円が全面高、日銀総裁人事や政府の外債購入への消極姿勢で

東京外国為替市場では円が主要16通 貨に対して全面高となった。日本銀行の次期総裁人事をめぐる観測や外 債購入に対する政府の消極的な姿勢を背景に円買いが進んだ。

ドル・円相場は午後に円が一段高となり、一時1ドル=93円14銭 と、3営業日ぶりの円高値を付けた。午前は日本銀行の白川方明総裁の 後任人事で元財務次官の武藤敏郎大和総研理事長が候補から外れたとの 一部報道を受けて、円売りが先行。93円83銭まで円安が進む場面も見ら れていた。午後5時15分現在は93円34銭付近で取引されている。

安倍晋三首相は20日午後の参院予算委での答弁で、官民外債ファン ドについて、必要性は相当薄まってきていると発言。また、麻生太郎財 務相も外債を購入する気はないと述べた。

みずほ証券の鈴木健吾FXストラテジストは、武藤氏が日銀総裁候 補から外れるとの一部報道があったものの、岩田一政前副総裁と武藤氏 の間で二択になるとの観測もあると指摘。麻生財務相の外債購入否定発 言からすると、外債購入を提唱している岩田氏の起用にも疑問符が付く とし、「暗に武藤氏起用の方向になっているような雰囲気も強まってい る」と言い、円の下値を堅くしていると説明する。

ユーロ・円相場は、午前に一時1ユーロ=125円90銭と、2営業日 ぶりの円安値を付けたが、午後は124円90銭まで円が値を戻す場面も見 られた。

日銀総裁人事は大詰め

20日付の読売新聞が情報源を示さずに伝えたところによると、みん なの党が日銀総裁への財務次官経験者の起用に反対していることなどか ら、武藤氏は候補から外れたとの見方が出ているという。同紙は前日銀 副総裁の岩田一政日本経済研究センター理事長、学習院大学の岩田規久 男教授、元財務官の黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁、東京大学 大学院の伊藤隆敏教授(元副財務官)の4名に候補は絞られたとの見方 が有力だと報じている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作シニア為替・債券 ストラテジストは、金融緩和の踏み込み度合いでいくと、武藤氏はほか の候補者と比べて「マイルドなハト派」というイメージがあり、同氏が 総裁候補から外れるとなると市場の反応は円売りになると説明。ただ、 総裁人事も「今日のアジアタイムで決着がつくものではない」と言い、 海外時間に注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表も控 えて、目先は「現行水準を挟んで、94円台に乗せると上値が重いが、93 円に近づいてくると下値も堅いというイメージ」としている。

一方、午前に発表された1月の貿易統計によると、貿易収支は1 兆6294億円の赤字。赤字額は過去最大に拡大し、ブルームバーグ・ニュ ースがまとめた市場予想の1兆3796億円も上回った。みずほ証の鈴木氏 は、過去最大の貿易赤字を背景に「中長期的な圧力としては、円安にか かっていく」と指摘。円安トレンドは「まだ壊れていない」とし、ド ル・円相場は引き続き94、95円を目指す流れにあるとみる。

FOMC議事録

この日の米国時間には、連邦準備制度理事会(FRB)が1月の FOMCの議事録を公表する。同会合の声明では、「労働市場の見通し が大幅に改善されない場合」、資産購入を継続する方針が示され、失業 率が6.5%を上回り、インフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限 り、政策金利をゼロ近辺にとどめる考えも維持された。

みずほ証の鈴木氏は、「FRBは緩和的な政策を維持し、労働市場 に対して警戒の手綱は緩めないと思われるが、中長期的にはこれまで拡 大一辺倒だった量的緩和などの手段の縮小に年内にも入る可能性は残 る」と説明。そうなってくると、出口戦略が意識され、ドル買いからの 円売り圧力がかかる展開もあり得ると見込んでいる。