「四季報」が在庫切れ、投資熱上がる個人-証券にも電話殺到

1936年の創刊以来、日本株投資家の バイブルとされてきた「会社四季報」の新春号(2012年12月発売)が、 在庫切れになっていることが分かった。昨年11月以降の相場上昇を背景 に、個人投資家が市場に回帰、株式投資熱の盛り上がりを象徴する現象 だ。

「四季報」発行元の東洋経済新報社によれば、新春号の部数は非公 表ながら、秋号(12年9月発売)と比較し50%増えた。ブルームバー グ・ビジネスウィークが2月18日号で伝えている。掲載銘柄数を絞った 入門版である「会社四季報プロ500」の新春号は、03年の販売開始以降 で初めて完売。日本経済新聞社広報グループによると、「日経会社情 報」新春号の売れ行きも好調という。

前首相による衆院解散宣言があった昨年11月14日以降、安倍政権の 誕生や日本銀行の積極的な金融緩和策への期待が高まり、TOPIXは 2月12日までに34%上昇。東京証券取引所が公表する投資部門別売買動 向によると、外国人の買いと並び個人の売買も活発化し、昨年11月 に22%だった日本株の売買代金に占める個人のシェアは1月に31%に上 がった。

ネット証券最大手のSBI証券の公表データでは、1月の同証経由 の月間売買代金は7兆6142億円と、昨年12月の1.9倍に拡大。顧客満足 度で証券業界1位の松井証券によると、稼働口座の増加数は昨年10月 の542に対し12月は1万6808、1月も1万5351に急伸している。

東洋経済営業推進部の加藤正俊副部長は、「アベノミクスで株価が 上昇していくとは思っていたが、ここまで活況になるとは予想できなか った。個人投資家や企業担当者、全国の書店からの問い合わせが非常に 多い」と述べた。新春号は増刷しないが、3月に発売する春号は例年よ り多めの部数とする方針だ。

ライブドアショック以前の水準

日本橋・兜町で金融関連の書籍を専門に扱う雄峰堂書店では、四季 報新春号を400部入荷したが、店頭に並べてある30部を除き完売した。 9月の秋号は、100部以上が売れ残った。外商チーフの森山篤氏は、チ ャート分析の週刊誌や株の専門書も良く売れており、「これだけ売れて いるのはライブドアショック前の05年の相場以来」と言う。

同書店で株式関係の雑誌を読んでいた60代の八馬紀子さんは自社株 投資で200万円損をした苦い経験があるが、約10年ぶりに株購入を計画 している。「普段はマーケットを見ているわけではないので、株のこと はほとんど分からない。百貨店など株式優待のある株に興味がある」と 話した。

証券会社も大忙し

大手証券会社の間でも、個人投資家の日本株への回帰現象が見られ る。野村ホールディングス広報担当の山下兼史氏によると、同社が12月 に全国177店舗で行った日本株に関するセミナーには約5万人の応募が あり、前年に比べ約8割増えた。

大和証券グループ本社の広報担当である見沢広治氏によると、180 人のスタッフを抱える東京・東陽町の同社コールセンターでは「足元の 活況を受けて、個人投資家からの問い合わせが増え、電話が鳴りやまな い状況」という。2月の新規顧客や取引再開を希望する顧客の問い合わ せは1日当たり300件と、11月に比べ5割増。同社のオンライントレー ド専用の信用取引サービスの信用残は11月の約900億円から2月は2割 以上増加し1100億円を突破した。

株式投資歴40年で約500万円を運用する岡田和夫さん(64)は、14 年までに日経平均株価が1万8000円まで上昇すると強気の見方だ。「株 式市場への資金の入り方が異常。これまでは売り買いを繰り返していた が、今は買って持っているだけでどんどん上がる」と話していた。

「トレンドは続く」

雄峰堂の森山氏は、国内新興市場の代表的指数のジャスダック指数 が最高値を付けた06年1月のライブドアショック直前には、夫婦で株関 係の本を買いにくる客もいて、店内の雰囲気が従来と明らかに違ってい たと振り返る。「そうなると、そろそろ上昇相場が終わる兆候」だが、 足元の相場は「その段階には来ていない」と感じている。

社団法人出版科学研究所の柴田恭平研究員は、「去年の政権交代以 前は経済誌の売れ行きは低調だった」が、それ以降は特に投資や株式関 連などの雑誌の売れ行きは目覚ましく、通常は6割以下の実売率が8割 を超え、「作り手の予想を超えた」と話す。柴田氏は「アベノミクスに よる株価上昇が原因で、このトレンドはしばらく続く」とみている。

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