白川日銀総裁:デフレ脱却へ良い方向に-競争力強化進展の兆しも

日本銀行の白川方明総裁は7日午 後、定例会見で国内景気の状況について、デフレからの早期脱却と持続 的成長の実現に向けて「良い方向に進んでいる」との見方を示した。背 景として、足元の円安・株高が「企業や家計のマインド改善につながる ことも期待できる」上、競争力や成長力強化に向けた取り組みが「進展 する兆しも出てきている」と説明した。

日銀が同日開いた金融政策決定会合で白井さゆり審議委員が、資産 買い入れ等基金の長期国債購入について「期限を定めない買い入れ方 式」を速やかに導入し、成長通貨供給を目的とした毎月1.8兆円の長期 国債買い入れ、いわゆる「輪番オペ」と統合する、との議案を提出した が、1対8の反対多数で否決された。

白川総裁は同委員の提案について「物価安定の目標の実現を目指し て金融緩和を推進する日銀の姿勢をより明確化するとともに、最近見ら れているわが国経済の改善の動きを金融面から後押しする観点から」行 ったと述べた。

日銀総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁や副総裁候補 の岩田規久男学習院大学教授は、先に行った衆院の所信聴取で、2%の 物価目標の達成期間として「2年」という数字を挙げた。

白川総裁はこれらの発言に対するコメントは控えつつも、「金融市 場では世界的に投資家のリスク回避姿勢が後退し、海外経済見通しも改 善方向にある」と指摘。「そのような状況を背景に起きている円安・株 高の動きが、わが国の企業や家計のマインド改善につながっていくこと も期待される。加えて、ここにきて日本経済の競争力と成長力の強化に 向けた取り組みも進展する兆しも出てきている」と述べた。

本当に進展するかが大きな鍵

その上で「こうした前向きの動きを持続的成長につなげていけば、 経済の需給バランスは一段と改善し、物価上昇率をさらに高めていくと 考えている」と言明。「その意味で日本経済がデフレからの早期脱却と 物価安定の下での持続的成長に向けて、良い方向に進んでいると考えら れるし、是非そうしなければならないと思っている」と語った。

白川総裁は一方で、「欧州債務問題をはじめ日本経済をめぐる不確 実性は依然大きい。最近の金融市場の動きは世界経済が減速を脱して持 ち直していくことを織り込んだ動きだが、今後いくつかの不透明要因が 順調に払しょくされていくかどうか不確実性もある」と指摘。「何より 最も重要な日本経済の競争力と成長力強化に向けた取り組みが本当に進 展していくかが大きな鍵を握っている」と述べた。

白川総裁はまた、「先般、『山口副総裁が人事に関連して関係者に 根回しを行っている』といった趣旨の報道があったが、実際にはそのよ うな事実は全くない。日銀は当該報道機関に対し、顧問弁護士を通じて 抗議を行っているところであり、当該報道機関からは、『日銀の抗議を 真摯(しんし)に受け止める。今後は公正な報道を心掛ける』旨の回答 を得ている」と述べた。

量的緩和と包括緩和の評価

2001年-06年の量的緩和政策の評価については「日銀による潤沢な 資金供給は金融機関の流動性に対する不安を払しょくし、当時大きな問 題だった金融システムの安定確保に貢献した。このことは景気回復の基 盤を整える効果を発揮した」と指摘。「また、量的緩和継続のコミット メント、いわゆる時間軸は長期にわたりゼロ金利が継続されるとの観測 を生み出し、金利が低位で安定的に推移することを促した」と述べた。

その上で「このメカニズムを通じて過剰な債務、設備、雇用といっ た構造的問題の調整を促し、日本経済の前向きな動きを下支えしたと評 価している」と述べた。

現在の包括緩和政策については「資産買い入れを大量に行ってお り、その反射効果として流動性は大変増加しているが、この枠組みの下 で長めの金利を引き下げ、リスクプレミアム低下を促すということに努 めてきた」と指摘。「これは金融政策という面から、日本経済がデフレ から脱却し、物価安定の下での持続的成長に復する上で、相応の効果を 発揮していると思っている」と語った。

マネタリーベースは170兆円に

白川総裁はその上で「多少、量的な側面を申し上げると、今後1年 余りで資産買い入れ等基金や貸出支援基金を通じて残高ベースで50兆円 程度の増加という大規模な資金供給を行う。その結果、いわゆるマネタ リーベースも拡大する」と指摘。「仮に今後の基金残高の増分がマネタ リーベースの増分につながると機械的に仮定して計算すると、本年末の マネタリーベースは170兆円程度と試算される」と述べた。

さらに、マネタリーベースの「前年比は2月の15%増から12月に は29%、対国内総生産(GDP)比では2月の27%から12月の36%に上 がる。このうち当座預金は2月末が43.9兆円だが、これが84.9兆円にな る」と指摘。「現在、米連邦準備制度理事会(FRB)のマネタリーベ ースの対GDP比が17%、ユーロ圏が16%だが、こうした数字と比較し ながら、日銀の量という面でもさらに拡大していく」と語った。

政府・日銀ともに規律が必要

黒田、岩田両氏が長期国債のさらなる買い入れに言及していること については、直接的なコメントは避けつつも、「日銀は現在、多額の国 債買い入れを行っている」と指摘。「日本の財政は非常に厳しい状況に あるために、日銀の国債買い入れが全体として内外の市場で財政ファイ ナンスのために行っていると受け止められると、それが原因となって長 期金利が上昇し、多額の国債を保有している金融機関の経営を通じて実 体経済に悪影響を与える」と述べた。

その上で「特に、成長力強化の取り組みが進展せず、結果として日 銀の国債保有だけが増加する場合、そうしたリスクが高まる」と説明。 「その意味で、政府にも日銀にも規律が求められる」と語った。

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