【コラム】キプロスの崩壊回避する4つの選択肢-M・グリーン

キプロスにとって先週ユーロ圏諸国 が合意した救済プログラム不愉快なものだったとしても、それを拒絶 することは最悪の選択肢と考えられていた。ところが、19日の議会採決 では与党が棄権に回った結果、賛成は一票もなく、救済条件に断固反対 する意思表示が行われた。

欧州の政策担当者は新たなプランを策定する必要に迫られている が、キプロスの金融システムのメルトダウンを防ぐために欧州中央銀行 (ECB)による十分な時間稼ぎを期待しない限り、状況は極めてまず い。

預金者が貯蓄を失う不安は高まっている。ECBは救済策をめぐる 合意がまとまらない場合、キプロスの主要銀行への緊急流動性支援 (ELA)を打ち切ると警告した。

実際にそうなれば、これらの銀行は直ちに破綻し、保有する300億 ユーロ(約3兆7200億円)の預金の大部分と債務についてデフォルト (債務不履行)状態に陥る。キプロスは取り付け騒ぎと主要銀行の破綻 に直面し、ユーロ圏からの離脱以外に自国経済と銀行セクターを救う道 はなくなるだろう。

一方、ユーロ圏内での物品と労働、資本の自由な移動という原則に もかかわらず、欧州連合(EU)の機能を定めた条約には、公共政策と 公共の安全のために正当化される場合、資本規制を容認する条項が盛り 込まれている。キプロスでは今週、バンクホリデーと資金移転の凍結と いう形で、資本規制が既に導入された。

銀行業務が再開されれば預金流出が予想されるが、取り付けが問題 にならないのは、ECBがELAを継続し、流動性の穴を埋めてくれる 場合に限られる。

時間稼ぎ

キプロスは資本規制とELAで時間を稼ぎつつ、救済資金のうち70 億ユーロを自力で賄う必要があり、それには4つの選択肢が考えられ る。

最善の手段はロシア富裕層の預金者を完全に遠ざけることを承知 で、保険で保護される預金への課税回避のために保険対象外の預金に多 額の課税を容認することだ。不可能ではないにせよ、タックスヘイブン (租税回避地)の地位を頑強に守ろうとするキプロス政府が、これを受 け入れることは考え難い。

2番目にキプロスが別の財源から70億ユーロを確保する選択肢もあ る。その場合、銀行の無担保優先債保有者に負担を強制することができ るが、2大銀行の投資家から徴収できるのは2億ユーロ弱にとどまる。 アイルランドのように年金基金に手を付けたとしても、調達額は5億ユ ーロを下回る見通しだ。天然ガスの埋蔵から得られる将来の収入の正味 現価の調整は、インフラ整備の遅れが避けられない。

最後の手段

3つ目の選択肢は、EUの欧州委員会とECB、国際通貨基金 (IMF)のトロイカにキプロスが追加資金を求めることだが、拒絶さ れる可能性が高い。70億ユーロの自力調達を断念し、必要額の170億ユ ーロの支援を丸々仰げば、キプロスの公的債務の負担は持続不可能な水 準に膨らむだろう。

最後の手段はキプロスがロシアに融資を仰ぐケース。ロシアから融 資を得れば、債務が持続不可能な水準に達するという同じ理由で、トロ イカがキプロス支援から手を引くこともあり得る。ロシアは資金提供の 見返りとして権益を要求する可能性があり、天然ガス会社ガスプロム が、ガス田の権益と引き換えに銀行の資本増強に応じるという観測も広 がっている。

EUはロシアの関与が深まることに反対しているが、当初の救済合 意のあきれるほどの不手際を考えると、ユーロ圏の政策担当者には、こ の件に口をはさむ権利がもはやないかもしれない。

第2、第3のキプロス

キプロス情勢の先行きは極めて流動的だ。たとえ小国であっても、 救済策の枠組みをどのように構築し、それに対してキプロスがどう反応 するかということが、ユーロ圏の今後の重要な先例となる。トロイカに 抵抗して救済案の内容を拒否した政府はキプロスが最初であり、投資家 を大いに仰天させたが、今後第2、第3のキプロスが現れないと言える 保証はなかろう。(ミーガン・グリーン)

(マベリック・インテリジェンスのチーフエコノミストで、ワシン トンのアトランティック・カウンシルの上級研究員も務めるミーガン・ グリーン氏は、ブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Cyprus Has Four Options to Avoid Banking Collapse: Megan Greene(抜粋)

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