ユーロ、キプロスショックで急落-リスク回避で円は全面高

東京外国為替市場では、ユーロが急 落した。ユーロ圏財務相会合が前週末に合意したキプロス救済計画で前 例のない同国の銀行預金への課税が盛り込まれたことなどを受け、欧州 債務不安の再燃が警戒された。円は、リスク回避の動きから主要通貨に 対して全面高となった。

ユーロは対ドルで前週末遅くの水準1ユーロ=1.30ドル後半か ら1.29ドル台へ大きく下げて取引を開始。その後も1.2900ドルを割り込 むなど売り優勢の展開が続き、欧州市場に向けては一時1.2882ドルと昨 年12月10日に付けた安値にあと0.0001ドルと迫った。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作シニア為替・債券 ストラテジストは、「キプロスショックは一義的にはユーロの不安材料 だし、ユーロ売り材料だ」と指摘。「イタリアショック、キプロスショ ックを経て、不況下での緊縮財政や金融支援は政治的ストレスがかかる ということの影響が、わかりやすいユーロ・ドルには厳しく残ってい る」と話した。

前週末を1ユーロ=124円半ばで引けていたユーロ・円相場は早朝 に一時121円15銭と5日以来の水準までユーロ安・円高が進行。その 後122円後半まで戻したが、ユーロの上値は重く、欧州市場に向けては 再び122円台を割り込む展開となっている。

リスク回避の動きから、ドルも主要通貨に対して上昇。ただ、ド ル・円相場は円買いが先行し、早朝に一時1ドル=93円57銭と、前週末 の95円前半から6日以来の水準まで円高に振れた。その後ドルは急速に 下げ渋ったが、95円台を回復するには至らず、午後には94円半ばまでじ り安となった。

植野氏は、キプロス情勢の今後に関して合理的な予測をするのは難 しく、市場は「あまり予断を持たずに、虚心坦懐(たんかい)に結果を みようという感じになっている」と説明。その上で、ユーロ・円につい ては、日本の金融緩和による円の先安感が強く、ドル・円が底堅さを維 持していることから、「それほど強烈に円が買われる雰囲気でもない」 と語った。

キプロス救済計画

ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は16日、銀行預金への課税 という前例のない措置を盛り込んだ100億ユーロ規模のキプロス救済計 画に合意した。ユーログループ議長を務めるダイセルブルーム蘭財務相 は会合後、記者団に対し、キプロスが支援を受ける条件として同国は10 万ユーロ未満の銀行預金に6.75%の課税、10万ユーロ以上の預金 に9.9%の課税を実施すると説明した。

キプロスは経済規模がユーロ圏17カ国全体の0.5%足らずにすぎな いが、市場関係者からは、銀行預金への強制的な課税措置を受けてユー ロ圏債務危機に新たな混乱を引き起こすリスクが指摘されている。

キプロスのアナスタシアディス大統領は預金課税について、同国の ユーロ圏離脱につながりかねない金融システム崩壊を回避するための1 回限りの措置だとして各政党に支持を呼び掛けた。課税の仕組みの変更 が検討されていると伝えられるなか、大統領は同措置に関する議会の採 決を18日まで延期した。

みずほ証券の鈴木健吾FXストラテジストは、「預金に一律課税と なれば、当然預金を引き出す動きから取り付け騒ぎになるのは見えてい る」とし、「やり方がちょっと乱暴だ」と指摘。もっとも、ギリシャな どに飛び火すれば事態の深刻化は免れず、「やり方を変えてくる可能性 もある」とし、リスクオフの動きが一巡した後は「いったん様子見にな るのではないか」と話した。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、キプロ スの今回の措置について、欧州全般の銀行債権者支援を制限する方向へ の重大な一歩だと指摘し、政策当局が国家のデフォルト(債務不履行) を避けるために金融市場を混乱させる危険を冒すことを示しているとの 見方を示した。

一方、ロイター通信は、キプロスが救済条件とされた銀行預金への 課税の変更について各国と交渉を行っている、と伝えた。事情に詳しい 関係者を引用している。

--取材協力:Mariko Ishikawa. Editors: 崎浜秀磨, 山中英典

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