ヴィトン、ティファニー:相次ぎ値上げ-円安でブランド乗り換えも

「値段が上がってもブランド品を買 えるのは裕福な人、セレブの人達」-買い物で表参道を訪れた学生の高 梨美沙子さん(20)は、値上げはしてほしくないというが、値段が上が れば、「益々ブランドへの憧れが強くなる」と心境は複雑だ。

高梨さんが今持っているブランド品はシャネルとコーチのバッグ。 ただ2つとも親からもらったもの。彼女は、就職したら最初に「エルメ スのバッグを買いたい」と心に決めているが、値上げされたらブランド 品は「手が届かなくなる」と心配顔を見せる。

そういう消費者の心配をよそに、高級ブランド各社が日本で相次い で値上げに踏み切っている。昨年12月26日に、デフレ脱却を目指す「ア ベノミクス」政策を掲げた安倍政権が誕生して以来、円が対ドルで12日 までに約13%下落、各社は輸入コストの上昇に直面しているためだ。利 益確保のための値上げも、それによって予算の限られた顧客層が離れて しまう心配もあり、悩ましい問題となっている。

仏高級品LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下のルイ・ヴ ィトン・ジャパンは先月、一部商品で平均12%という過去最大の値上げ に踏み切った。高級宝飾品のティファニーも4月10日から、ハリー・ウ ィンストンも22日から一部商品で値上げする予定だ。

ジャパンインベストの大和樹彦副調査部長は「ブルガリの時計を50 万円で買う余裕のある人は値段が52万円になっても気にしないだろう」 という。「しかし、もし比較的低価格帯のブランドバッグが5000円値上 げされたら、買うのをあきらめる人もいるかもしれない」と語る。

ヴィトンでさえリスク

HSBCグループのアナリスト、アーワン・ランボーグ氏は、「高 級品全社が価格を多少上方修正するのではないか」と予想する。ただヴ ィトンの値上げについては、「12%というのは大胆」と指摘。高級ブラ ンドの中で日本での売上高が最も大きいヴィトンでさえも「日本の消費 者が別のブランドに乗り換えてしまうリスクがある」と分析し、「他社 はより巧妙な方法で値上げをするだろう」との見方を示した。

デフレの進行に加え、2008年のリーマンショックの影響で国内景気 は低迷が続いてきた。このため、高級ブランド各社は、中国など急速な ど経済成長を遂げている新興国市場に関心を寄せている。しかし、コン サルティング会社べイン・アンド・カンパニーによると、12年の日本で の高級品の売上高は約200億ユーロ(約2.5兆円)で、依然として米国に 次ぐ世界2位の市場だ。

ランボーグ氏によると、日本は「人件費や不動産賃料は、それほど 上昇していない一方で、販売効率が非常に高い」ため、「まだ大変もう かる市場」という。

人気あるブランドなら可能か

それだけにブランド各社の売上高に占める日本の比率は高い。ブル ームバーグ・インダストリーズのアナリスト、デボラ・エトキン氏によ ると、割合はハリー・ウィンストンで20%、コーチで18%、ティファニ ーで17%、エルメスで17%。

同氏は「これらのブランドが一番円安の影響を受けている」と語 る。その上で「値上げは最も人気のあるブランド群だったら可能かもし れない」と指摘した。

エルメス日本法人の広報担当者は現時点で値上げは検討していな い、と述べた。プラダの広報担当者は、値上げの可能性ついてコメント を控えた。コーチ日本法人の広報担当石田敦子氏は、同社の価格戦略に 変更はない、と述べた。

ランボーグ氏によると、「コーチは販売数量で日本で1番売れてい るブランド。売り上げではヴィトンに次ぎ2番目」だ。同氏は「おそら くコーチは値上げをするだろう」とみている。

乗り換え頻繁に

経済再生を狙う安倍政権の方針を背景に、円は12日、約3年7カ月 ぶりに1ドル=96円70銭水準まで下落。LVMHのCEO(最高経営責 任者)の ベルナール・アルノー氏も1月、「昨年末の円の急落ぶりに は正直驚いた」と述べている。

世界展開する多くの高級ブランド品メーカーは、為替変動リスクを 回避する戦略を取っているが、今回の円安進行のスピードは早かった。 それだけに、為替の影響を避けるブランド各社の価格戦略に差が出れ ば、消費者によるブランドの乗り換えがより頻繁になる可能性がある。

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