【コラム】PM2.5が中国の主要な輸出品になる日-Wペセック

最近、東京の空港で離陸を待ってい た時のことだ。機長がフライトに遅れが出るとアナウンスしたのだが、 その理由がにわかには信じられないものだった。砂嵐だというのだ。

この砂は中国の経済ブームの贈り物だ。森林伐採や過放牧のために ゴビ砂漠の砂の粒子が産業汚染とともに季節風に乗って日本に流れ込 む。このところ日本人は「PM2.5」という単語をずっとネット検索し ている。大気中に浮遊するごく小さな粒子で、疾病や早死にを引き起こ すといわれる。中国の環境危機が日本の危機となり、空気清浄器を購入 する日本人が増えている。

アジアの領土問題をめぐる論争が和平と協力への障壁となっている ことを考えれば、こうした公害の地政学は有毒なものに変質する恐れが ある。 調査会社IHSの北京在勤エコノミスト、アリステア・ソーン トン氏は「アジアでは今、良好な関係を維持することはほとんど不可能 だ。大気汚染をばらまいても気にも留めない」と話す。

アジアでは既に多くの環境をめぐる論争が起きている。私は「中国 環境リポート」の著者、エリザベス・エコノミー氏に連絡を取って中国 が抱える環境論争を調べてみた。カザフスタン、インドなどメコン川下 流の国々との水をめぐる論争、不法伐採をめぐるインドネシアとの紛 争、ベトナムとミャンマーにおける中国企業の社会的責任の欠如。日本 への大気汚染の輸出がこれに加わったわけだ。

ビッグバン

公害問題は中国共産党にとって明らかな脅威だ。1月の北京の空は 史上最悪のスモッグに覆われた。

中国は既に河川や水供給の汚染度で世界でも最悪の部類に入ってい る。世界銀行によると、河川や水供給の汚染のひどい20都市の中に中国 の都市が16含まれている。上海市の当局者が黄浦江から1万3000匹余り の豚の死骸を引き揚げる映像は、中国のイメージダウンをもたらした。 中国国民13億人が裕福になるにつれ、オートバイや自動車、エアコンを 買い求め、空の旅を楽しむ。ドイツ銀行によると、排気ガスが増え石炭 への需要が高まることで中国の大気は2030年までに70%悪化する可能性 がある。

中国が直ちに行動を起こし、太陽光発電や風力発電で公害が改善す るという思い込みを捨てれば、環境に優しい国になることもできる。ド イツ銀行の中国担当チーフエコノミスト、馬駿氏は中国政府は石炭利用 と自動車需要を減らし、クリーンエネルギーと地下鉄、鉄道への投資を 大幅に増やすなどの「ビッグバン対策」が必要だと指摘している。

問題は政治的意思だ。3兆3000億ドルもの外貨準備高を抱える中国 には、環境問題をうまく解決するための資金はある。ただし、環境立国 への道はいかなるルートであれ成長鈍化が伴う。次の10年の中国を担う 指導者、習近平国家主席と李克強首相国は現在の7.9%成長を押し上 げ、所得格差に対する国民の怒りを沈静化させる圧力を受けている。

グレートスモッグ

英国では1950年代に、グレートスモッグと呼ばれる大気汚染で4000 人が死亡したが、同国はその問題を解決した。中国もこの例に倣うこと ができると考える人もいる。しかし、中国は当時の英国に比べて製造業 への依存度が高い。さらに、野心的な中国の政治家は現在の構造から極 めて多額の金を得られる仕組みを構築しており、今よりもサービス業を ベースにした経済への迅速な移行は容認しない。つまり、中国の工場の 煙突から出る有害なガスは今後数年、アジアの空に漂い続ける可能性が あるということだ。

中国は肉体的限界に到達しつつあり、経済成長の飽くなき追求は恩 恵をもたらすが、それは環境悪化で妥協した結果によるものだ。 PM2.5が中国の主要な輸出品という事態になれば、その緊張は全く新 しいレベルの地政学的な頭痛の種となるだろう。

カリフォルニア州環境保護局長官を務めたテリー・タミネン氏は、 公害が現実に軍事紛争につながる可能性を提起した。私はその見方には 否定的だが、高成長よりもさらに大きな課題を中国が抱え込んだことを 意味する。(ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。この コラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:China’s Poison Air Is Becoming Its Leading Export: William Pesek(抜粋)

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