「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

3月5日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは6、7 日の日銀の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」13人 に金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アンケート回答 期限は4日午前8時。エコノミスト予想のまとめ記事として「日銀は 『消化試合』で現状維持へ、『ゼロ回答』はあり得ない4月会合」を同 時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、かっこは前回回答)、12)経済・ 物価の見通し、13)金融政策運営の見通し-①今会合での追加緩和の 可能性、②白川総裁の下での5年間の金融政策の評価。

③黒田東彦「総裁」、岩田規久男「副総裁」、中曽宏「副総裁」の 評価と、その下での金融政策の見通し(オープンエンド化の前倒し、 下限金利の引き下げないし撤廃、政策金利の引き下げ、買い入れ対象 国債の年限の拡大、輪番オペの拡大、日銀券ルールの撤廃、時間軸の 強化、外債購入、包括緩和政策からの大胆なレジームチェンジなど)、 実施されるタイミング、効果と副作用、2%物価目標の実現可能性、 達成時期。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年度以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)国内景気は円安/株高を背景に輸出と生産が底入れし、景況感も持 ち直してきた。ただ前回回答時に想定していたパスよりもやや弱い印 象。増産計画は後倒しになっている。補正予算(公共事業)は資材/ 人手不足で執行遅れが懸念される。脱デフレの道筋は相変わらず見え ない。

米国景気は明暗まだら模様。「明」は住宅関連、「暗」は財政関連。 歳出強制削減(3月~)、暫定予算失効期限(3月末)、債務上限問題 (5月)が企業・消費者心理に影を落とし、実体景気の足を何がしか引 っ張りそう。楽観できず。欧州景気はイタリア・ショックを機に、厳し い実態と不透明な先行きが再認識された。イタリアが改革路線をキー プできるかどうかが当面のポイント。南欧長期金利動向がメルクマー ル。

13)①追加緩和見送り。新生・日銀の本格稼動待ちの市場は織り込み済 みであり、特に反応を示さず。②非伝統的な政策手段をパッケージに した「包括緩和」に踏み込んだ点は評価できる。一方、脱デフレ(リ フレ)達成による「物価の安定」という結果を残せなかった点は残念。

③反・日銀(理論)の急先鋒である黒田氏と岩田氏の総裁・副総裁 候補へのノミネートは、結果として円高/デフレを座視してきた白川日 銀に対する安倍首相の根深い不信感の表れ。金融政策運営のレジーム・ チェンジの象徴とも言える。中曽氏は執行部のバランサー的位置付け。 日銀プロパーとして、黒田氏と岩田氏を金融政策運営の理論/実務両面 から手綱をさばく役割か。

「異次元の大胆緩和」策は金融資産とりわけ長期国債の買い入れ 増額、年限長期化。想定手順は、資産買い入れ等基金を通じた買入国 債の対象残存年限の延長(3年債まで→10年債まで)、同基金の買入 目標残高の増額、銀行券ルールの撤廃(インフレ目標;2%達成まで)、 長期国債買い入(輪番)オペと資産買入等基金・国債購入の一体化、長 期国債買い入れ対象年限の長期化。ポートフォリオ・リバランス効果を 狙ってリスク性資産の買い入れ増額も。なお、当座預金付利の引き下 げ/撤廃や外債購入は見送り。

●SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジスト 1)今回会合 :全員一致で現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)2月会合後発表の1月分の国内指標は明るさが増した。顕著な改 善は家計マインド指標だが、消費支出も旅行等のサービス関連がしっ かり、厳しい寒さが冬物商品に追い風となった。一方で1月の実質輸 出(日銀ベース)は前月比+2.2%となり、中国の春節が2月による好 影響も押し上げに働いた。また鉱工業生産は前月比+1.0%と2カ月連 続のプラスとなり、昨年10-12月期での下げ止まりを裏付けた。経済 産業省の製造工業生産予測指数(2月の前月比+5.3%、3月の同+0.3%) に基づくと、1-3月期は前期比+5.9%と大幅増加だが、2月は曜日 要因の押し上げもあり、季節調整の歪みを割り引く必要がある。

業種別ではIT関連が一進一退の動きであり、先行きの不確実性 が残る点は注意したい。他方、全国1月のコアCPIは前年比▲0.2% とマイナス基調は変わらず。3、4月に向けては前年に価格上昇した テレビや石油製品の反動減でマイナス幅の拡大が見込まれる。一時的 な弱さとは言え、物価目標2%を目指す新体制の日銀にとっては4、 5月にかけて逆風が吹く。それでも年半ば以降は、テクニカル要因が 剥落し、円安を反映する形で再び前年比プラス圏に移行できるだろう。 ここにきて、期待インフレ率が家計も市場でも改善しているのは心強 い動きである。

海外では、米国が「財政の崖」を回避し、緩やかな回復基調を続 けている。ただし、1日に歳出強制削減が発動され、政府業務に影響 が及ぶことで、マインド面を通じて米国経済を下押しリスクがある。 次に欧州ではイタリア総選挙の結果が先行き不透明感を示したように、 政治的な不安定さは引続き下振れリスクである。中核国の景気の足取 りにもまだ力強さはなく、年後半の景気回復シナリオにはまだ自信が 持てない。

中国は持ち直し傾向だが、1、2月分の指標では春節要因の振れ を見極める必要がある。また5日からの全国人民大会により、新政権 が財政政策に慎重姿勢であることを確認すれば、過度な成長期待は描 けないであろう。よって日本において、円高修正の動きと外需の持ち 直しが押し上げに働くのは、4-6月期以降になると予想する。日本 のアベノミクスも期待先行であり、外需に力強さが欠ける状況が長引 けば、タイムラグを伴い出る政策効果が想定より弱くなる可能性があ る。

13)①今回も現状維持を決定。足元の輸出と生産は持ち直しの動きを 見せており、日銀は景気判断を2カ月連続で上方修正すると見込まれ る。白川総裁最後の金融政策決定会合は昨秋以降の4回の追加緩和の 累積効果を見守り、静かに終わろう。市場の関心事は、新体制による 新たな追加策に移っており、消化試合の3月会合の現状維持は既定路 線である。

②白川総裁の5年間を振り返ると、リーマンショックの危機対応 と円高対策に苦労した歳月だったと思う。そのような状況下で評価で きることは3つ。(1)10年10月の包括緩和決定でリスク資産購入に 踏み切ったこと(ルビコン河を渡った)、(2)海外講演を通じて、日本 の教訓を踏まえた中央銀行の政策哲学を示した功績、(3)政府との共 同文書で、政府に成長力強化への取組み明記させたこと。時間は要し たが枠組みの達人として、「中長期的な物価安定の理解」から「物価目 標2%の導入」への変更に関与したこと。

その一方で、評価できなかったことは4つ。(1)市場への情報発 信およびコミュニケーションが十分ではなかったこと。(2)12年2月 のバレンタイン会合後の政策運営が、期待外れに終わったこと。(3) 09年12月(政府のデフレ宣言後)、10年8月(円高進行時)の臨時会 合での追加緩和決定は後手に回った印象を与えたこと。(4)12年後半 は、景気判断の下方修正が後手に回ったこと。

1月24日の経済財政諮問会議で、次回4月時に「目標達成に向け た道筋をできる限りしっかり描いてもらいたい」との宿題が出されて いる。その回答を検討する過程において、日銀内で議論されることに なろう。

③財務官とアジア開発銀行総裁を歴任した黒田氏なら、国際会議 での発言力は期待できる。ただし、財務官時代の円高ファイター的な 存在感が強いだけに、日本の政策が為替重視と受け止められかねない。 また、国際金融界での知名度はあっても、世界の中央銀行のサークル にはやや距離があると思われる。よって、リーマンショック後の危機 対応で力量を発揮した中曽日銀理事が副総裁となって補佐役となる必 要はあるだろう。また黒田氏と岩田氏は日銀での実務経験がない。中 央銀行の幅広い実務を勉強する時間が必要だ。

積極的な緩和論者2人の起用で、市場では大胆な金融緩和への期 待が強まり、初会合となる4月3、4日の金融政策決定会合ではゼロ 回答はあり得ない雰囲気になりつつある。しかし、大胆な緩和策を講 じるには法整備や財務省との協議、そして新たなルール作りと時間を 要する。いずれは実現しても、すぐにできることは従来の延長線上の 手段しかない。

例えば、オープンエンド方式の前倒し実施と毎月のペース拡大(長 期国債の毎月2兆円からの拡大)である。また新しい経済・物価見通 しを示す4月26日発表の展望レポート発表に合わせて、時間軸を強化 する方法は考え得る。現在の日銀の金融緩和策は、実質ゼロ金利政策 に加え包括緩和という非伝統的な措置のもとでテクニカルな手法に苦 心している。その点を理解し、限界が見えてきた包括緩和策のあり方 を十分に議論しなければ、年限長期化や輪番オペの増額、日銀券ルー ルの見直し、付利撤廃、リスク資産の購入拡大には進めないと筆者は みている。

日銀の新体制は視野に入ったが、日銀が経済・物価見通しに基づ き、リスクを点検しながら政策対応するという従来の枠組みはまだ変 わっていない。足元で国内生産の持ち直し、家計マインドの回復、企 業マインドと円安による企業収益の改善を背景に、4月1日発表の3 月短観は景気に明るい材料となるだろう。企業マインドは先行きに向 けて大幅改善、13年度の事業計画では想定為替レートの円高修正によ り、昨年12月時より明るさが増すと見込まれる。

筆者は足元の国内景気動向もフォローの風となり、4月前半に日 銀はすぐに政策対応する必要はない状況とみている。4月のスケジュ ールでは、①18、19日にG20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン)、 ②26日発表の日銀展望レポート、③展望リポートの後に開催される経 済財政諮問会議(金融政策に関する集中審議)が重要である。黒田氏 にとって、①は日銀総裁としての国際会議デビュー、②は市場への説 明、③は政府向けの説明という三段構えでその力量が試され、評価さ れることになろう。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :全員一致で現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年10-12月以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)鉱工業生産など月次の景気指標が上向いており、輸出には追い風 が吹いている。公共事業上積みの効果も13年度前半に出てくる。景気 はリバウンドし、輸出主導の緩やかな回復を模索している。ただし、 株価上昇を背景に「アベノミクス」への期待感が先走りしている点は 気がかり。消費動向調査を見ると消費マインドにもそうした兆候が出 ており、賃金が上がりにくいことなど現実の壁に直面した後で、そう した期待先行の反動が出てくることが予期される。

物価については、「アベノミクス」では物価上昇率2%どころかデ フレ脱却も至難の業だとみている。実物経済における需給バランスの 悪さは相変わらずである。

13)①追加緩和なし、②海外経済金融環境が悪く、円高基調が続く中 で、政治圧力に押されて追加緩和を繰り返した5年間だったと総括さ れる。低い評価をする人が少なくないが、運(めぐり合わせ)が悪か った面があることは間違いない。③黒田氏と岩田氏の間には緩和手法 をめぐる意見の食い違いがある。どのように収れんしていくかが注目 される。

スピード感重視の場合は4月第1回の会合(もしくはそれより前 の臨時会合)で、基金による長期国債買い入れの増額・買い入れ対象 の残存5年以内への拡大を含む追加緩和か。一方、「レジームチェンジ」 をまず行うという意向の場合、追加緩和はそのことや展望レポートと 合わせる形で4月第2回の会合で行われることになるだろう。いずれ にせよ、「リフレ派」の考え方(マネタリーベース上積みによって期待 インフレ率が上昇してデフレから脱却するという見解)は、現実には うまくいかないとみている。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :当面展望できず(2016年後半) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)イタリアを中心とする欧州問題の懸念はあるが、世界経済は緩や かな回復傾向にある。米国ではややバブル的なクレジットブームも始 まっている。FRBのQE3の縮小は、すぐではないものの、市場に その観測が存在する間は急激な円高にはなりにくい。このため当面は 日本企業の輸出は回復傾向が続くだろう。CPIは個別要因もあって しばらくは低迷するが、長期的トレンドとしては需給ギャップ縮小の 動きに続いて、緩やかに上昇するだろう。しかし、2%は遠い。

13)①今会合では景気判断をやや明るくして、政策は現状維持とする だろう。②白川総裁の下で、日銀はデフレ脱却、通貨の信認・国債価 格安定の維持、出口政策破綻の回避を狙うという極めて狭く困難なパ スを通ろうとしてきた。また、国民にとって望ましいデフレ脱却を実 現するには、成長戦略が重要であることも日銀は強調してきた。資産 規模およびリスク資産買入において、実際はかなり踏み込んだ金融緩 和が行われ、その一方で通貨の信認・国債価格安定は崩れなかったが、 デフレに対する即効性はなかったため、一般には日銀の政策は理解さ れなかった。結果として、低成長へのいら立ちの「スケープゴート」 に日銀はされてしまった。より大規模に人的資源を投じて世論対策を 積極的に行う必要があったと思われる。

③新体制では、資産買い入れ等基金での国債買い入れの年限拡大 と買入額拡大を大胆に進めるだろう。リスク資産の購入も拡大すると 思われる。早ければ部分的に4月最初の会合で決定されると思われる。 外債購入はG7、G20で事実上けん制されたこと、黒田氏は為替政策 は財務省の管轄と考えていることから行われない。付利の引き下げ・ 撤廃の可能性は排除できないものの、それは資産買入等基金の積み上 げを難しくするため、円高局面が来るまでは様子見か。なお、それら の政策を行っても持続的な2%インフレの実現は難しいだろう。新体 制は日銀資産膨張のコスト・リスクにいずれ悩み始めると思われる。

●JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :2013年4月26日に付利下げ(2013年4月) 3)利上げ時期 :想定できず(2016年度以降) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.05%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.05%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.05%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.05%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.05%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.05%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.05%(同)

12)昨年11月を底に経済は回復基調をたどっている。内需、特に個人 消費が堅調。昨年の年末賞与が前年割れとなっていたにもかかわらず 消費が堅調なのは、天候要因もあるが家計のマインド改善が寄与して いる。第2四半期からは補正予算の執行も加わり、2013年中の平均成 長率(前期比年率ベース)は2.5-3.0%程度の高い成長率が見込まれ る。一方、物価面では、輸入物価が多少上昇するもののCPIへの反 映は、前年要因の裏要因もあって、限定的。

13)①追加緩和はない。②白川総裁はデフレ克服を目指し、10年10 月には包括的金融緩和を発表して、国債のほかCP、社債、ETF、 J-REITなど他の中央銀行が実施していないリスク資産の買入を 発表するなど画期的な政策を行ったが、市場はFRBの量的緩和に対 して相対的に高い評価を与え「FRBの金融緩和姿勢が勝る」と判断 したことから円高が進行した。同時に、日本の製造業の国際競争力が 低下したこともあって、日本の製造業界からは円高に対する不満が高 まり、結局安倍内閣の誕生とともに、事実上の「金融政策に対する政 治介入」が始まった。

白川総裁は、過剰な金融緩和は過度な相場変動を招来する可能性 が高いと信じ、漸進的な金融緩が望ましいとの立場から、金融緩和策 を実施しても、市場へのメッセージは控え目であった。これに対し、 デフレ回避を信条とするバーナンキ議長は、市場に対するコミュニケ ーション戦術を重視、両者の対応は対照的であった。言い換えると、 白川総裁が中長期的な経済の安定を目指したのに対し、バーナンキ議 長は短期の経済の下振れ回避に重点を置いた政策を行った。その結果、 円高となり、円高に耐え切れない日本経済の下で、金融政策は政治介 入を招き、軍配はバーナンキ議長に上がった。

アベノミクスの金融政策はバーナンキ型の金融政策であり、日米 が協調して思い切った量的緩和を行えば、資産価格の上昇を通じ世界 経済は当面は回復傾向をたどる可能性が高い。しかし、金融緩和の長 期化のもとでの資産価格上昇は、従来の緩和局面同様、何らかの資産 バブルを発生させる可能性が高く、いずれバブル崩壊となるリスクを はらんでいる。いったんはバーナンキ議長に対して上がった軍配だが、 「資産バブル→資産バブル崩壊」が現実のものとなれば、白川総裁の 警告が正しかったことになる。白川総裁の評価は歴史家の手に委ねる べきだろう。

③4月会合で国債買入増額とオープンエンド型買入の前倒し(年 間40兆円ペースの買入)、国債年限の延長(3年→5年)、付利引下げ (10bp→5bp)が決定される見込み。実施時期は、展望レポートが発表 される26日の可能性が高いが、4日に早まる可能性もある。このあと は、国債年限の再延長(10年へ)、ETFの買入増額、輪番オペと基 金による国債買入の統合(日銀券ルールの撤廃)などが順次実行され る可能性高い。マイナス金利も選択肢の一つだ。

この間、より重要となるのは、金融政策の波及経路に関する議論。 日銀の包括的金融緩和では「長めの金利の低下とリスクプレミアムの 縮小を促す」ことを目的としていたが、岩田氏は「当座預金残高を倍 増させる」ことを主張している。当座預金残高目標は2006年までの日 銀の量的緩和時の政策であり、中央銀行バランスシートの資産サイド を重視すると言う世界の中央銀行の潮流とは反する流れだが、日銀は 先祖返りするのだろうか。

また、インフレ目標に関しても、現在の日銀の立場は「目標達成 年限を定めない『フレキシブルな物価目標』」で、これが世界の中央銀 行の標準的な考え方だが、黒田・岩田両氏は2年以内の達成を主張し ている。4月以降の金融政策決定会合では現在の6名の審議委員と、 これらの点を巡って熱い議論が展開されよう。中曽副総裁は「従来の 政策との連続性」をどのように確保するか、腐心するだろうが、果た して接点を見つけ出せるのかどうか、不明だ。

なお、2%の安定したインフレが実現する可能性は低いので、金 融政策は今後かなり長期期間におよび超緩和政策を続け、国債買入を 続けることになろうが、この間、政府が財政赤字削減に本格的に臨ま ないと、国債発行残高は急激に増加し、「日銀による財政赤字ファイナ ンス」が常態化する可能性が高い。それでも、日銀が国債を購入し続 ける限り国債利回りは低位安定だろうが、インフレ率が2%を上回る 状況なると、日銀は引き締めを始め、国債の購入を中断する、あるい は国債売却を開始することになる。この時点で、国債利回りは急騰す るリスクが高まる。現時点で、出口政策を議論することは時期尚早と の批判はあろうが、今後予想される政策のリスクは出口政策である。

●第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :4月4日会合(同) 3)利上げ時期 :当面想定できず(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%(同) 6)13年9月末 :0.00%(同) 7)13年12月末 :0.00%(同) 8)14年3月末 :0.00%(同) 9)14年6月末 :0.00%(同) 10)14年9月末 :0.00%(同) 11)14年12月末 :0.00%(同)

12)経済環境は改善しているが、物価はマイナスを続けている。コア CPIがプラスになるのは5月以降で、ゆっくりと年末にかけてプラ ス幅を拡大させるとみる。

13)①現状維持。②成果が出せなかった。また、日銀も福井時代を上 回るパフォーマンスは得られなかった。リーマンショックを凌いだこ とが手腕か。③三者三様で、何が出てくるかわからない。4月の会合 は付利引き下げ、買い入れ期間延長、14年からのオープンエンドの前 倒しの3点セットを実施するとみられる。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年7-9月以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)今後、追加的に大きな外的ショックがなければ、緩やかながらも 世界経済の循環的な回復は続くと見られ、日本の輸出は円安の追い風 も加わり、回復が続くと予想される。国内では大規模補正予算が成立 し、これも春ごろから総需要を刺激する。循環的には今年前半中にも 景気の回復傾向が鮮明になっていくと予想される。ただし世界経済は 主要各国がそれぞれ構造問題を抱えており、さほど高い成長率は見込 み難い。

欧州では、緊縮財政に対する国民の反発によりイタリアの政局が 不安定化するなど再び下振れリスクが高まっている。また、中国にお いても政策当局は景気浮揚と過剰投資・不動産バブルという問題との 間で難しいかじ取りを迫られている。シャドーバンキング問題は日本 の90年代のノンバンク問題に匹敵する深刻さを抱えている可能性が ある。バランスシート調整が8、9割進捗した米国は比較的堅調だが、 移民流入が滞る中で、少子高齢化問題に直面し始めており、バランス シート問題が完了しても以前のような高い成長に復帰できない。

13)①追加緩和なし、②マクロ安定化政策において重要なのは、最悪 の事態を避ける(最大損失を最小化する)という発想。仮に大きな効 果が期待できる可能性がある場合でも、強い副作用や不確実性が存在 するケースや、出口が困難となるケースは、一国経済を一か八かの賭 けにさらす政策であり、決して採用してはならない。強い政治的プレ シャーがある中で、そうした政策を回避したという点で評価できる。

③新執行部のアグレッシブな金融緩和スタンスを打ち出すために も、就任早々の決定会合において購入対象とする長期国債の年限を現 状の3年から5年へ引上げた上で、13年末までに20兆円程度の長期 国債購入を増額する可能性がある。

岩田氏は輪番の増額に前向きな発言をしている。ただ、購入対象 国債の年限を引上げることで、資産買入基金における買入余地が相当 に高まることを踏まえれば、あえて輪番増額に踏み切る理由もない。 黒田氏もあくまでも先行きの緩和オプションの一つである可能性は否 定しないと見られるが、あえて輪番を増額していくことも選択しない のではないか。

焦点となるのは、輪番増額ではなく、購入対象年限を5年からさ らに一段長期化するかどうかであろう。年限を10年まで長期化すれば、 国債購入規模はさらに拡大可能となる。購入年限の長期化は将来の Exitは極めて困難となるが、当面の決定会合ではExitを語ることは タブーといった「空気」になるかもしれない。

黒田氏は、株式などリスク資産の購入増額についても検討すべき と主張しており、従来通り、ETFやREITを中心にリスク資産の 購入も増額されると見られる。日銀の自己資本が制約になるが、購入 したリスク資産に損失が発生した場合には、政府がその損失をカバー する取り決めが政府・日銀間で行われることになるのではないか。

オーバーナイトの将来予想経路の水準を引下げるべく、フォワー ド・ガイダンス(時間軸政策)の強化も行われる可能性も高い。具体 的には、「2%インフレが視野に入るまでゼロ金利政策を続ける」など、 従来以上に踏み込んだ方針が示されると見られる。

一方、外債購入の議論は封印される。G7、G20では日本の円安 誘導への疑念が生まれており、麻生財務大臣は既に日銀に外債購入を 求める可能性を否定しているが、黒田氏はそもそも日銀による外債購 入に否定的な立場であり、岩田氏もその必要性を論じてはいない。当 座預金への付利引下げの可能性については、黒田、岩田両氏ともに自 らのスタンスを示していない。政策のオプションとしては排除しない と見られるが、大胆な国債購入(それに伴う購入対象国債の年限引上 げ)が新執行部の政策の主軸となる。

デフレ脱却は金融政策だけでは困難だが、アベノミクスの本質は 中央銀行ファイナンスによる積極財政であると見られ、マネタイゼー ション戦略を取るのなら、副作用は強いが(=財政破綻確率の上昇)、 デフレからの脱却は可能。

新執行部にとってデフレ脱却のハードルは高いが、その後も相当 に厄介な仕事が待っている。デフレ脱却のために、今後、日銀はバラ ンスシートを相当拡大させると見られるが、デフレ脱却後にやってく る量的緩和策やゼロ金利政策からのExitに際し、長期金利上昇を避け つつ、いかにバランスシートを圧縮させるかという難題に直面する。

Exitの過程で長期金利に強い上昇圧力がかかれば、公的債務がG DP比200%超まで膨らんだ日本では、財政破綻確率が高まる。そう なると国債を大量に保有する金融機関に問題が飛び火し、金融システ ムリスクが生じる可能性もある。デフレ脱却のために大量の国債を購 入した中央銀行は国債管理政策に組み込まれ、金融システムの安定の ために、物価安定をある程度犠牲にせざるを得なくなる可能性がある。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :4月以降、引き下げる公算あり(同) 3)利上げ時期 :2016年1-3月以降(同) 4)13年3月末 :0.00-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00-0.05%(同) 6)13年9月末 :0.00-0.05%(同) 7)13年12月末 :0.00-0.05%(同) 8)14年3月末 :0.00-0.05%(同) 9)14年6月末 :0.00-0.05%(同) 10)14年9月末 :0.00-0.05%(同) 11)14年12月末 :0.00-0.05%(同)

12)円安や公共投資の拡大などに従い、13年度の実質GDPの伸びは

2.0%前後に回復と予想している。海外は米国が2.0%弱、ユーロ圏は 若干のマイナス成長の見込み(いずれも、2013年)。13年度の消費者物 価指数(除く生鮮食品)の伸びはゼロから若干のプラスにとどまる公算。

13)①追加緩和なし。市場は織り込み済みと見る。ただ新体制発足後 の臨時会合を見込む向きがあろう。②円高是正だけがターゲットでは ないものの、超過準備の付利引き下げや「資産買い入れ等の基金」で 買い入れる長期国債の年限をさらに長期化するなど、市場にポジティ ブ・サプライズを与え、能動的に円安を促すべきだったと考えている。 「基金」の増額だけでは市場の共感を得にくく、そもそも、経済効果 は限定的だったはず。

③評価するというより、「お手並み拝見」としたい。資産買い入れ の拡大がメイン。「基金」を中心とする枠組みの変更(たとえば、輪番 オペとの結合など)もあり得ようが、(イ)「基金」の増額(オープンエン ド化部分の前倒しを含む)、買い入れる資産範囲の拡大、(ロ)「基金」 で買入れる長国の年限を5年以下に長期化、(ハ)輪番オペの増額(含む 「日銀券ルールの一時棚上げの可能性」)-が優先される選択肢。加え て、(ニ)超過準備に対する付利引き下げの公算も残る。

実施のタイミングは4月3、4日から徐々にスタート(初回会合で 全ては揃わない)と予想している。既に起こりつつあるが、長期・超長 期金利の低下は一定の効果と言える。同時に、その後の急反動の可能 性を高く内包するため、それが副作用だろう。マネタイゼーション懸 念は強まり難いと見ている。恒常的な2%の物価上昇は原油価格の急 騰など外的ショックを除けば見込めない。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :引き下げの可能性は低下(2013年4-6月) 3)利上げ時期 :2016年以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%)

12)世界生産と日本の輸出の短期循環的な回復局面は4、5月まで継 続.もっとも米・欧の最終消費需要、欧州の設備投資需要の基調は弱 く、また中国景気も底入れしたが、回復はぜい弱。国内景気も輸出・ 生産の循環的な回復に支えられて上向きつつある。また、足元から再 び公共投資が加速。しかし国内経済は依然としてデフレギャップ状態 にあり、消費者物価に対する上圧力は弱い。このため急激な円安に伴 う輸入価格上昇の転嫁は困難であり、小売業の価格マージン縮小・業 績悪化のリスクは大きい。

13)①追加緩和なし。市場も追加緩和なしを想定しており、直接的な インパクトは小さい。②信用秩序維持を重視した政策運営(金融緩和 の主目的は金融システム安定化であり、デフレ脱却ではない)を行っ てきたわけであるが、これは現行日銀法に極めて忠実な政策運営であ ったといえる。

過去5年の日本の金融システムは極めて安定しており、また金融 システムを将来不安定化させるリスク要因となる資産インフレも起こ さなかった。その意味で、現行日銀法に照らした場合、白川日銀は高 く評価されるべき。円高・デフレ批判の矛先を白川総裁に向けるのは 的外れである。円高・デフレを問題視するのであれば、現行日銀法を 批判すべき。

③国際性重視の人選であり、また出身母体もバランスが取れてお り、全体として妥当ではないか。もっとも、「インフレ・デフレは貨幣 的現象である」というコンセプトに対する考え方については、三者三 様とみられ、一体感を持った政策運営ができるとは限らない。信用秩 序維持を日銀の「目的」とする現行日銀法を改正しない限り、思い切 った金融緩和には限界があるはず。なぜなら、インフレ期待が大きく 高まり、資本逃避が起こり、国債市場が動揺した場合、金融システム にストレスがかかるためである。

したがって、新日銀も期待インフレ率が上昇しすぎないような政 策運営を迫られる。思い切った信用リスク資産の購入は政治的にも困 難であり、政策オプションになりにくい。外債購入は既にオプション から落ちている。やはり長期国債の購入増しかないが、白川日銀との 不連続性を重視するのであれば、国債買い入れオペ(輪番オペ)の増 額を模索するしかないだろう。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :当面なし 3)利上げ時期 :2015年下期以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国経済は、シェールガス関連のエネルギー部門の活発化、住宅 市場の底打ちなどもあり緩やかな景気回復をたどっている。米ISM製 造業景気指数の動きを見ても、50を超える水準での回復が続いており、 回復の足腰は徐々に堅調になっていると考える。この動きに伴い、雇 用情勢も緩やかに回復基調で推移すると予想する。ただ、バーナンキ 議長の発言にある通り、雇用面の回復には時間が必要だ。そのために、 金融緩和策の縮小論は時期尚早だろう。また、債務上限問題の解決な ど米財政に対する懸念は残っており、上下院での協議次第では、今後 の動向次第では回復の腰を折るリスクがある点には注意が必要だ。

わが国の景気は、単月ベースでは昨年11月に底入れしているとみ る。月例経済報告にもある通り、足許では、円安・株高を受けて、自 動車部門などを中心に景況感は少しずつ上向きになっている。ただ、 回復の速度は決して早くはない。また、円安の結果としての家計に対 するインフレ圧力、イタリア動向などの海外での懸念材料、そして、 中長期的にはわが国の財政面に対する懸念など、課題・懸念点は多い。 すでに、金融市場では、黒田総裁体制下での金融政策に対する期待が 盛り上がっているだけに、今後の金融政策の運営が難しくなる面があ るだろう。

13)①白川総裁のもとでの最後の会合であり、基本的には現状維持と みる。②財政ファイナンスへの領域まで踏み込まず、何とか日銀の信 認維持に努めた点は評価されるべきだろう。リーマンショック以降、 政府からの政策協力要請が増える中、各国中銀との連携を取りつつ、 伝統的・非伝統的な金融政策の中で相応に適切な意思決定がなされた と考える。ただ、任期後半に関しては、金融市場に対し「やや対応策 を小出しにした」との印象を与えてしまった。

特に、昨年11月以降の円安・株高の流れを見ると、中央銀行とし て市場とのコミュニケーションを緊密にすることで、日銀の政策意図 を伝えることが出来た可能性はあるだろう。③黒田東彦=総裁、岩田 規久男=副総裁の陣容は、明確なリフレ派への転換を意味する。アベ ノミクスの枠組みの中で、新しい日銀の首脳陣が、市場が期待するよ うな効果を実現できるかが重要なポイントになる。

まずは、インフレターゲット=2%の達成まで、日銀として断固 とした緩和措置をとることを示すことになるだろう。具体的な政策と して、資産買い入れ等基金の増額や、買い入れ対象国債の年限拡大、 さらなるリスク資産の買い取りなどが実施されることだろう。また、 日銀預金の下限金利撤廃についても、いずれ検討されることになるだ ろう。2%のインフレターゲットについては、内需がどれほど回復す るかに依存する部分が大きいこともあり、短期間で金融政策によって 達成することは難しいと考える。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年1-3月にレンジ誘導停止(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国は製造業活動が加速しつつある一方、個人消費が増税の影響 で押し下げられ、全体としてまだ2~2.5%のペースを脱していない。 FRBをQE3出口へと導くには、もう一段の景気加速が必要だろう。 ただし11、12年の春先に見られたような原油価格の高騰が見られず、 米景気回復がとん挫するリスクは低いと見られる。

一方欧州では景気後退を脱していないこともあり、イタリア政局 をきっかけに金融市場の安定に綻びが出てきた。最終的にはECBが救 済に動こうが、それまでには相当の時間を要し、その間市場のリスク オフ、ひいては円高を引き起こし得るリスク要因。

国内では12、1月に景気底入れした可能性が高いが、2%インフ レ目標に向けて動き出す新生日銀は、それにもかかわらず緩和策を打 ち出していくと見られる。結局のところ米国がQE3出口へ本格的に動 き出すまで、日銀の追加緩和姿勢は弱まってこないだろう。

13)①現状維持。②リーマンショック後の経済・金融市場の大混乱期 にあり、金融市場機能の維持のためタイムリー、かつ他国の手本にな る様な綿密な対応をしていた。その一方、混乱期特有のグローバルな 金融緩和・通貨安競争に対し、結果的に受身かつ不十分な対応であっ た。結果、通貨価値は上昇したが、実体経済の構造的な弱さが炙り出 されてしまった。

③リーマンショック後の大混乱期からグローバル経済が徐々に抜 け出し、日本が財政・金融をフルスロットルにして成長戦略を前面に 押し出す好機である。今回の日銀人事はそのための布陣として適任だ。 とは言え奇策(外債購入)まで受け入れるほど国際世論が寛容にはな っていない。金融市場の規模の問題から、国債中心の買い入れになら ざるを得ない。株式などリスク資産の購入もあり得るが、ごく小規模 だろう。

その上で市場心理を仲間に付けるため、日銀券ルールを撤廃した 上で、輪番オペ増額を実施しよう。基金オペを徐々に長期化して短中 期ゾーンの著しい需給ひっ迫を招くよりも、国債市場全般に対象を広 げる方が需給面での影響を緩和できるからだ。その上で13年中の買い 入れを増額することも考えられる。

一方白川日銀の「良い伝統」は引き継ぎ、金融市場機能を維持す ること、バランスシートの拡大を志向することを理由に、0.1%の準備 預金付利は維持するのではないか。技術的には、ターム物オペの下限 金利を外し、固定金利から変動金利へと移行することはあり得る。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし(メインシナリオではないが新体制で可能性も) 3)利上げ時期 :2016年以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(同) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(同) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(同)

12)国内景気の持ち直しの証左が一段と増加している。鉱工業生産は 1月まで2カ月連続で増加、生産予測指数によると2、3月も増加が 見込まれている。生産増加の背景としては、グローバルな製造業サイ クルの持ち直しが指摘できる。一例をあげると、2月の米ISM製造業・ 景気指数は11年6月以来の水準に上昇した。こうした中、1月の日 銀・実質輸出指数は前月比2.2%の上昇と、久方振りに明確なプラス に転じた。

また、消費関連指標に目を転じると、国内乗用車販売台数(季節 調整値)が昨年10月を底に4カ月連続で増加するなど、想定以上に復 調している。今後は、昨年秋以降の円安ドル高と緊急経済対策の効果 (一時的なものであるとはいえ)が加わることで、設備投資も含めて、 景気の持ち直しが一段と鮮明になろう。13年度のGDP成長率の予想は、 1月時点の2.2%から2.4%に上方修正した。

今後、一段の金融緩和措置を受けて、さらに1ドル10円程度の円 安ドル高が進む場合でも、2%の物価安定目標を達成するのは極めて 困難であろう。弊社では、10%の円安ドル高は、食品・エネルギーを 除くCPIを1年目に0.09%、2年目に0.15%押し上げるにとどまると 試算している(ヘッドラインCPIに対するインパクトは1年目が

0.37%、2年目が0.42%)。また、仮に、急激な円安ドル高により高い インフレ率が一時的に実現した場合でも、そのインフレ率が持続する ためには更なる円安ドル高が必要となる(円安ドル高のインフレ率に 対するインパクトは時間とともに弱まる)。

13)①今月20日に発足する新体制の下で「金融政策の仕切り直し」が 見込まれる中、現体制は追加的な政策決定を見送ると予想される。ま た、経済情勢に関しても、循環回復の兆候がより確実なものになりつ つあり、この点も、政策決定を行う上で景気動向を重視する傾向が強 い現体制下では政策据え置きに結びつきやすいだろう。金融市場の関 心は既に新体制下での追加緩和措置に移っており、今回、追加緩和が あれば金融市場はサプライズと受け止めよう。

②白川総裁の任期は08年4月に始まっており、世界金融危機以降 ときれいに重なっている。誰が総裁だったとしても難しい舵取りを迫 られる局面だった可能性が高い。特に、日本は、他の先進国に先駆け て、民間部門のディレバレッジや金融システムの健全化に目途をつけ ていたため、その分、金融緩和が欧米に比べて小規模になりがちだっ た。それに加えて、白川総裁が金融政策の効果の限界をしばしば率直 に指摘したことも、金融緩和のアナウンスメント効果を弱め、円高を 招いてしまった。何か歯車が狂ったままの5年間だった印象が否めな い。

③新体制の下での政策運営は、現体制とは異なり、足許の景気動 向とはほとんど関係なく、2%の物価安定目標の達成を目指して行わ れることになろう。また、新体制のレトリックは、現体制の「2%の インフレ率は容易ではない」から「達成できる・せねばならない」に 180度転換されよう。

具体的には、1)国債を中心とする資産買入れの増額、2)買入れ 対象国債の年限長期化、が当面の政策の軸になるとみられる。文字通 り「従来の次元を超えた金融緩和」(安倍首相)を実行していくのであ れば、これまでのように漸進的に10兆円単位で資産買入れを増額する のではなく、一挙に数10兆円単位(場合によっては100兆円規模)で 増額する可能性が高いだろう。

新体制下での初会合となる4月3、4日の決定会合で、追加緩和 措置が打ち出される可能性が高い。金融市場に対して主導権を握るた めには、4月26日の会合を待つことのリスクは高いだろう。具体的に は、残高方式で行われている13年の基金について10兆円、オープン エンド型の買い入れが始まる14年について計12兆円(月当たり1兆 円)の国債買い入れ増額が決定されると想定している(合計22兆円)。 この場合、14年末の基金残高は133兆円程度となり、今年1月末の67 兆円からは倍増することになる。ただ、「従来の次元を超えた金融緩和」 を演出すべく、これ以上に大規模な基金増額が行われる可能性を踏ま えておくべきだろう。

買い入れ対象国債の年限に関しては、最低でも5年に長期化され ることになろう。資産買入れが効果をもたらす重要なチャネルが、国 債のタームプレミアムを全般的に押し下げ、それを通じてさまざまな リスク資産価格を押し上げることにあるとすれば、買い入れ国債の年 限を3年あるいは5年までに限定する特段の理由はないだろう。現体 制下で年限が3年までに限定されている背景としては、財政ファイナ ンスへの懸念や資産買い入れからの出口戦略が難しくなることへの懸 念があったとみられるが、新体制の下では、年限長期化の便益・コス トのトレードオフに関して、大幅な方針転換が行われる可能性が高い だろう。

ただ、上記の政策措置の下でも、2%の物価安定目標が10年代半 ばに実現する可能性は極めて低い。特に、既に指摘したように、円安 ドル高だけで持続的な形で高いインフレ率を実現するのは困難であろ う。2%のインフレ率を中長期に亘って達成できない場合、新体制の 政策運営に対する金融市場の信任が低下する事態も否定できない。こ の点で、新体制が金融市場とのコミュニケーションをどう構築してい くかが長い目でみて、重要なポイントとなろう。

●バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし(4月にも誘導レンジ引き下げの可能性も) 3)利上げ時期 :2016年以降(同) 4)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 5)13年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 6)13年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 7)13年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 8)14年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 9)14年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 10)14年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 11)14年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%)

12)昨年11月に底打ちした循環が底を固めつつある状況が各種指標で 確認されている一方で、中国を中心としたアジア向け輸出の回復の遅 れは大きなネガティブ材料。中国のPMIが明確に反落してきたこと で、今後も新興国向けの輸出回復の足取りが鈍いものにとどまること が示唆されている。CPIは引き続き下方バイアスが残っている状況 であり、上方にシフトしてくる兆しはまだ見られない。

物価連動債のBEIがこのところ上振れてきていることに注目す る向きもあるが、外国人を中心とした円安、株高のリフレ・トレードが ここにきてこの市場にも及んできている状況。これをもってインフレ 期待の上昇と言ってしまうことは恐らく間違いであり、グローバルな スペキュレーションの一環と捉えるのが正しい。

13)①今回では変更はないと予想。②昨年2月の金融緩和をもって、 日銀の金融緩和は既に劇的に強化されている。外国人の売買がトレン ドを決定する株式市場と為替市場(貿易収支が赤字化して為替市場で は国内実需の影響が薄まった)において、日銀の政策変化が理解され なかったきらいはある。加えて、昨年前半までは為替市場では明らか に「欧州債務危機プレミアム」が円のオーバーバリューを招いていた ため、日銀の金融政策のみで市場センチメントを変えることは難しか った。

そういった点からすると、昨年2月以降の日銀の政策が十分な効 果を発揮しなかったことも致し方のない面がある。もちろん、そうい った逆風の環境下でも、「市場ポピュリズム」に訴えかける手段がなか ったのかという反省は日銀内部でもあるかもしれない。その点を指し て、「市場とのコミュニケーション不足」という批判も当たらないわけ ではない。

ただ、円高、株安という形で昨年までこれだけ日本に不当な圧力 が加わった背景には、そもそも欧米の過剰な金融緩和の影響があるこ とは間違いない。そして、過去数年間にわたる欧米の金融政策の成否 は、長期的な観点からはまだ断定できる段階にはない。日本にはアカ デミズムの世界を中心に、非常にナイーブな米国礼賛、バーナンキF RB礼賛の論調が強いが、こういった論調が長期的かつ歴史的な検証 に耐え得るものかどうか疑問はある。裏返して言えば、白川日銀に対 する評価も、歴史的な評価の中でどのように定まってゆくのかは拙速 に言うことはできないだろう。

③黒田、岩田両氏については、これまでは日銀外部者としての立 場での発言しか聞かれていないのでまだ評価のしようがない。特に岩 田氏に関しては、副総裁に就任してから、金融政策の現実的な執行と その実体経済への波及経路についてどのような議論を展開してゆくの かが非常に興味深い。中曽氏に関しては、金融政策自体の知識はもち ろん、金融システム面についても知識、経験は十分であると思われる。 黒田氏と中曽氏のコミュニケーションが円滑にゆき、政策執行にも生 かされてゆく状況となれば、少なくとも金利市場にとっては安心感が 広がるだろう。

新執行部の下では、長期、超長期債への買い入れ年限の延長を議 論することになるだろうが、輪番オペとAPPとの位置づけの見直し あるいは統合を検討するのではないか。当座預金残高の拡大に重きを 置くスタンスが採られてくる可能性があり、その場合には、付利は維 持される方向だろう。当座預金残高そのものへのターゲット導入はな いまでも、バランスシート規模の拡大を主要政策命題として掲げるの であれば、資金供給オペレーションを円滑に行う目的でやはり付利は 維持するのではないか。その場合、オープンエンドの前倒し云々とい うよりは、実質的なバランスシート規模拡大のペースアップを図るか どうかが大きなポイントになる。ペースアップが長国買い入れ規模の 劇的な拡大につながる可能性もあり、市場インパクトは小さくない。

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