川崎重:ブラジル新造船所は来年完成、受注すでに10隻-海外展開強化

船舶の供給過剰や国際競争力低下な どで国内造船事業が厳しい中、川崎重工業はブラジル・バイア州で新造 船所を2014年に立ち上げる。現地では、需要増が見込めるオフショア向 け海洋開発関連事業に注力し、収益確保を目指す。

川崎重工の船舶海洋カンパニープレジデント、神林伸光常務はイン タビューで、新造船所について、ブラジル石油公社(ペトロブラス)か ら現時点で6隻のドリルシップ(掘削船)建造と、「船体が一重構造の シングルハルと呼ばれる20万トンクラスのタンカーを浮体式海洋石油・ ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)に改造する仕事」で4隻、「計10隻 を受注している」と述べた。これらの受注で投資資金をほぼ回収できる 見通しという。

神林氏によると、新造船所では年間で1隻半程度、ドリルシップ6 隻を4年間程度で建造する計画。タンカーやFPSOなど海洋ものの建 造に引き続き長期的に取り組む方針だ。神林氏は「16年7月が最初のド リルシップの納期。これまでブラジル製の船で納期通りにできたことは 過去にないと聞いており、達成できれば快挙となりそうだ」という。

また、神林氏は、ドリルシップの6隻目は19年末に引き渡しの計画 だが、その間にペトロブラスからの次の発注を受けることも、「ある程 度まで事業計画には織り込んでいる」と付け加えた。

新造船所計画について、神林氏は「始まったばかりで投資総額は確 定していないが、完成する14年には約1000億円と言われている」と述 べ、「そのうち30%がわれわれの負担、約300億円となるだろう」と語 った。資本金114億円については、30%に相当する約40億円を投下済 み。川崎重工は昨年5月、ブラジルでドリルシップ建造などの合弁事業 へ参画すると発表した。

高い専門技術と海外拠点

ブラジルでは近年、深海油田が相次いで見つかっており、掘削用の 高性能ドリルシップやFPSOなど船舶関連の需要が高まっている。神 林氏は「資源を使って産業振興やインフラ整備を進めたいルセフ大統領 による国家的プロジェクトの一環でもあり、是非とも早期に軌道に乗せ たい」と強調した。

ブラジル海洋開発ではすでに日本企業も動き出している。川崎重工 やIHI、三菱重工業、アイ・エイチ・アイ・マリンユナイテッド、三 井造船の大手造船5社などが日本連合を形成し、海洋施設の大型プロジ ェクト事業化に乗り出している。第1弾としてブラジル沖の海洋油田・ ガス開発向けに浮体輸送施設の受注を目指す。国土交通省は、この技術 研究組合の設立を2月に認可済み。

川崎重工の船舶海洋事業では、海外展開として、まず中国2カ所で それぞれ合弁事業を展開。中国の事業が軌道に乗ったことを受け、高い 経済成長が期待できるブラジルを海外第2の拠点と狙いを定め、造船の 高い専門技術を武器に、現地で収益確保を目指している。

かつて竣工量で世界最大だった日本の造船業界だが、円高、コスト 競争力の低下などで、韓国や中国に追い抜かれ、現在は3位。また、船 舶過剰や船価下落で、国内造船会社は厳しい状況にある。

100人規模で派遣も視野

神林氏は「これまで日本は何度も造船不況に見舞われてきたが今回 の不況が一番厳しい」という。また、現在は1ドル=95円前後と、昨秋 から円安が進行しているものの、「まだまだ足りない」と述べ、「1ド ル=110円が望ましい」と述べた。

神林氏は、ブラジルでは現地調達を当初は50%にする取り決めで、 徐々に引き上げていくという。そのため、現地での製造が鍵になると し、まず現地で人材育成に注力する方針だ。

この新造船所の完成に先立ち、川崎重工はまず坂出工場にブラジル 人のエンジニアと作業員を招き、製造訓練のための準備を進めていると いう。また、新造船所の完成後は、日本から100人程度の熟練工を指 導、支援のため派遣する計画だ。日本人の熟練工の派遣は神戸と坂出の 造船所からそれぞれ集めるが、詳細は現在検討中と語った。

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