【クレジット市場】黒田日銀で不動産3年ぶり起債額-地価も上昇期待

不動産各社は社債発行が急増、月間 で既に3年ぶりの高水準に達している。日本銀行総裁候補の黒田東彦氏 が大胆な金融緩和に踏み込むとの観測を背景に、地価の値上がり期待が 高まり、事業環境の好転が見込まれるためだ。

ブルームバーグの集計によると、14日に条件決定した住友不動産 債200億円(償還期間は5年3カ月と7年の二本建て)を加えると、不 動産各社の3月の起債額はこれまでに850億円に上り、月間ベース で2010年4月以来の高水準となった。住友不動産の新発7年債の対国債 スプレッド(上乗せ金利)は27ベーシスポイント(bp、1bp =0.01%)で、日本企業全体の平均40bp、世界の不動産企業の151b pを下回る(バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ調べ)。

同社のほか、三菱地所、三井不動産の3社は資金調達コストが約10 年ぶりの低水準にある。脱デフレにかける安倍政権発足を機に不動産価 格が上がり始めるとの期待が背景にある。金融緩和による余剰資金は株 式や債券に加えて不動産関連商品にも回り始め、東証REIT指数は年 初来で28.8%上昇。黒田氏はデフレ脱却へ向け可能なことは何でもやる と表明し、不動産の値上がり期待を後押ししている。

みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは、不動産業界の 「資金調達環境が今、非常にいい」と指摘。資金需要については、「不 動産価格がボトムで、取得しやすい時期がそろそろ終わりに近づいたと いうことになり、今の段階で資金調達をして不動産を取得するチャンス だ」と分析する。

3月はこれまでに三菱地所が計300億円起債。三井不動産は約2年 ぶりに20年債100億円を起債し、同社広報部の天田光稔氏は「投資家の 反応は非常に良かった」と述べた。

宅地需要

日銀総裁候補の黒田氏は、2%の物価目標の達成時期について、「 2年を目指す」と公言しており、地価も上昇に転じるとの見方から、個 人の住宅購入意欲が高まっている。ドイツ証券の大谷洋司シニアアナリ ストは「住宅市場の拡大を見込んで、不動産業界は積極的に用地を取得 する動きが出ている」とみる。

1月の住宅着工件数は前年同月比5%増の6万9289戸と、5カ月連 続で増加。また不動産経済研究所の調査では、今年の全国の新築マンシ ョン発売戸数は4年連続の増加となる見込みで、デベロッパーは旺盛な 需要を当て込む。福田秋生部長は、「今後はさらにアベノミクス効果が 支えとなり、新築マンションの発売戸数は横ばいか増加が続く」との見 方を明らかにした。

国土交通省がまとめた2012年第4四半期(12年10月1日-13年1月 1日)の地価動向では、全国150カ所の調査地点のうち地価が上昇した 地区数は51と全体の3分の1を占め、前回の34から増加。国交省は地価 の上昇地区が増えた理由として、商業地区の再開発やマンション需要の 増加などを挙げており、「地価の下落基調からの転換の動きがより明ら かにみられる」と分析している。

オフィス市況

景気の影響を受けやすく、低迷していた都心のオフィス市況も改善 の兆しが見える。賃料の先行指標となる空室率(東京ビジネス地区)は 昨年7月からほぼ一本調子で改善し、1月は8.56%。

2005年から07年にかけての前回の回復局面では、空室率が最低を付 けた9カ月後、賃料がピークを記録した経緯がある。アクサ・リアル・ エステート・インベストメント・マネジャーズ・シンガポールのシニア ファンドマネジャー、小野秀俊氏は「空室率は改善の兆しが見えるの で、今年後半には賃料も上昇するのではないか」とみる。

売上高で国内不動産首位の三井不動産は12-17年度の投資額につい て回収額を差し引いて1兆円規模を計画。森ビルは52階建ての超高層ビ ル「虎ノ門ヒルズ」の14年竣工を目指す。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のアナリスト、井澤朗 子氏は、「一部のデベロッパーは今後数年間で高水準の投資を実施する とみられる」と指摘。「負債比率が高止まりする可能性があるが、物件 売却による資金回収で中期的には財務改善につがるだろう」との見方を 明らかにした。

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