【クレジット市場】AKBより安倍首相、個人投資家が国債離れ

個人投資家にもっと日本国債を保有 してもらいたい-。財務省の期待に安倍晋三首相が水を差している。イ ンフレを引き起こそうとする首相の政策は債券から株への資金移動を促 すからだ。

日本銀行のデータによると、日本の家計による債券の保有高は昨 年12月時点で32兆円と、1年前から9.3%減った。一方で株式保有 は12%増えた。国債保有の内訳を見ると家計は2.5%にとどまる一方、 金融機関は65%だった。

国債保有者が金融業界に集中している状況は、市況が悪化した時に 急激な一斉売りが起きるリスクにつながると、BNPパリバは指摘す る。しかし金融緩和で5年債の表面利率が0.06%まで落ち込む中で、主 婦が多いことから「ミセス・ワタナベ」のニックネームで呼ばれる日本 の個人投資家の国債離れが進んでいる。これに対して米5年国債の表面 利率は0.75%。

BNPパリバ証券の伊藤篤チーフ円債ストラテジストは「保有者の 多様性を日本の債券市場で増加させる必要がある」として、「保有者の 比率が偏っているだけに、銀行セクターがマーケットに対する見方を変 えただけで市場でパニックを巻き起こしてしまう可能性がある」と警告 する。

財務省は昨年、日本の家計資産を国債に振り向けさせようと、人気 アイドルグループのAKB48や横綱・白鳳を広告キャンペーンに起用し た。

ミセス・ワタナベを株へ誘導

しかし結果は芳しくなく、財務省のデータによれば2013年3月期の 個人向け国債販売高は2兆円と、前年度の2兆9300億円から減少する見 込み。財務省は今月、2年債の募集を中止。1日の声明で「金利低下等 のため」と説明した。

ミセス・ワタナベたちを国債から株へと誘導しているのは、安倍首 相が「無制限の」金融緩和で2%のインフレ実現を目指すと公言して以 来の株式相場上昇だ。TOPIXは安倍氏が経済政策方針を明らかにし た昨年11月半ば以降、40%超上昇した。同氏は翌月に首相に選出され た。

株価上昇を追い風に日本の家計資産は12年10-12月に3.1%増 え、1547兆円に達した。今週公表された日銀の資金循環統計によれば、 昨年10-12月の家計資産の増加率は07年以来で最大だった。

BNPの伊藤氏は日銀が低金利維持と緩和拡大を約束し株価が着実 に上昇している中で、個人投資家が債券より高いリターンを求めようと するのは自然な成り行きだと指摘した。

メルトダウンの防波堤

日本国債の大半を国内投資家が保有している状況は、債務膨張にも かかわらず市場のメルトダウンを防ぐ歯止めになっている。財務省は日 本の債務が14年3月までに1107兆円という前例のない規模に膨らむと見 積もっている。日銀のデータによれば、海外投資家の日本国債保有比率 は昨年末に8.8%だった。

クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは「多様 性を増やすことは大事だが喫緊の課題ということではない。日本は国内 で債券を消化する余力がまだある」と指摘。「今後の超低金利継続の見 通しを考えると、財務省はおそらく家計の保有者を増やすことはあきら めなくてはならないだろう」とも語った。

原題:Mrs. Watanabe Fretting Over Inflation Spoils Sales: Japan Credit(抜粋)

--取材協力:小宮弘子、Masaki Kondo.

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