米JPモルガンが投資銀行番付で首位-業界「復活」の予感

投資銀行業界が復活する日は、どう やら近い。低成長と人員削減、報酬カットに苦しみ、国民の批判も浴び た長く厳しい5年間を経験してきたが、データを信じる限り、復活の兆 しはどうも本物だ。

企業の合併・買収(M&A)を手掛けるディールメーカーによれ ば、M&Aや株式発行が今年持ち直す機が熟していると、あらゆる経済 統計が示唆している。

しかし、バンク・オブ・アメリカ(BOA)のトップ・インベスト メントバンカーの見通しは慎重だ。法人・投資銀行グローバル責任者、 クリスチャン・マイスナー氏は、「まさにそのような年になると言い切 るにはためらいがある。必ずしもそうならない可能性があるからだ。た だ、変化が訪れるのはかなり近いと思う」と話す。ブルームバーグ・マ ーケッツ誌4月号が報じた。

インベストメントバンカーにとって、この5年間はつらい日々だっ た。ブルームバーグのデータによると、M&Aの成約は2007年に金額ベ ースで4兆1000億ドル(現在のレートで約380兆円)のピークを付けて 以降急減。昨年は持ち直した時期もあったが、通年では8.7%減の2 兆2000億ドルにとどまった。

もっとも、12年に入ってからは時間の経過とともに希望が持てる兆 候も表れた。ギリシャとイタリア債市場は10年や11年ほどには暴落せ ず、米国がデフォルト(債務不履行)の瀬戸際に追い込まれることもな かった。それでも、企業のトップは内部留保をため込んでいる。

JPモルガン・チェースの法人・投資銀行部門のマイケル・カバナ ー共同最高経営責任者(CEO)は、「昨年は取締役会が大胆な戦略案 件に取り組める状態ではなかった」と振り返る。

M&Aはゴールドマン

JPモルガンはブルームバーグ・マーケッツ誌が実施する9回目の 投資銀行手数料収入年間ランキング「ブルームバーグ20」の総合番付で トップとなった。昨年の手数料収入は39億7000万ドルと、前年比 で24.8%増。過去5年のうち4回首位となった同行は今回、総合番付に 加えて、債券と株式の番付でも1位だった。11年の首位だったゴールド マン・サックス・グループは総合順位で2位と順位を下げたが、M&A 番付は集計開始以来のトップの座を守った。

業界全体の手数料収入は、M&Aと株式発行では減少したものの、 全体では509億ドルと3.7%増えた。企業の借り換え急増が寄与した。

ダウ工業株30種平均が2月1日に07年以来初めて1万4000ドルの大 台に乗せたにもかかわらず、企業の経営幹部は相変わらず弱気だ。銀行 関係者によれば、CEOらは結果的に資金を使わずに残しておく方を選 んでいる。

バフェット氏は待てない

世界全体の企業の手元資金は昨年9月末時点で過去最高の1兆5000 億ドルに達した。米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を4年余 りゼロ近くに維持し、米経済に数兆ドルの資金も注入した。市場は流動 性が潤沢で安定しており、投資家は高利回り資産の投資先を懸命に求め ている。

昨年の手数料収入番付で5位(31億6000万ドル)に順位を一つ落と したBOAのマイスナー氏は、「M&A活動の推進力という観点から統 計を見ると、M&A市場の活況を思い浮かべるだろうが、実際はそうな っていない。システミックリスクが多少後退するまで待っても問題ない と多くのCEOは感じているようだ」との見方を示す。

米パソコンメーカー、デルのマイケル・デルCEOや資産家のウォ ーレン・バフェット氏はそれを待たずに動き出している。デル氏とプラ イベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社シルバーレーク・マネ ジメントは2月5日、244億ドル相当の買収を通じてデルの株式を非公 開化すると発表。これは07年以降で最大のレバレッジド・バイアウト (LBO、買収先資産などを担保にした借り入れによる買収)となっ た。

債券市場のおかげ

一方、2月14日にはバフェット氏がブラジルの富豪と組んでケチャ ップメーカーの米ハインツを230億ドルで買収することが明らかになっ た。米リバティ・グローバルによる英ケーブルテレビ(CATV)事業 会社ヴァージン・メディア買収という大型案件も2月に公表された。

昨年は債券引き受けの上位行が手数料収入全体でも好調だった。債 券が手数料収入全体に占める割合は37.7%と、前年の27.7%から拡大。 低い資金調達コストを確定させようと企業が起債を急ぐ中で、社債発行 額は過去最高の3兆6900億ドルを記録した。JPモルガンは債券引き受 け業務の手数料収入が前年比43.8%増の15億1000万ドルとなり、競合行 を大きく引き離した。

ドイツ銀行のグローバル投資銀行共同責任者ポール・シュテファー ニク氏によれば、低い債券発行コストこそが昨年の株式発行額の減少を 説明する理由の一つだ。同氏は「株式市場が悪かったのではなく、債券 市場はそれに代わるはるかに良い投資先だった」と分析する。

楽観的機運

債券市場が堅調でなければ、投資銀行にとって考えるのも恐ろしい 年になっていただろう。株式発行の手数料収入は3.9%減の146億ドルに とどまり、M&A手数料も171億ドルと15.8%落ち込んだ。これに対 し、債券発行の手数料は192億ドルと41%急増した。

バンカーらは目先、デルやハインツなど今年初めのM&Aの背景に ある楽観的な機運が持続することを期待しており、米政府と議会が自動 的な歳出削減を回避できないといった新たな危機の発生によって、M& Aの勢いが損なわれることがないよう切に願っているはずだ。

原題:JPMorgan No. 1 Investment Bank as Flurry of Deals Spurs Optimism(抜粋)

--取材協力:Laurie Meisler、Lee Spears、Matthew Leising、David Welch.

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