【コラム】伊はカオスを選び、危機が戻ってきた-グリーン

イタリアの議会選挙は、ユーロ圏と イタリア自身にとって最悪の結果になったかもしれない。ユーロ圏3位 の経済大国が数カ月以内に国際的な支援を必要とする危険が今や現実味 を帯びてきた。しかも救済を要請し、条件を交渉する政府は事実上不在 となる見通しだ。疑いがあるといけないのではっきり言うが、ユーロ圏 の危機が戻ってきたのは明らかだ。

イタリアの政治制度では、政府が何を行うにも上下両院の支持を必 要とするが、民主党のベルサニ党首を中心とする中道左派も、ベルルス コーニ前首相率いる中道右派陣営も両院で過半数を確保できなかった。

イタリアがユーロ圏に残留すべきかどうかを問う国民投票を求めて いるベッペ・グリッロ氏の「五つ星運動」が25%の票を獲得し、主要な 政治勢力として台頭したことはさらに気掛かりだ。

いずれの政党連合も安定多数を確保できない結果を金融市場は織り 込んでいなかったため、イタリア資産の価格は選挙後に急落したが、そ れが今後も続き、同国の借り入れコストを押し上げる可能性が高い。イ タリアでは再選挙の実施がほぼ確実であり、いつ行われるかだけの問題 だ。政権発足に向けて4つのシナリオが考えられる。

モンティ暫定首相が率いる中道勢力と、緊縮路線の継承を約束する ベルサニ氏の中道左派が上院で過半数に届かないまま少数連立政権を樹 立し、ベルルスコーニ陣営が特定の法案通過と引き換えにこれを支持す るというのが最初のシナリオだ。抜け目のない不安定な駆け引きであ り、ベルルスコーニ氏は思い通りにならないと感じた途端に支持を撤回 することが予想される。

いずれの枠組みも崩壊か

中道左派と中道右派による大連立が2つ目のシナリオだが、ベルサ ニ氏の盟友である「左翼・エコロジー・自由」(SEL)のベンドラ党 首が既にその可能性を否定。3つ目のシナリオであるベルルスコーニ陣 営と五つ星運動との連携は、実現の確率が最も低い。

最後に想定されるのが、ベルサニ氏の中道左派とモンティ氏の中道 勢力に五つ星運動が加わるシナリオだ。グリッロ氏は選挙戦を通じて、 既存の他の政党と連携しないと公言しており、この約束を守るかもしれ ない。しかし、グリッロ氏が心変わりしたとしても、ベルサニ氏とモン ティ氏が構造改革と緊縮策を推進するのを黙って傍観しているとは考え られず、この枠組みも不安定なものになるだろう。

これらの想定される連立政権は、債券市場のほか、イタリアが救済 を要請する場合に債権者となるドイツや国際通貨基金(IMF)、そし て欧州中央銀行(ECB)が望むような歳出と雇用市場、製品市場の改 革実行が政治的に不可能という点で共通しており、いずれの枠組みもす ぐに崩壊することが予想される。

「緊縮疲れ」は重症

イタリアでは議会を解散し、再選挙を実施する権限のあるナポリタ ーノ大統領の任期満了が近づいており、後継者選出のために議会を招集 する必要がある。再選挙を可能にするには、議会がまず新大統領を選ば なければならない。新議会はまた、選挙法の改正を目指す可能性が高 く、これは中道左派と中道勢力、五つ星運動が一時的に連携すれば、成 立はかなり容易なはずだ。

イタリアの債務は国内総生産(GDP)の126%に達し、このう ち2730億ユーロ(約33兆円)相当の償還期限が年内に訪れる。新大統領 を選び、選挙法を改正し、再選挙を実施して新政権を発足させるには時 間がかかる。投資家の間ではこの間、イタリアの債務返済能力をめぐる 懸念が高まるだろう。

イタリアの有権者は、自国の債務安定に必要な改革を実行できる政 権に実権を委ねることを拒んだだけではない。約半数が反緊縮を主張す る勢力に投票した。イタリアの「緊縮疲れ」は明らかに症状が重い。

重大なリスク

イタリア国債の購入がリスクを取るに値しないと投資家が判断し、 イタリアが債券市場から締め出されるような場合、政府は通常であれ ば、ユーロ圏の恒久的救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM) に支援を要請し、ECBの国債購入プログラム「アウトライト・マネタ リー・トランザクション」(OMT)を利用することも可能だ。

だが、これらのメカニズムの適用を受けるには、これまで推進して きた以上に厳しい構造改革と財政目標の受け入れがイタリア政府に求め られる。発足した政府がこれまでの改革を前進させることさえおぼつか ないとすれば、信頼できる形でより厳しい改革を約束することなど不可 能だ。救済条件の不在は、ESMとECBの国債購入へのアクセス不能 を意味し、市場から締め出される場合には、イタリアはデフォルト(債 務不履行)に直面する恐れがある。

イタリアで再選挙が行われるまでには、これだけの重大なリスクが 存在する。再選挙では、ベルルスコーニ前首相の陣営、さらに悪いケー スでは、五つ星運動が過半数を獲得することすらあり得る。厳しい試練 がイタリアとユーロ圏に今後何カ月も続くことは間違いない。(ミーガ ン・グリーン)

(マベリック・インテリジェンスのチーフエコノミストで、ワシン トンのアトランティック・カウンシルの上級研究員も務めるミーガン・ グリーン氏は、ブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラ ムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Italy Votes for Chaos and the Euro Crisis Is Back: Megan Greene(抜粋)

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