ECBはミラノに行け-ドイツ版グリッロ氏が唱える「別の道」

昨年の夏、欧州中央銀行(ECB) のドラギ総裁はユーロを守るためにあらゆる措置を取ると表明した。総 裁が本当にユーロを守れるかどうか、近々明らかになっていくだろう。

表面的には、昨年7月終わりのドラギ総裁の発言以来、物事はうま くいっているように見える。イタリアとスペインの借り入れコストは年 限を問わず下がった。スペインでは預金流出に歯止めがかかり、少しず つだが預金が増えつつある。スペインとイタリアの株価も上昇した。

しかし、これらのいずれも景気回復には結び付いていない。両国の 失業率は上昇を続け、所得の減少は加速している。一つには、下がった とはいえ借り入れコストがまだユーロ圏中核国に比べ高過ぎるというこ とがあるだろう。

何年も続く痛みに市民が反乱を起こし始めてもおかしくはない。イ タリアでは、非民主的な方法で「フランクフルトから押し付けられた」 モンティ首相の実務型政権を有権者が拒否した。スペインの国民は投票 で不満を表明するには2016年1月の総選挙を待たなければならないが、 カタルーニャ州では昨年11月の選挙で分離独立派が勢力を伸ばした。

南欧諸国の人々を救えなかったドラギ総裁の政策は、ユーロ圏の北 部諸国でも評判が悪い。ドイツ連邦銀行(中央銀行)のバイトマン総裁 は、ECBが悪魔の戦略を歩んでいるとこき下ろした。税金の高いオラ ンダの納税者も、オランダ人から見ると腐敗しているギリシャおよびイ タリア政府を救済などしたくない。

「別の道」

これまでのところ、ドラギ総裁とユーロはこうした政治的反発を乗 り切ってきたが、フランクフルトに新たに現れた脅威はドラギ総裁の手 に余るかもしれない。それは「オルタナティブ・フォー・ジャーマニー (ドイツのための別の道、AfG)」という政党だ。エコノミストや政 治家、ジャーナリストで作るこの政党の主張は単純明快だ。ユーロは民 主主義をむしばみ、法治国家の原則を犯している。特にマーストリヒト 条約の救済禁止条項に違反したというのだ。

そこで彼らは提案する。ユーロ圏を分割しようと。AfGの案で斬 新なのは、高債務国の方がユーロ圏に残る点だ。ECBはフランクフル トからミラノに引っ越せばよいだろう。こうすれば銀行取り付け騒ぎや 債務の通貨変更に伴うやっかいな法的問題を回避できる。一方、大ドイ ツ圏は復活したマルクを軸に新たな通貨同盟を築く。

AfGを取るに足らないと切り捨てるのは容易だ。この政党には資 金も組織力もない。創設者のベルント・ルッケ教授(経済学)に、イタ リアで新党を作ったコメディアン、ベッペ・グリッロ氏のようなカリス マ性はない。しかし、ドイツ誌フォーカスの委託で実施された世論調査 によると、国民の26%は反ユーロの政党に投票することに抵抗がない。 さらに反ユーロ政党への支持は大衆寄りの右派ばかりではなく、さまざ まな政治会派にまたがって広がっている。緑の党の支持者の27%、中道 左派の社会民主党の15%が反ユーロ政党に投票してもよいと答えてい る。

ドイツでは9月末に総選挙が行われる。ドラギ総裁はそれまでの6 カ月に、南欧ばかりでなく北部欧州の声によく耳を傾けるべきだろう。 (マシュー・C・クライン)

(マシュー・C・クライン氏は「ティッカー」への寄稿者です。同 氏のコラムはツイッターでご参照いただけます)

原題:Germany’s New Euro-Haters Threaten Draghi’s Dream(抜粋)

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