ニクソン・ショック以来の円高「終わった」、ドルは盤石-内海元財務

内海孚元財務官は、ニクソン米大統 領が1971年8月に金とドルの兌換(だかん)を停止した「ニクソン・シ ョック」から昨年まで続いてきた円相場の「長期的な右肩上がりはもう 終わった」との見解を示した。20年以上前に起きた共産主義圏の崩壊が 構造変化の主因だとしている。

日本格付研究所社長の内海氏(78)は昨日のインタビューで、安倍 晋三首相の大胆な金融緩和要求が円高是正を加速したのは確かだが「長 期的にはソビエト連邦圏の崩壊が最大の理由だ」と強調した。市場経済 が10億人規模から約5倍に膨らむ中、「一次産品価格が需要増で上昇す る一方、製品価格は安価な労働力の流入で下落傾向にある」と指摘。日 本は一次産品を輸入し、付加価値を付けた製品を輸出する加工貿易国な ので「交易条件が長期的に悪化していく」と説明した。

円とは対照的に、ドルを取り巻く環境は好転していると、内海氏は 指摘。高い労働生産性を背景とした製造業の米国回帰や、シェールガ ス・オイル革命によるエネルギー純輸出国化の期待、日中欧よりは穏や かな人口高齢化を理由に挙げた。「米国の覇権は揺るがない。ドルの地 位はなお盤石だ」と強調。「アベイラビリティはまさにドルの強みだ。 相場水準も大きな下落は考えにくい」とも述べた。

71年のニクソン・ショック起きる前まで1ドル=360円で固定化さ れていた円の対ドル相場は、同年12月のスミソニアン協定で308円に切 り上げられた。73年からは変動相場制に移行し、円は2011年10月末に戦 後最高値75円35銭を記録した。しかし、デフレ・円高からの脱却を目指 す安倍内閣の下、日本銀行は1月に2%の物価目標を導入。2月25日に 円は94円77銭を付けるなど、3カ月余りで2割近く下落した。

内海氏は、ユーロには「明るい未来がある。マイナス成長に陥って も非常に正統派の金融政策を堅持している」と評価。現状での使い勝手 はドルに及ばないが「長期的には信認が向上し、次第にドルとユーロが 併存する2つの基軸通貨体制になっていく」と予想した。一方、中国の 通貨人民元については「まだニクソン・ショック以前の通貨だ。兌換性 すらない」と発言。「アジアはドル圏だ」と語った。

政府は昨日、今月19日に辞任する白川方明日銀総裁の後任に、内海 氏より5代後の財務官を務めた黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁 を提示した。

内海氏は83年から86年までワシントンの日本大使館で大蔵省(現・ 財務省)出身の公使を務め、日米円・ドル委員会やドル高是正で米英独 仏と合意した85年9月のプラザ合意などをめぐり、米財務省との実務交 渉を担当。過度なドル安に歯止めをかける87年2月のルーブル合意時に は国際金融局長、89年から91年まで財務官を務めた。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE