色あせるアベノミクス相場、日本株騰落米国に劣る-ドル建て

TOPIXで1000ポイントとリーマ ン・ショック後の高値を奪回、2008年10月以来の水準に戻し、年初から 復調ぶりを鮮明にする日本株。上昇率は世界のトップ集団に位置する が、株式需給面で最大の功労者である海外投資家の立場になれば、運用 成果は米国に劣り、「アベノミクス相場」は色あせて見える。

ブルームバーグ・データで世界の主要94指数のパフォーマンスを見 ると、昨年の大納会を起点に3月7日までTOPIXは16.8%上昇。3 割上げたガーナやベネズエラの後塵を拝したが、ドバイやアルゼンチン との接戦の末、6位に入った。主要7カ国(G7)の中では米S& P500種指数の10%高、英FTSE100指数の8.7%高、独DAX指数 の4.3%高を抑えてのトップで、安倍晋三政権の脱デフレ政策、為替の 円安進行による企業業績好転への期待の強さをうかがわせる。

ところが、好材料の一つであるはずの円安は、ドルを自国通貨とす る北米勢など海外投資家のパフォーマンスを目減りさせており、ドル建 てTOPIXの同期間の上昇率は6%と、米S&P500指数に一気にか わされてしまう。

日本株快走のペースメーカー的役割を果たしてきたのは海外勢で、 政権交代を視野に入れた昨年11月2週から3月1週まで16週連続で買い 越し、その間の累計買越額は4兆2000億円。TOPIXが週間で13週続 伸(ブルームバーグ・データによる)と40年ぶりの晴れ舞台を演じた割 には、主役の報酬は低くとどまっている。

JPモルガン・ファンズのチーフ市場ストラテジスト、デービッ ド・ケリー氏は「米国の投資家にとって、日本株の歴史的な上昇相場の リターンは日本の投資家ほどではない」と指摘。日本は国家債務と人口 動態の問題も抱えており、「私なら米国株をオーバーウエートし、日本 株をアンダーウエートする」と言う。

09年来の1ドル=95円突破

7日のニューヨーク為替市場では、ドル・円相場が09年8月以来の 1ドル=95円台を付けた。昨年11月中旬の79円台からは既に2割円安が 進んだが、日本銀行の次期執行部による大胆な金融緩和策や欧米景気の 改善期待のほか、日本の経常赤字などファンダメンタルズ要因も加わ り、円安観測はなお根強い。

次期日銀総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行総裁は国会聴取で、 「デフレ脱却に向けて何でもやる」との意向を表明。これまでの金融緩 和が十分ではない、との見方も示した。副総裁候補の学習院大学の岩田 規久男教授は、「2%物価の達成責任を全面的に持つ必要がある」と し、今後2年で達成できなければ、辞職する強い決意を述べている。

為替ヘッジをしている米投資会社ウィズダムツリー・インベストメ ンツの日本株ファンド上場投資信託(ETF)は、昨年の大納会を起点 に15%上昇し、パフォーマンスはS&P500種指数を上回る。ことしに 入ってからの1日当たり売買高の平均は、昨年の10倍以上だ。

LGTキャピタル・マネジメントのグローバルストラテジスト、熊 田幹夫氏(シンガポール在勤)は「円安期待から日本株を買ってきた海 外投資家が為替ヘッジをしないのは愚かな戦略だ。ヘッジ費用は小さい 一方で、収益への影響力は小さくない」と指摘した。

海外勢、個人のシェア差縮まる

今のところ日本株に強い買い意欲を見せている海外勢だが、一段の 円安は運用パフォーマンスをさらに低下させるもろ刃の剣を抱え、過去 3年にわたり年央から後半にかけて売り越しに転じる傾向も踏まえる と、今後の日本株への投資姿勢には不透明感も残る。これに対し、急速 に存在感を増し始めているのが国内の個人投資家だ。

東京、大阪、名古屋3市場の売買代金に占める割合は、海外勢が昨 年10月の68.1%から2月に57.4%と09年4月来の水準まで低下した半 面、個人のシェアは31%まで上昇。信用取引を通じて活発に買う一方、 現物での売越額も縮小傾向にある。

また、オンライン証券専業大手の一角、松井証券では口座開設など に関する顧客からの問い合わせの勢いが衰えず、広報担当の松井亮氏は ブルームバーグの取材に対し、「コールセンターはつながりにくい状況 が続いている」と話した。同証の口座の月間増加数は昨年11月の2132に 対し、12月が2203、1月4983、2月5973と増勢。同じくオンライン証券 大手のSBI証券では、同証経由の2月月間の売買代金は8兆4133億円 と前月から1割増え、07年以来の8兆円台に乗せた。

日興アセットマネジメントのグローバル・ストラテジスト、ジョ ン・べイル氏は「国内の個人投資家が参加しているというのは非常にい いサインだ」と指摘。その上で、「日本の家計は多くの個人金融資産を 抱えており、タンス預金をしていてはいけないとの思いを強めるだろ う」との見方を示した。

--取材協力:河野敏、Yoshiaki Nohara. Editor: 院去信太郎

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE