「黒田日銀総裁」案を提示、政府-安倍首相の異次元緩和を推進

日本政府は28日、黒田東彦アジア開 発銀行(ADB)総裁を日本銀行総裁に起用する人事案を国会に提示し た。異次元の金融緩和を求める安倍晋三首相の意向が反映され、副総裁 に岩田規久男学習院大学教授と中曽宏日銀理事を充てる案も示された。

衆参両院の議院運営委員会理事会が人事案についての資料を配布し た。財務省の元財務官で円売り介入を手掛けた黒田氏(68)は、日銀の 年内の追加金融緩和は正当化できるだろうなどと述べている。金融緩和 による緩やかなインフレで景気立て直しを目指すリフレ派の岩田氏と日 銀から内部昇格する中曽氏が黒田氏の脇を固める。

この人事案は国会で同意される見通しで、安倍首相が進める経済活 性化策である金融・財政・成長戦略の3本の矢のうち、金融を担う日銀 の体制が刷新されることになる。与党の自民・公明両党は過半数割れし ている参院で野党の協力が必要だが、黒田、中曽両氏には民主党で容認 論が出ており、岩田氏もみんなの党と新党改革が賛成する方針だ。

元経済財政相の竹中平蔵慶応大学教授は、黒田日銀総裁案について 「長期にわたり適切でなかった金融政策が適正化される非常に大きなチ ャンスだ」と述べた。その上で「財務省出身者の中では異色で国際機関 の長をやっていたのも大きい。国際的な発信力に期待している」などと ブルームバーグ・ニュースのインタビューで27日語った。

採決日程は決まっていないが、衆院事務局の資料によると、国会同 意人事案は1998年6月9日の衆院議運委理事会で「政府は議決が必要と される時までに10日程度の余裕をもって内示するよう努める」との申し 合わせがあるという。仮にこの規定を適用すれば本会議での採決は3 月11日以降になる。

所信聴取

日銀の正副総裁の任期は5年。山口広秀、西村清彦両副総裁は3 月19日に任期満了となる。白川方明総裁の任期は4月8日までだった が、副総裁と同時に辞職する意向を安倍首相に伝えている。

政府の人事案提示を受けて衆参両院の議院運営委員会は、黒田、岩 田、中曽3氏の所信を聴取する。その上で両本会議に人事案が提出され て採決されることになる。民主党の渡辺周衆院議運委理事は記者団に対 し、来週中に聴取を行う方向で、与野党が調整していることを明らかに した。民主党など野党側は十分な時間を確保し公開で聴取するよう求め ているという。

民主党の海江田万里代表は記者会見で、政府提示の日銀人事への対 応について「いたずらに長引かせることはしない」と述べた。その上 で、党のガイドラインに照らして適任かどうか議論し、党幹部で構成す る「次の内閣」で結論を出すとの方針を示した。いずれにしても3月15 日か遅くても18日までに結論を出したいとの意向を明らかにした。3氏 への論評は控えた。

無制限の金融緩和を、と黒田氏

黒田氏は1944年福岡県生まれ。67年東大卒、大蔵省(現財務省)入 省、99年財務官、05年からアジア開発銀行総裁。1月11日に都内で行わ れた景気討論会では、日銀は物価上昇率が2%に達するまで無制限の金 融緩和を行うべきだと主張している。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長も、米下院金融委 員会での質疑応答で27日(米国時間)、日銀について「慎重過ぎた」と 指摘、日本について「最も顕著な事実は、デフレに陥りかなり長期にわ たり物価が下がっているということだ。これは金融政策が物価の安定性 を達成できていないことを示唆する」と語った。

金融政策については日銀の木内登英審議委員が28日、横浜市内での 講演で「必要に応じて追加的な緩和措置を果断に講じることを検討す る」ことを含め、2%の物価目標の実現に向けた政策運営に「責任を持 って取り組んでいく」と述べた。

岩田、中曽氏

岩田氏は42年大阪府生まれ。66年東大卒、98年学習院大教授。90年 代前半に翁邦雄元日銀金融研究所長との間で、マネタリーベースなど量 的指標の操作は可能だとして、操作できないという翁氏と「翁・岩田論 争」を繰り広げた。過去に「インフレ目標付きの長期国債買い切りオペ 増額」を提案するなどインフレターゲット導入論者の急先鋒でもある。

中曽氏は53年生まれ。78年に東大経済学部を卒業して日銀に入 行。97、98年の金融危機当時に信用機構課長を務め金融システム問題に 精通しているほか、英語も堪能で日銀有数の国際派でもある。08年11月 に日銀金融市場局長から理事に就任した。

--取材協力:乙馬真由美、河元伸吾、氏兼敬子、藤岡徹、日高正 裕、Isabel Reynolds Editors: 杉本 等, 上野英治郎

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