TPP交渉参加なら牛肉の関税撤廃容認か-名大大学院教授

「聖域なき関税撤廃」が原則の環太 平洋経済連携協定(TPP)交渉に日本が参加した場合、牛肉の関税撤 廃を受け入れる可能性があるとの見方が出ている。

第1次安倍晋三内閣のもとで発足し、食料の安定供給を図るための 提言を行った「食料の未来を描く戦略会議」の座長などを務めた生源寺 眞一・名古屋大学大学院教授が12日、ブルームバーグ・ニュースとのイ ンタビューで述べた。

TPP参加に関しては農産物5品目に関税撤廃の例外が認められる かどうかが焦点になっているが、生源寺氏は「吉野家で食べるのは米国 産牛だが、すき焼きで食べるのは和牛」との例を示し、関税が撤廃され ても国内牛肉には「品質格差の強みがあり、輸入品とのすみ分けができ る」と述べた。

一方、「乳製品や砂糖、小麦にはそうした強みはない」と指摘し た。ただ「小麦に関しては農業団体の抵抗はあまりないといえる。作っ ているのは農業法人などの機械設備などがしっかりした農家で、農業構 造が比較的強い分野だ」とし、日本が譲歩しやすい品目との考えを示し た。

コメについては、食料自給率が4割しかない日本にとっては「栄養 価が高く、食糧安保政策上、大きな意味を持つ」と指摘し、関税撤廃品 目の例外扱いになる可能性が高いとの見方を示した。

日本はコメや牛肉、小麦、粗糖、乳製品などに高関税をかけて、国 内農家を保護しているが、TPP交渉で関税が撤廃されれば、安価な海 外産品が国内市場に流入する恐れがある。

全品目保護は困難

約950万人の組合員を持つ全国農業協同組合中央会(JA全中)な どは、農家の経営が困難になるとして参加に強く反対している。野村証 券の藤原悟史アナリストは、「TPP参加交渉はハイレベルな貿易自由 化を目指しており、全ての農産品目を保護するのは難しいだろう」と話 す。日本経済団体連合会など財界は、「貿易・投資の自由化推進は経済 発展に不可欠」としてTPP交渉参加を強く求めている。

TPPは2005年、ブルネイ、チリ、シンガポール、ニュージーラン ドの4カ国でスタート。現在は米国やオーストラリアなど11カ国が交渉 に参加して、関税や農産物補助金の撤廃などを目指している。

財務省の貿易統計によると、日本の現在の輸入関税率は牛肉 が38.5%。農林水産業などの中期的な問題研究などを手掛ける農林中金 総合研究所の清水徹朗基礎研究部長によると、関税が撤廃された場合、 牛肉の輸入量は4割増加し、国内生産は半減する見込みという。

日本はアジア最大の牛肉輸入国で、農林水産省によると12年の輸入 量は51万5108トン(2210億円)。オーストラリア産が31万9188トン で62%を占め、26%の米国産、6.1%のニュージーランド産が続く。

自民党のTPP対策委員会は13日夜、総会を開きTPP交渉の参加 を容認する決議を採択した。安倍首相に交渉参加表明を支持する考えを 伝える。安倍首相はこれを受けて15日夕、官邸で記者会見し、交渉参加 を正式表明する。

この日の東京市場では食肉関連株が大幅上昇。日本ハム株は一時前 日比142円(9.8%)高の1599円まで買われ、2008年10月6日以来の高値 を付けた。終値は95円(6.5%)高の1552円。

伊藤ハム株も一時22円(4.8%)高の484円と、08年10月21日以来の 高値まで上昇したほか、プリマハム株も一時、12円(5.5%)高の229円 まで買われた。

--取材協力:広川高史、Isabel Reynolds. Editors: 淡路毅, 駅義則

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