品力向上とコスト低減を可能にする新技術を主要 車種に搭載した新モデルが相次いで投入される見通しで、その販売動向 が復活を占う試金石となりそうだ。

国内生産比率が約70%と業界内でも高く、そのうち約8割を輸出す る同社にとって業績低迷の主因が円高だった。昨年3月の増資後も円高 はさらに進行、マツダ株は同7月に85円まで下落し、リーマンショック のあった08年以降では最安値となった。昨秋以降は円安進行で上昇に転 じ、今年2月初旬には334円をつけた。4月1日終値でも269円と、安値 からは約3倍の水準となっている。

一方、マツダは増資後に本社や工場敷地内の一部土地を139億円で 売却。同7月には連結子会社のトーヨーエイテック株の一部を210億円 で売却するなど資産の処分を進めてきた。前期の予想利益にはこれらの 売却益が一部含まれる一方、世界販売は125万台の計画と、前の期 比0.3%増にとどまり、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど国内の 同業他社との比較では見劣りしている。

自動車調査会社、IHSオートモーティブによると、マツダは14年 にスポーツコンパクト車のアクセラ、15年には小型車のデミオと同社で 販売台数上位2車種の新モデルを投入する見通し。このほど日米欧など 世界各地で販売を開始したセダン「アテンザ」を含めて世界販売台数の 7割近くを占める主力3車種の販売動向は復活のカギを握ると一部のア ナリストはみている。

自動車調査会社、インテリジェンス・オートモーティブ・アジアの マネジングディレクター、アシュビン・チョータイ氏(ロンドン在勤) は、マツダで一番販売台数が多いアクセラの次期モデルについて「非常 に重要だ」と指摘する。顧客の自動車に対する要求が年々厳しくなり、 業界内での競争が激化している中、自動車メーカーとして規模が小さい マツダにとっては「ミスが許されない戦いだ」と述べた。

世界で5人のファンに託す復活

マツダは高効率エンジンやプラットフォーム軽量化などの組み合わ せを通じて高性能低燃費と開発コスト低減を同時に実現する独自技術「 スカイアクティブ」で反転攻勢を狙っている。昨年発売したSUVで初 のスカイアクティブフル搭載車「CX-5」は「日本カー・オブ・ザ・ イヤー」を受賞。フラッグシップ(旗艦)車と位置づけられるアテンザ も昨年末から年明けにかけて日米欧をはじめ世界各国で発売を開始。事 前マーケティングの調査対象を全世界の5人に絞るという大胆な手法を 採用し、立ち上がりの販売は好調だ。

「マツダの強みは何か、名車ぞろいの競合といかに差別化を図るか を徹底的に考えた」。アテンザの開発を指揮した梶山浩商品本部主査は そう話す。出した答えが不特定多数のユーザーの意見ではなく、マツダ 車を愛好し、その本質を理解すると考えられるごく少数の熱心なファン の声に耳を傾けることだった。

5人だけでも強い共感を得る

日本、米国、ドイツ、豪州、中国の5カ国から1人ずつ選び、彼ら の嗜好や生活様式を詳しく調査。その結果、彼らがマツダ車に求める要 素は「内外装のデザイン」、「走り」に集約されることを突き止め、そ こを磨き上げることに決めた。「マツダはたかだか数%のシェアしかな い会社。みんなに何となく好かれるより、100人のうち5人だけでもい いので強い共感を得ることにすべてをかけた」と梶山氏は話す。

具体的にはキャビン(車内スペース)の位置を後方に寄せる大胆な デザインを採用し、アクセルペダルの踏み込みの勢いに合わせて走行を 微妙に制御した。マツダ伝統の「人馬一体」という言葉に象徴される、 車を思いのままに操れる感覚を強化。走る楽しさを味わえるつくり込み を徹底する一方、燃費もJC08モードで15.6~22.4キロメートル/リッ トルで、2.0Lエンジン車の旧モデル比では約3割改善した。

カムリ、アコードと真っ向勝負

国内では発売1カ月で月販計画の7カ月分超にあたる約7300台を受 注。梶山氏によると、3月上旬のインタビュー時点では海外での販売も 「多くの国で当初の予想の2倍から3倍」と好調な立ち上がりだったと いう。

IHSオートモーティブの濱田理美アナリストは、アテンザでマツ ダが採用したマーケティングの調査対象を世界で5人という少人数に絞 る手法は「非常に珍しい」と指摘。差別化への思いの表れである一方、 リスクもあると述べた。車自体の評価については「米国や中国で受け入 れられるようなデザインに仕上がっている。ディーゼルエンジンの採用 で非常に高い燃費となり、競争力を維持できると思う」と話した。

アテンザの主戦場の一つ、米国中型セダン市場は、首位のトヨタ・ カムリやホンダ・アコードなど各メーカーを代表する人気車種がしのぎ を削る激戦区。最近はフォルクスワーゲンや現代自動車など欧州や韓国 メーカーも勢力を伸ばしている。梶山氏はここでのシェアを2%台に伸 ばしたいとの目標を明らかにした。また、世界最大市場の中国へ今年後 半にも投入し、将来的には現地生産も視野に入れているという。

ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太アナリストは電話取材に、 アテンザが「米国のような競争が厳しい市場でいい数字を残せれば、株 価がさらに上がっていく可能性についても考える必要が出てくるかもし れない」とコメントした。

フルスカイアクティブ搭載車

マツダの資料によると、フルスカイアクティブ搭載車を16年3月期 までにCX-5などを含めて新たに8車種投入し、この搭載車の販売比 率を前期の30%から80%に拡大する計画。IHSの濱田氏によると、ア クセラやデミオの新モデルでもこの技術を搭載するとみられ、世界販売 台数は「世界経済が回復する過程で北米と欧州販売が成長し、中期計画 で掲げる15年度までの170万台に近い数字を達成できる」との予測を述 べた。

広報担当の町野崇夫氏によると、フルスカイアクティブ導入で車両 の生産コストは20-30%改善を目指す。CX-5では1ドル=77円、1 ユーロ=100円でも利益を創出でき、山口県防府工場で生産するアテン ザでも期待通りのコスト改善効果を上げているという。

JPモルガン証券の高橋耕平アナリストは、2月26日付のリポート で「モデルサイクルの急激な改善とスカイアクティブ、特にディーゼル による付加価値アップで14年度も大幅な業績拡大が可能とみている」と コメントしていた。

ブルームバーグ・データが集計したアナリストのマツダの今期純利 益予想平均値は738億円、営業利益が1210億円、売上高は2.4兆円。

リコール

一方、マツダが描く復活へのシナリオが思惑通りに実現するか懸念 も残っている。米自動車調査会社、オートデータによると、12年の米国 でのアテンザのセグメントシェアは前年比0.3ポイント減の0.9%。モデ ルサイクル末期とはいえ、カムリに販売台数で10倍以上水をあけられ、 全体でも前年横ばいの14位と低迷した。

IHSの濱田氏は、08年発売の旧モデルのシェアは最高でも1.5% 強にしかならなかったとして、新型でのシェア2%到達はかなり厳しい 目標かもしれないと述べた。

一方、マツダは3月26日、新型アテンザのリコールを発表。広報担 当の町野氏によると、輸出分を含めて36カ国で計約1万5630台が対象。 減速時のエネルギーを回収し再利用するマツダ独自のシステム「アイ・ イーループ」関連部品で、電子基板のコンデンサに亀裂が入っているも のがあり、コンデンサがショートする可能性があり、最悪の場合は火災 に至るおそれがあるという。

町野氏は販売への影響についてデータがないため、現時点では分か らないと述べた。このシステム搭載車の生産を停止しているが、4月中 にも再開させたいと述べた。米国では搭載車がもともと販売されていな かったため、リコールの対象国には入っていないと述べた。

続く円高の脅威

また、為替動向も引き続きリスク要因となる。欧州での販売比率が 約15%と国内自動車メーカーの中でも高いマツダの株価はユーロ相場に も影響されやすい。為替リスク緩和のため、14年稼働予定のメキシコ工 場など、16年3月期までに海外生産比率を50%まで高めることを計画し ている。2日午前の外国為替市場では、円が対ドルで一時92円台に上昇 するなど約1カ月ぶりの円高水準となった。

ゴールドマンの湯沢氏は「長期的には生産の現地化を進めることは 必要で、方向性としては正しい」と評価した上で、海外生産比率が高ま っても、マツダの株価と為替相場の相関関係がすぐに弱まるかどうかは 現時点では不明で、マツダ株への投資は当面、為替相場への投資と考え たほうがいいと話した。

みずほ投信投資顧問の青木隆シニアファンドマネジャーは今期のマ ツダについて大幅な増益を見込んでいると指摘。会社側の予想は保守的 なものになったとしても、四半期ごとにコンセンサスが切り上がるよう な形になろうと話した。

一方、マツダの弱点は「為替に対してはいまだに脆弱」なところだ という。再び1ドル=80円台に戻るような事態になることは「十分考え られる」と話し、そうなればマツダにとってリスクになると話した。

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