誰も安泰ではない-キプロス救済劇が突き付けたメッセージ

キプロス救済合意の細部には悪魔が 潜んでいる。

債務危機の次の犠牲になるのはどの国かとの議論が投資家の間に広 がる中で、キプロス救済はユーロ圏の預金者や債券保有者の記憶に刻み 込まれる前例を作った。25日早朝に合意された救済条件の下、キプロス の銀行の優先債保有者が損失を負担し、預金保険の対象外の預金は大き く消えてしまうことになる。

今回のキプロス救済劇は、財政難の国の支援においては全ての利害 関係者に負担が強制され得るというメッセージを突き付けるものだ。ス ロベニアやイタリア、スペイン、さらには再びギリシャが次に支援を必 要とする事態になった場合、投資家は自分が標的にされると警戒を強め る恐れがある。新たに救済を申請する国が出て来た瞬間、銀行取り付け 騒ぎや債券相場の急落が発生する可能性が高まるリスクがあると、エコ ノミストや有識者らは指摘する。

キプロスの経済諮問会議議長でノーベル経済学賞受賞者のクリスト ファー・ピサリデス氏はブルームバーグテレビジョンの番組「ザ・パル ス」で、「新しいタイプのルールが導入された今、ユーロ圏の誰もが自 らの資金にどんな影響が及ぶかを見極める必要に迫られている」と指摘 した。

ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長 (オランダ財務相)はキプロスの銀行再編に使ったモデルが他国でも適 用される可能性を示唆した。25日の欧州株市場では指標のストックス欧 州600指数は一時1%高まで上昇していたが、議長発言を受けて値を消 した。ユーロは0.8%下落し、1ユーロ=1.2890ドル。

安全装置

ユーロ圏当局者はこれまで財政難の国の救済策の取りまとめで、銀 行預金者や優先債保有者にまで踏み込んで負担を求めることはなかっ た。

アイルランドの銀行システムの崩壊の一因は、同国政府が米リーマ ン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻後に行った預金者への保 証の取り消しを拒否したことだ。スペインでは銀行の優先債保有者は保 護され、バンキア・グループの劣後債や優先株の保有者とは異なる扱い だった。

キプロス救済ではこうした従来の手法が打破された。3月16日に発 表された当初の合意にはキプロスの全預金者から徴税するという衝撃的 な条件が付いたため国民の反発を招き、最終合意では10万ユーロ (約1200万円)超の預金者を対象とする内容に修正された。ユーロ圏の 銀行の優先債保有者に負担を求めた救済も今回が初めてだ。キプロス・ ポピュラー銀行のケースではそうした債券保有者が大きな損失を被る。

タブー

シティグループのG10(主要10カ国)通貨戦略責任者を務めるステ ィーブン・イングランダー氏は「キプロス危機は投資家がユーロ圏危機 の今後の行方について懸念を深める前例となった」と述べた。

欧州北部の納税者が財政難の近隣諸国の救済コストの負担を渋った ことから、危機収拾に当たる当局者はこれまでより守備範囲を広げてい る。これは残されたタブーがほとんどない可能性を示していると、ロン ドン・スクール・オブ・エコノミクスのチャールズ・グッドハート名誉 教授は指摘する。

グッドハート教授は電話インタビューで、「キプロスはユニークな ケースだと彼らは断言するだろうが、ギリシャもそうだった」と述べ、 「預金保険対象の預金に対する不可侵権を主張することはできても、そ れを誰が信じるかというのが今の問題だ」と指摘した。

ユーロ圏加盟国が初めて資本規制を実施することも、外国からの大 口銀行預金を抱えるマルタやルクセンブルク、エストニアなど国に難題 を突き付けると、ノムラ・インターナショナルのエコノミストは分析し た。

--取材協力:James G. Neuger、David Tweed、Rebecca Christie、Svenja O’Donnell、Maria Petrakis、Tom Stoukas、Georgios Georgiou、Marcus Bensasson、Paul Tugwell、Natalie Weeks、Francine Lacqua、Guy Johnson、John Glover、Liam Vaughan、Charles Penty.

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