日本株の信用取引活発、規制緩和乗り代金2倍-損益好転拍車

日本株市場で、信用取引を通じた売 買が急拡大中だ。ことし1月からの規制緩和で、同一資金で1日に何度 でも回転売買できるようになったため。安倍政権の経済運営を期待する 株高の恩恵も加わり、信用買い建てを行う個人投資家の含み損益率は7 年ぶりにプラス転換、日本株の盛況に拍車を掛ける。

大手インターネット専業証券が公表した1月の月間売買実績を見る と、SBI証券の1月の信用取引売買代金は1日平均で2698億円と昨 年12月に比べ2.2倍に膨らんだ。マネックス証券とカブドットコム証券 の信用取引約定件数は、前月比で1日当たり約5割増えた。

松井証券では、1月の信用取引売買代金が前月比2.4倍の1兆4554 億円と2007年2月(1兆6449億円)以来、5年11カ月ぶりの高水準に拡 大。一方で、現物取引の売買代金は同1.5倍の6403億円だった。同証の 窪田朋一郎マーケットアナリストは、1月から始めた信用取引の金利と 手数料をゼロにする一日信用取引サービスの効果が大きいとし、「大口 の投資家はコストゼロで取引し放題なので、デイトレーダーにとってこ れ以上の条件はない」と話している。

東京証券取引所など全国の証券取引所は、1月1日付で信用取引の 規制を緩和した。従来は、反対売買で持ち高を解消しても、3営業日後 の受け渡し前までは委託保証金が拘束され、その期間に再び取引するに は新たな資金担保が必要だった。しかし、今年初からは「保証金に関す る内閣府令」の改正を受け、購入株を売れば3営業日の経過を待たず、 即座に同じ担保を次の取引へ回せるようになった。担保の範囲内なら、 1日に何度でも売買できる仕組みだ。

資金回転3回以上が好パフォーマンス

SBI証では、個人の信用取引の資金回転数(1日当たり売買代金 合計額を預かり保証金額で除した数値)が3回以上と3回未満の1日当 たり実現損益を比較した場合、1月4-17日の期間では3回以上の方 が6.4倍の好成績だった。経営企画部の鈴木建氏によると、「信用取引 制度改正による資金効率向上のメリットが出ている」と言う。同証で1 月に信用で日計り取引された売買代金合計の上位4銘柄はソニー、オリ エントコーポレーション、アイフル、マツダだった。

みずほ投信投資顧問の青木隆シニアファンドマネジャーは、「個人 投資家の売買が活発化するという意味で、確実にポジティブな規制緩 和」と評価。回転売買となればロング(買い)、ショート(売り)双方 が均衡し、相場の上昇要因とは言い切れないが、「市場に厚みができ、 一方向に振れにくくなってくる」との認識を示した。

東証が13日に発表した8日時点の信用買い残(制度信用と一般信用 の合計)は東京、大阪、名古屋3市場1・2部等合計で、前の週に比 べ1804億円増の1兆9041億円となった。増加は7週連続で、10年7月23 日時点(1兆9292億円)以来の高水準。一方、信用売り残は140億円減 の5961億円と2週ぶりに減少したが、緩やかな増加傾向にある。

評価損益率は2000年以降で最高に

衆院解散の流れが決まった昨年11月中旬以降、為替の円安進行に連 動する形で日本株は上昇。安倍政権の経済活性化策、日本銀行のさらな る金融緩和への期待で、TOPIXは週間で1月最終週まで12週続伸し た。東証1部の売買代金も、1月は1日平均で1兆9936億円と、昨年12 月から4割強増えている。

信用取引を通じ日本株を買った投資家の含み損益を示す信用評価損 益率は、1月25日時点でプラス5.2%と06年1月13日(プラス2.5%)以 来のプラス転換。ブルームバーグ端末で確認可能な2000年以降では最高 水準を記録した。過去平均はマイナス12.6%。通常マイナス圏にあるの は、「信用取引を手掛ける個人は利益が出ると早々に利食い売りに動く 半面、損が出た銘柄は近い将来の株価反転を期待し持ち続けるケースが 多いため」と、東洋証券の土田祐也ストラテジストは指摘する。

東証の投資部門別売買状況(3市場1・2部等合計)によると、直 近公表分の1月5週(1月28-2月1日)に個人は3週連続で日本株を 売り越したが、信用取引に限れば7週連続の買い越し。同週の個人の売 買代金のうち、61%が信用取引となっている。日本株売買代金シェアの 2大勢力の推移は、昨年10月(個人20%、海外投資家68%)、11月 (同22%、65%)、12月(26%、60%)、1月(31%、58%)と個人の 増勢ぶりは顕著だ。

野村証券エクイティ・ストラテジー・チームの柚木純アナリスト は、個人のシェア上昇について「日本株のパフォーマンス好調のみなら ず、信用取引の規制緩和も大きく影響している」と分析。家計の金融資 産は、過去と比べても現預金の比率が高く、「インフレリスクに対しぜ い弱な状態だ。インフレ期待が今後生じるとすれば、価値が減少する現 金から株式などリスク資産に資金を移す動きが出てくる」と予想した。

東証はガイドライン見直しで監視

信用取引の規制緩和と併せ、東証は「信用取引に係る委託保証金の 率の引き上げ措置等に関するガイドライン」と「『日々公表銘柄』の指 定等に関するガイドライン」を見直し、年初から実施している。従来 は、基本的に3営業日連続して基準に該当した場合に保証金率の引き上 げなどの措置を実施していたが、今回の見直しで1営業日の基準該当で 翌日から即時実施できるようにした。

ガイドライン見直しの背景について、東証株式部・信用取引グルー プの上原大季氏は「信用取引での同日中の保証金の使い回しによって、 株価をけん引するようなことはできないが、あまりにも過当な売買が行 われ、市場の混乱を招く可能性はある。そういったことを排除するた め」と説明。今のところ「この基準に該当した銘柄はない」と言う。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE