全住民DNA解析計画の欧州フェロー諸島、倫理問題に揺れる

英スコットランドとアイスランドの 中ほどに位置するデンマークの自治領、フェロー諸島は人口約5万人。 吹きさらしで土地は狭く、魚類と羊以外はほぼ全てを輸入している。そ の島々が今、遺伝医学の最先端を目指している。

提案されている計画では、漁師や首相ら住民全ての全DNA配列を 解析し、そのデータを治療と研究に活用する方針。科学者らは既にフェ ロー諸島がヒトゲノム利用のモデルの一つになるとみている。

米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の遺伝学者、ジェームズ・ エバンス氏は「この新技術が個々の患者や住民にとって有益かどうかを 判断するため、今は手探りの状態だ」と説明。「適切に実施することが 非常に重要だ」と語る。

フェロー諸島での計画はプライバシーや所有権、患者個人の全 DNA配列を日常の医療的判断に活用する実用性について議論するきっ かけとなり、倫理問題を検討する試金石となりつつある。情報保護の方 法や利用の時期、精神疾患や遺伝性疾患のある人々への差別を助長しな いかなど問題は多岐にわたる。

エバンス氏は「遺伝子の全配列が解析されれば知りたくないことま で知らざるを得なくなるという現実に対処しなければならないだろう。 治療や予防が不可能な重症疾患の原因となる突然変異の発見につながる のは間違いない」と話す。同氏はフェロー諸島のプロジェクトには関与 していない。

DNA解析の迅速化と費用低下により生物学的研究や医学は変化を 遂げている。数千人のDNA解析が始まれば、まれな疾患や一般的な疾 患の原因究明に向け新たな手掛りが得られる可能性が高い。フェロー諸 島には9世紀にバイキングが入植。土地が狭く隔離されているため遺伝 性疾患が比較的発生しやすい環境となっている。

原題:Faroes’ 50,000 Residents Leap Into DNA Testing Ethical Quagmire(抜粋)