安倍首相:TPP交渉参加を正式表明-「米と新しい経済圏作る」

安倍晋三首相は15日夕、官邸で記者 会見し、環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加を正式表明した。自 民党内で反対論も出ていたが、党のTPP対策委員会がコメなどの重要 品目の聖域確保などを条件に容認する決議を採択したことで、交渉参加 の環境が整った。

首相は交渉参加を決断した理由について「TPPはアジア太平洋の 未来の繁栄を約束する枠組みだ。交渉参加は国家百年の計であると信じ る」と説明。その意義について「同盟国である米国と新しい経済圏を作 る。アジア太平洋地域における新たなルールを作り上げていくことは必 ずや世界に繁栄をもたらす」と強調した。

また、日本の交渉参加が遅れたことについて「すでに合意されたル ールがあればそれをひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実。残さ れた時間は長くないからこそ一日も早く交渉に参加しなければならな い」とも指摘した。交渉では国益を踏まえた最善の道を実現する決意も 示した。

一方、内閣官房は15日、関税撤廃した場合の経済効果についての 「政府統一試算」を発表した。それによると、TPP参加による経済効 果として実質国内総生産(GDP)が3.2兆円(0.66%)増加するとし ている。輸出は2.6兆円、消費は3兆円、投資は0.5兆円それぞれプラス となり、輸入は2.9兆円のマイナスになると見通した。また、農林水産 物の生産額は3.0兆円の減少となる見込み。

民主政権

政府は民主党政権時代に菅直人、野田佳彦両首相が交渉参加を模索 したが、与党内の反発で決断できなかった。安倍首相は15日昼に公明党 の山口那津男代表と与党党首会談を実施。交渉参加表明に当たって守る べきは守り、勝ち取るべきものは勝ち取っていくとの決意を示したとい う。首相発言は山口氏が会談終了後、記者団に紹介した。

自民党内では米国などから農業分野で大幅な譲歩を迫られるとの懸 念が根強くあるが、11カ国による交渉は進んでいる。首相は14日、衛藤 征士郎衆院議員ら党のTPP対策委員会メンバーとの会合で「この機を 逃せばあとはまったく中での議論をする権利を失う。この段階で決断を しなければいけない」と述べ、理解を求めた。

野村証券の藤原悟史アナリストは「TPP参加交渉はハイレベルな 貿易自由化を目指しており、すべての農産品目を保護するのは難しいだ ろう」との見方を示した。

自由貿易

交渉参加の必要性を説いてきた自民党の川口順子元外相は8日のイ ンタビューで「交渉に参加するのは当たり前だ。日本はずっと戦後の経 済発展の中で自由貿易から大きなメリットを得てきた」と指摘。その上 で、「世界の貿易、あるいは経済の自由な流れの枠組みを作る交渉だか ら、そのための秩序作りに日本としても貢献することを期待している」 と語った。

これに対し、北海道6区選出で交渉参加に反対してきた今津寛衆院 議員は14日のインタビューで、TPP参加で日本の食料自給率が大幅に 低下するとの見通しを示した上で、「国の食料安全保障を放棄するよう な交渉にはまったく賛成できない。北海道は生産者が離農して地域その ものが崩壊する」との懸念を示していた。

自民党の対策委員会では農林水産業への影響を検討してきたグルー プが、コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、サトウキビをはじめとする甘味 資源作物などの重要品目が関税撤廃などの「除外または再協議の対象と なること」を求める文書を作成。

決議

これを受けて同委員会が13日にまとめた決議では農林水産物の重要 5品目等や国民皆保険制度などの聖域確保を優先し、「それが確保でき ないと判断した場合は、脱退も辞さない」よう政府に求めている。公明 党の山口代表も15日、コメ、麦、牛肉、豚肉、乳製品、砂糖などの品目 については「関税撤廃にならないように配慮してほしい」との考えを首 相に伝えたことを明らかにした。

自民党の川口氏は党内のTPP交渉の結果が「日本の国益に反する と判断をすれば、それは協定に参加しないという決断をする、というこ とだ。協定は国会にかかるから、その時点で国会はノーと言える」と強 調。こうした考え方に対し、今津氏は党の決議について「脱退を辞さな い、と書いているができるのか。言葉では言えるかもしれないが、こち らから『入れてくれ』と入っていって『都合悪いからやめます』という ことができるか」との見方も示す。

安倍首相とオバマ米大統領は2月下旬の首脳会談後、「TPP交渉 参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束する ことを求められるものではない」との共同声明を発表。共同通信が直後 の2月25日に報じた世論調査(23、24両日実施)によると、TPP交渉 参加に賛成は、1月調査の53・0%から10ポイント増の63・0%に上っ た。

川口氏はこうした最近の世論の動向について「半分以上はTPPに 賛成だと言っている。そこを心配しないでどうして農協のことだけ心配 になるのか」と指摘する。その上で、「必要なことは勇気を出して、チ ャレンジをしてやっていく。それを国民は評価すると思う」と述べ、交 渉参加決断を世論は支持するとの見方を示す。

--取材協力:松田潔社、 Editor: 杉本 等

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