円一段高、G20警戒や日銀人事めぐる観測で買い圧力

東京外国為替市場では、円が一段高 の展開。対ドルでは一時1週間ぶりの高値を付けた。20カ国・地域 (G20)財務相・中央銀行総裁会議を間近に控えて、各国の当局者から 通貨安競争に対する懸念が示されるとの警戒感を背景に円買い圧力がか かった。

ドル・円相場は朝方に1ドル=93円12銭を付けた後、円がじり高と なり、午前は92円台後半を中心に推移。午後には、日本銀行の次期総裁 人事をめぐって、元財務事務次官の武藤敏郎氏起用の可能性が一部で報 じられると、今月8日以来の円高水準となる92円25銭まで円が急伸し た。午後3時37分現在は92円65銭付近で取引されている。

IG証券のマーケットアナリスト、石川順一氏は、G20前で通貨安 戦争をめぐって各国から円安への批判が強まっているとし、「警戒感か らこれから円売りを仕掛けにくい」と指摘。また、日本株安でリスク回 避の円買い圧力が強まった面もあると付け加えた。

ユーロ・円相場は朝方に付けた1ユーロ=124円39銭から円が水準 を切り上げ、午後には一時123円20銭と、1月31日以来の円高値を付け た。午後3時48分現在は123円98銭付近での推移となっている。

G20や日銀人事観測で円乱高下

15日から2日間の日程で開かれるG20会議の議長国を務めるロシア のシルアノフ財務相は14日、共同声明で従来よりも「具体的な」文言で 為替相場への介入に反対する立場を示すべきだと表明。その後、15日に は同国のストルチャク財務次官が共同声明には「通貨戦争」との文言は 盛り込まれないとの見通しを示した上で、日本に関する個別のステート メントもないと述べている。

欧州中央銀行(ECB)は14日公表した月報で、「物価見通しへの リスクは引き続き、中期的におおむね均衡しているとみられるものの、 経済活動の弱まりと、最近に関してはユーロ相場の上昇」による下振れ リスクがあると分析した。外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧 問は、ユーロ圏景気が引き続きさえない状況下で、フランスを中心にユ ーロ高懸念がくすぶっており、G20ではブラジルなど新興国も含めて 「円安批判が出てくる可能性は十分にある」と指摘する。

自民党の山本幸三元経済産業副大臣は14日、ブルームバーグ・ニュ ースのインタビューで、各国が金融緩和による通貨安競争を展開するこ とは世界経済全体の成長に資するもので、まったく問題ないとの認識を 明らかにした。また、ドル・円相場については95円から100円程度が適 正水準との見方も示した。

楽天証券の相馬勉債券事業部長は、通貨安戦争をめぐっていろいろ な人がいろいろなことを言っているが、世界的に景気回復しないことに はいかんともし難いというところで、G20で日本が名指しで批判される 可能性は低いとみる。

一方、ロイター通信が複数関係者の話を基に伝えたところによる と、政府は日銀の次期総裁人事で、武藤氏を中心に一段と絞り込みが進 んでいるもよう。ウエストパック銀のシニア通貨ストラテジスト、ショ ーン・キャロー氏(シドニー在勤)は、武藤氏について、「他の総裁候 補と比べてハト派色が弱いと見られていることから、ドル・円の下押し につながった」と説明している。

ただ、日銀の正副総裁人事は衆参両院での同意が必要なため、自 民、公明の連立与党が参院で過半数に満たない「ねじれ国会」では、一 部野党の賛同を得る必要がある。みんなの党の渡辺喜美代表は14日、総 裁人事について、黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁や武藤氏ら財 務省出身者の起用には反対する考えを明らかにしている。みんなの党は 参院の会派に12人を擁しており、野党内では民主党(87人)に続く勢 力。

外為オンラインの佐藤氏は、緩和方針の強弱はあるものの、「誰が なっても基本的に現行の政策を推進することは間違いない」と言い、 G20でそれほど大きな円安批判がなければ、「円安トレンドは崩れな い」とみている。

--取材協力:Mariko Ishikawa、小宮弘子. Editors: 崎浜秀磨, 青木 勝