アップルも好立地移転、オフィス賃料バブル崩壊後初の本格回復か

バブル崩壊後、20年以上も下落傾向 にあった都心のオフィス賃料が、6年ぶりに回復の兆しを見せている。 先行指標である空室率が昨夏から改善基調にあり、賃料への波及が期待 されているためだ。米アップルやモルガン・スタンレーの日本法人が都 心の好立地へ移転するなど、オフィス移転も目立ち始めた。

三鬼商事によると、東京ビジネス地区のオフィス空室率は昨年7月 からほぼ一本調子で改善し、1月は8.56%。2005年から07年にかけての 前回の回復局面では、空室率が07年11月にバブル崩壊後の最低を付けた 9カ月後、賃料がピークを記録しており、不動産関係者の間では、今回 も回復が近づいていると強気な見方が広がり始めている。

背景には、賃料が長期低落でバブル期の4割以下に落ち込んだ(三 鬼商事調べ)のに加え、新築ビルの供給減がある。不動産サービスの DTZは、今年の東京の大型オフィスビル供給面積は昨年の約40%にと どまり、賃料は7%程度上昇すると分析。また大胆な金融緩和でデフレ 脱却を目指す安倍政権の発足も回復期待を後押ししている。

アクサ・リアル・エステート・インベストメント・マネジャーズ・ シンガポールのシニアファンドマネジャー、小野秀俊氏も、「空室率は 改善の兆しが見えるので、今年後半には賃料も上昇するのではないか」 とみる。

不動産サービスのジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)は、都 心オフィス賃料は今後2年間、平均で年率5%上昇すると予想する。ニ ール・ヒッチン執行役員は「オフィス市場には、信頼感回復の予兆が見 え始めている」と指摘。都心の大型ビルについては、テナントは今のう ちに賃料を確定しようとして、交渉を急いでいるという。

オフィス移転

CBREが首都圏にオフィスを構えるテナント企業689社を対象に 行った調査によると、オフィス移転に意欲的な回答の割合は10年の37% から12年は47%に上昇した。こうした中、アップルの日本法人は4月に も新宿から六本木ヒルズに、モルガンスタンレーは日本拠点を恵比寿か ら大手町にそれぞれ移転する計画が関係者の話で明らかになっている。

移転先で人気なのは新築の大型オフィスビルだ。みずほ証券が調査 した大型オフィスビルの稼働率は1月に竣工した「日本橋アステラス三 井ビルディング」が100%、3月に竣工する「御茶ノ水空シティ」が日 本製紙グループとキョーリン製薬ホールディングスの入居で90%以上、 「渋谷ヒカリエ」も100%など、好調が目立つ。

東証1部上場企業の約1割が事務所を構える丸の内で約100棟のビ ルを保有する三菱地所。同社の高野圭司広報部長は2月4日の決算会見 で、「丸の内は賃料を落とさない営業方針に転換した」と自信を示し た。同社は全国全用途の平均賃料も13年3月期は3年ぶりにプラスの坪 当たり2万4000円を予想している。

賃料上昇を見込んでビル価格自体も上昇に転じている。米不動産調 査会社のリアル・キャピタル・アナリティクス(RCA)のデータによ ると、都心オフィスビルの投資利回りを示すキャップレートは昨年11月 の5.5%をピークに2カ月連続で低下し、今年1月は5.3%。これは賃料 収入を物件価格で割った数値で、低いほど物件が高いことを示す。

安倍政権

安倍政権の発足もオフィス市況の回復期待を支えている。積極的な 金融・財政政策を背景に円安・株高が進行し、企業業績にも好影響が出 始めており、森トラストの吉田武副社長は、「賃料の上昇も確かなもの になる」とし、オフィス市況への波及効果を期待する。

東京海上不動産投資顧問の平野昌史社長は、「金融緩和で不動産投 資も今後活発化するとの期待感が広がっている」とし、5年ぶりに都内 のオフィスビルに投資するファンドを組成する計画を明らかにした。

東証REIT指数は自民党が衆院選で勝利した昨年12月半ば以降、 4日までに30.5%上昇。次期日本銀行総裁候補の黒田東彦氏は同日、衆 院でデフレ脱却へ向け可能なことは何でもやると表明した。

米コーナーストーン・リアルエステート・アドバイザーズのディレ クター、ケリー・ヘイズ氏は、都心のオフィス賃料について「安倍政権 の発足前から底打ちし始めているが、アベノミクスはこれを後押しする だろう」と話す。

息の長い回復

バブル崩壊で長期低落にあった都心オフィス賃料は05年から07年に かけて回復しかけたが、08年のリーマンショックの影響で不動産向け融 資が絞られ、再び悪化した。

みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは、前回の回復期で ある07年当時について、外資を中心に「短期での不動産価格の上昇を狙 ったものが多かった」として、「ミニバブル」に終わったと指摘。これ に対し、今回は不動産投資の経験が長い業者が中心になって「中長期の 資産価値上昇を狙ったものが多い」ため、07年の二の舞にはならず、 「賃料の回復は息の長いものとなる」との見方を示した。

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