円が対ドルで上昇、日銀新体制注目-豪雇用統計が影響の見方も

東京外国為替市場では、円が対ドル で上昇。明日にも国会で最終的な同意が得られる見通しの日本銀行の新 体制が取り得る追加緩和の選択肢は限られるとし、短期的な円の買い戻 しの可能性を指摘する声が市場関係者から聞かれた。

午後4時10分現在のドル・円相場は1ドル=96円06銭前後。オース トラリアの雇用統計の発表があった午前9時30分ごろから円買い・ドル 売りが加速し、一時は95円69銭を付ける場面があった。その後はドルが 買い戻されている。

IG証券の石川順一マーケットアナリストは、午後にかけて円の上 昇幅が縮小したことについて、「日経平均株価が後場に上昇基調を強め たのにつれて、リスクオンの円売りが出た」と説明した。日銀の新体制 による金融緩和に関しては「外債購入は事実上の介入なので無理だし、 付利撤廃も困難ではないか。日銀の取り得る選択肢は意外と限られそう だ」とし、追加緩和が短期的な円買い戻しを誘発する可能性を指摘。た だ、中長期的には「リスクオンと米景気の回復が車の両輪となっている ため、円安基調自体は変わらない」と述べた。

衆院は14日午後の本会議で、安倍晋三政権が国会に提示した日本銀 行総裁に黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁を充てるなどの日銀正 副総裁人事案を採決し、いずれも与党の自民・公明党などの賛成多数で 同意した。参院は15日の本会議で採決する。

三井住友銀行の岡川聡シニア・グローバル・マーケッツ・アナリス ト(シンガポール在勤)は、日銀の新執行部が「かなりドラスティック なことをしても、ドル円が100円、105円、110円と行くイメージがな い。去年からの流れはいったん止まっている」とした上で、「ドル円は 動きが早過ぎた」と述べた。

相場は安倍政権が誕生した昨年12月からの約3カ月間で、ニューヨ ークの終値ベースで15%近くの円安・ドル高となっている。IG証券の 石川氏は、「安倍氏が登場する前の昨夏から、ユーロや豪ドルに対して は円安が始まっていた」と指摘。「欧州債務危機の落ち着きを背景とし たリスク回避姿勢の後退だ。アベノミクスはこうした火に油を注いだ格 好だ」と説明した。

豪雇用者数が予想上回る

豪統計局が14日発表した2月の雇用者数は前月比7万1500人増 と、2000年7月以来の大きな伸びを記録し、ブルームバーグがまとめた エコノミスト24人の予想中央値の1万人増を上回った。豪ドルは米ドル に対し一時、1豪ドル=1.0383米ドルと2月6日以来の高値を付けた。

外為どっとコム総合研究所のジェルベズ久美子研究員は、午前の相 場でみられた円高・ドル安進行について、「豪雇用統計後のドル・円の 下落は、ドル・円相場の直接の要因ではなく、豪ドルが対円より対ドル で大きく買われたため」と説明した。

内閣官房参与の浜田宏一米エール大学名誉教授は14日の自民党本部 での講演後、記者団に対して、為替水準について「よく分かりません」 とした上で、自民党の山本幸三衆院議員が適正な為替水準とし指摘する 1ドル=98円から100円は「いいのではないか」と語った。

山本氏は公式ウェブサイドに掲載した「海外投資新聞」のインタビ ューで、マネタリーベースがきちんと増えれば、「ドルは98円になるだ ろうと試算している」と発言。2月のブルームバーグ・ニュースのイン タビューで1ドル=95円から100円が適正水準との見方を示している。

ユーロは3カ月ぶり安値圏

ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.29ドル台半ばを中心に推移。2月 の米小売売上高が過去5カ月で最も高い伸びを示したことなどを背景 に、前日の海外市場に続いて約3カ月ぶりのドル高値圏での取引となっ ている。

米商務省が13日発表した2月の小売売上高(速報値)は、季節調整 済みで前月比1.1%増加となり、ブルームバーグ・ニュースがまとめた エコノミスト予想中央値の0.5%増を上回った。

みずほコーポレート銀行バイスプレジデントの岩田浩二氏(ニュー ヨーク在勤)は、米小売売上高について「全体として非常に強かった が、ガソリンと車を除けば、やや予想よりも強かったという感じか」と 指摘。前日のニューヨーク時間の為替相場に関しては「全般的にはドル が買われて、対ユーロとかでは買われている」と述べた。

海外時間のユーロ・ドルは一時1.2924ドルと、昨年12月10日以来の ドル高・ユーロ安水準を付けた。イタリア国債入札で借り入れコストが 上昇したことや米国の経済指標が好調だったことが背景となった。

イタリア政府が13日に実施した国債入札では、33億2000万ユーロ (約4130億円)相当の2015年償還債の落札利回りが2.48%と、2月13日 の入札時の2.3%を上回って昨年12月以来の高水準を記録した。フィッ チは先週末にイタリアの信用格付けを1段階引き下げ、「BBB+」と した。2月の総選挙で明確な与党勢力が生まれず、リセッション(景気 後退)や欧州債務危機への対応能力が損なわれるとの懸念が理由として いる。

外為どっとコム総研のジェルベズ氏は、「ユーロ圏の債務問題は長 期間にわたる話題で、ユーロ・ドルは基本的に下げ基調が続く」とみて いる。

--取材協力:大塚美佳、Masaki Kondo. Editors: 青木 勝, 山中英典

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