日本株ヘッジファンド回復の兆し、安倍政権下の最高益で海外資金

2006年以降縮小し続けてきた日本を 投資対象とするヘッジファンドの資産規模に回復の兆しが見えている。 大胆な金融緩和などでデフレ脱却にかける安倍政権の発足で株高が進ん だことから、2月までの3カ月間の運用益は過去最高を記録。外国人投 資家からの投資や照会が目立ち始めた。

ヘッジファンドのシンフォニー・ファイナンシャル・パートナーズ のデビッド・バラン代表取締役によると、日本株に投資するファンドに 昨年末、海外投資家から入金があり、今ではここ数年で最も多く問い合 わせが来ている。この2、3年は「激安の日本株に投資する機会だ」と 投資家に説明しても、なしのつぶてだったのに状況は一変したという。

ゴーディアン・キャピタルのベルトラン・ド・ミル氏らが運用する ファンドは2月末、運用開始以来初の追加入金30万ドルがあった。ま た、ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン(UMJ)の小柴正浩社 長が運用する日本株ファンドには、今年に入って1300万ドルの資金が流 入した。

こうした動きの背景には、運用面の回復傾向が顕著だという事実が ある。ヘッジファンドのパフォーマンスを示すユーリカヘッジ日本指数 は、安倍政権が発足した昨年12月が3.8%、今年1月は4.6%と09年5月 以来の水準を達成した。積極緩和論者である黒田東彦氏の日銀総裁人事 案が報道された2月の暫定値は2.3%。

この結果、3カ月間で11.3%と過去最高益となった。金融緩和強化 の思惑から円安が進み、日経平均株価が昨年11月半ば以降、米国や欧州 を上回る45%も上昇したことが大きく、バークレイズ証券の山川哲史調 査部長は、株の上昇ピッチが早く、海外投資家のポジションは「まだ十 分に円ショート、日本株ロングへと傾斜していない」ため、投資余地が 残っていると話す。

日本に投資しないリスク

日本に着目したヘッジファンドの運用規模は、今年に入ってからは 昨年末比で5000万ドル減にとどまり、ユーリカヘッジのアナリスト、フ ァルハン・マムタズ氏は「運用資産規模の減少は下げ止まりつつある」 とみる。金融危機以降、投資家はファンドの精査に時間をかけているた め、市場が回復しても、ヘッジファンドに資金流入するまで時間差があ るという。

ユーリカヘッジによると、06年4月のピーク時は390億ドルあった 運用資産は、06年のライブドアショックに始まり、サブプライム問題や 欧州債務問題と逆風が吹き荒れた結果、昨年末は143億ドル(約1.4兆 円)と、4割以下に落ち込んでいた。

シンフォニーのバラン氏は、円高から円安への転換を目の当たりに した欧米の投資家は「日本に投資していないリスクを認識している」と の見方を示す。日本株ファンドは12年に44%の収益をあげ、運用規模は 2億ドルに達している。

ファンドオブヘッジファンズのSRFグループの山崎季一氏は、ヘ ッジファンドの運用収益拡大の背景について、株価の上昇に加えて、売 買代金の倍増や個人投資家など市場参加者の増加を挙げ、「収益機会が 増えていることが大きく寄与している」と話す。日本関連ヘッジファン ドへの需要は着実に増えており、今後もしばらく増え続けるという。

注目度ナンバー1

ゴーディアンのド・ミル氏のファンドは同年の運用収益 が11.27%、2月末の運用資産は1530万ドル。UMJの小柴氏のファン ドは同18.48%、現在の運用規模は4100万ドル。

スタッツインベストメントマネジメントの大木昌光シニア・ファン ド・マネージャーによると、2月18-20日に香港で面談した15件の投資 家のうち3社が投資に向けて精査を始めたもよう。昨年半ばまでは運用 収益を10%以上出していても、日本株と聞いただけで投資家は興味を失 うと言われていたが、現在は「注目度の上昇率は一番」と話す。同氏が 運用するファンドは昨年の運用収益が23%、運用額は2月に10億円加わ り21億円。

ゴーディアンのド・ミル氏は1月第2週に香港で日本株投資で顧客 と面談。当初は1日2、3件を想定していたが、多い日には1日8件を こなした。同氏は、国民から変化を期待された新政権、デフレ脱却と経 済成長に的を絞った経済政策、海外投資家の投資が進んでいない割安な 株式市場と「最高の状況」が揃っていると指摘する。

UMJの小柴社長が運用するファンドは、ここ3カ月で香港、シン ガポール、スイス、日本の投資家から資金を集めた。同氏はマクロ経済 に基づいて世界的に資産配分している海外投資家にとって、「アベノミ クスは日本に興味を持つ後押しにはなった面はある」とみる。

もっとも、株高の持続には懐疑的な見方もある。バークレイズ証券 の森田京平チーフエコノミストは、参院選前後でアベノミクスの「3本 の矢」の優先順位が金融政策から成長戦略に入れ替わらなければ、「市 場がアベノミクスと付き合う時間が短くなる」とし、安倍政権が見放さ れる恐れがあると指摘している。

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