「2年は無理、5年も困難」、物価目標2%の実現-岩田元日銀副総裁

日銀元副総裁の岩田一政日本経済研 究センター理事長は、黒田東彦総裁が率いる日銀新体制について「強力 な布陣で、2%の物価目標の実現にはベストに近い組み合わせだ」と評 価した。一方、同総裁や岩田規久男副総裁が主張する2年での目標達成 は無理があり、「5年で達成するのも決して容易ではない」と述べた。

岩田氏は26日のインタビューで、次回4月3、4日の金融政策決定 会合で予想される政策として、①資産買い入れ等基金の長期国債購入と 成長通貨供給のための輪番オペの統合②日銀保有の国債残高を日銀券発 行残高以下に制限する「日銀券ルール」の撤廃③購入国債の年限の制限 撤廃④期限を定めない買い入れ方式の5月からの実施-を指摘。月々の 国債購入額は現在の約4兆円から6兆円に拡大するとの見方を示した。

先行きどれくらい緩和を続けるかのコミットメント(約束)も、従 来の「必要と判断される時点まで」から、宮尾龍蔵審議委員が提案して いる『2%が見通せるまで』に書き換える」と予想。こうした施策の決 定時期が、物価見通しなどを公表する4月26日になるとの見方に対して は、「そこまで先延ばしするのはちょっと無理だろう」としている。

黒田総裁は3月26日の衆院財務金融委員会で、2%の物価安定目標 について「2年を念頭に置いて、必ず日銀の責任において達成したい」 と言明。岩田副総裁も2年で目標の2%を達成できなかった場合、「最 高の責任の取り方は辞職」との考えをあらためて語った。

5年間なら平仄が合うが

しかし、岩田一政氏は「2年で実現するのはいろいろと無理があ る」と語る。同氏によると、2001年-06年の量的緩和政策の下で、 GDPギャップはマイナス4%からプラス1%へ5ポイント変化。その 間、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)はマイナス1.0%前 後から1.5ポイント変化した。つまり、GDPギャップが1ポイント変 化すると消費者物価は0.3ポイント変化するという関係がみられた。

同氏は「コアCPIは今は若干マイナスで、2%を達成するには GDPギャップは7ポイントの改善が必要だ。それを2年間で実現する のは極めて難しい」という。一方で、「5年間なら可能性はある。政府 は2%の実質成長率を目標にしており、5年間で平均2%の実質成長を 実現できたら、潜在成長率を0.5%だとすると、GDPギャップは7.5ポ イント変化するので、だいたい平仄が合う」と語る。

しかし、「それも決して容易ではない」と指摘。「過去20年間の実 質成長率はほぼ1%なので、その倍の成長が必要だ。小泉政権下の02年 から07年にかけて戦後最長の景気拡大期と言われたが、平均成長率 は1.8%だった。それと同じくらい長い2%成長が実現すれば可能性は ゼロではないが、消費税率の引き上げを2度にわたりやりながら、2% の実質成長を続けるのは、決して容易ではない」と語る。

市場のほか企業と家計も信じないと

もっとも、岩田氏は「岩田副総裁は戦前の高橋是清の下で金本位制 からの離脱と財政拡大と日銀の国債直接引き受けというレジーム転換が 起こり、期待が大きく変化したとして、今回もレジーム転換が必要だと 主張している」と指摘。縦軸に物価、横軸に失業率を並べた「フィリッ プスカーブの傾きと位置に変化を起こすことができれば、5年を短縮す る可能性がゼロだとは必ずしも言わない」という。

そのためには「市場が大きな体制転換があったと受け止めることが 必要だ」と指摘。「単に金融市場の参加者がそう思うだけではなく、企 業経営者や家計の消費者も体制が転換したと信じないと、フィリップス カーブのシフトは起こらない」という。

黒田総裁は26日の衆院財務金融委で、金融緩和の出口政策について 「物価がまだマイナスの中で出口うんぬんするのは時期尚早」と述べ た。これに対し岩田氏は、金融緩和の出口政策についても検討が必要 で、「イングランド銀行(BOE)のやり方が望ましい」と指摘する。

政府が損失負担する必要

具体的には「BOEも国債を大量に買っているが、始める前に財務 大臣とキング総裁が話をして2つの合意をした。1つは、政府が国債管 理政策によって、発行する国債の平均満期を変化させないことだ。満期 をどんどん長くすると、中央銀行による長期国債の買い入れの効果が薄 まってしまうためだ」と説明。

さらに、「同時に合意したのは、大量に国債を買うことに伴う収益 と損失をすべて財務省が負うことだ」と指摘。「大量の国債を買う際は 常に財政ファイナンス(穴埋め)との批判が付いてまわるが、損失負担 の合意には、透明な形で責任を明確にする役割がある。その2つの論点 を議論する必要が必ずどこかで生じるのではないか」としている。

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