さらば放射能、汚染土使わぬ野菜工場-農業復興に希望、川内

過去25年間で世界最悪の放射能漏れ 事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所から約30キロメートルに 位置する福島県川内村。2011年3月に発生した東日本大震災後、原発か ら放出された放射性物質で土壌が汚染され、村の将来への懸念が高まっ ていた。そんな中、遠藤雄夫さんは土を使わない農業を提案した。

かつては皇室にもコメを献上していた川内村の水田は、休耕状態が 続いている。そこで、村は外気から遮断された施設で水耕栽培を実施す るプロジェクトに着手した。遠藤さんはこのプロジェクトのリーダーを 務めている。アルミニウム素材で覆われた、サッカー場ほどの大きさの 平屋の植物工場で、4月から1日当たりレタス8000株の生産が始まる予 定だ。トマトのほか、イチゴなど果物を生産する施設も建設される可能 性がある。

「川内村の農家は、長くて10年はコメと野菜を栽培できないのでは ないかと思っていた。そこで、放射性物質から完全に遮断された施設の 中で野菜を栽培してはどうかと考えた」。遠藤さん(36)は川内村での インタビューでそう語る。

発光ダイオード(LED)の光と液体肥料を利用した水耕栽培は、 東日本大震災で最も深刻な被害を受けたこの地域の活性化と雇用回復に つながると期待されている。福島の再生に向けた官民の取り組みは、震 災で住宅や生活の糧を失った農家にとって農業への復帰の実現と、地元 産農産物の安全性を消費者に示すきっかけとなりそうだ。

日本の農産物輸入は震災が発生した11年に16%増加し、約5兆5800 億円に達した。

警戒区域

原発事故に伴ってセシウムなど放射性物質が放出されたため、原発 から半径20キロメートル以内は立ち入りが禁止される警戒区域となっ た。原発周辺での農業は禁止され、5000頭を超える家畜が殺処分となっ たほか、全国で定期的な放射性物質検査が始まった。

農水省によると、福島県は震災前、全国4位のコメ産地だったが、 昨年の生産高は約36万8700トンで7位だった。

JAグループ福島によると、福島県の農家約10万戸の11年3月以降 の損害額は今年2月末時点で1048億9300万円に上り、多くが依然として 営農を再開できない状況にある。

川内村で農業を営む秋元美誉、ソノ子さん夫妻もそんな農家の一つ だ。夫妻が育てたコメは07年に皇室に献上された。

ソノ子さん(68)は「大変な思いをして有機食品の認証を取得した のに、原発事故で全てが台無しになった」と話す。

美誉さん(69)によると、昨年試験栽培したコメからはセシウムが 検出されなかったため、今年からは作付けと販売の再開を計画してい る。

レタスの植物工場は従業員約25人でスタートする予定だ。震災前 に2835人いた村民のうち約400人が完全に帰村、避難先と自宅の二重生 活を続けている人も含めると1100人が戻った。

美誉さんは、農業をやめることなど考えたこともないと言い、この 新しいタイプの農業が復興につながると期待している。

除染作業が実施された村では、放射性物質に汚染された土の入った 1トン詰めの青いプラスチック袋が積み上げられたままの状態になって いた。

原題:Fukushima Seeks Revival in Radiation-Free Farms With No Soil(抜粋)

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